仕事

三雲たちが配置についてしばらくすれば、ルチアーノを乗せた白い車がやってきた。
ルチアーノとアランは車から降り、それぞれ取引となる物を準備をしている。ルチアーノは鍵盤に加工したヴェスパニア鉱石を掲げ、アランはそれに満足そうに笑みを浮かべ、ルパン三世に盗ませたチェリーサファイアを見せる。
それを見た瞬間ルチアーノはヴェスパニア鉱石を隠すように護り、部下たちは銃を向ける。

「はめられたか…」

「ふはっ、これもシナリオ通りとかすげー」

忌々しいというように顔をしかめるアランの表情をスコープで見ていたベルフェゴールは思わず笑いがこぼれる。それをチラッとみたスクアーロは今回の指揮を取っている姫君のことを考える。
ボンゴレの姫君である三雲はどこから繋いでいくのだろうか、その強力な縁でボンゴレを支えている。今回のルパンだってそうだ。本来ならば、怪盗とマフィア…協力関係を決して結ぶことはなかっただろう。下手したらここは取り合いの戦場になっていたかもしれない。

「まぁそれでもいいがなぁ」
「あ?何言ってんの?」

そうベルフェゴールが呟いた時、倉庫の電気がすべて消え、倉庫内ではざわめきが起こる。ザワザワとうるさいなかルパンは愛車であるアルファロメオで空港の滑走路を通り、目的地へとやってくる。

「おー始まった」
「仕事するぞぉ」
「へいへい」

スクアーロの合図でベルフェゴールも配置に着く。
我がボンゴレの姫君は一体どこまで先を呼んでいるのだろうか?
配置場所に着けば、ルパンたちに銃を向けている人物たちが…。彼らの服にはFBIの文字。思わず口笛を吹いてしまったのだ。
そして、あたりを見ればもっと遠くに一人の男の姿を確認する。スクアーロはニヤリと笑い乾いた唇をチロッと舐めた。


一方空港から700ヤードほど離れたビルの屋上には黒いニット帽をかぶった男がいた。彼は暗視スコープからジッと空港の様子を見ていた。

「ほぉ…あれがかの有名なルパン三世か…」

男はスコープから見える赤い上着をきた男を見ていた。
怪盗であるルパンを追うのは己の仕事の範囲から外れているが、世界で最も有名であるルパンを捕まえたいと思うのは本能なのだろう。
にしてもボウヤ…コナンの考える策には下を巻く。ルパンに銃を向けている彼はあの小さな体で何手先まで見ているのだろう。
空港内では銃の乱射のあと、国際警察である銭形が倉庫に突っ込むということが起こっていた。
そしてその後に銃を持った男たちがルパンたちに銃を向けた時、己の仲間たちが敵を制圧しているのを「フッ」と小さく笑いながら見ていた。

「ん、なんだあれは…?」

だが、遠くから見ていた為男は己の仲間たちの後ろにナイフが浮かんでいるのを見つける。すぐさま連絡を取ろうとインカムに手を伸ばすが、カチャッという音と共に己の首に刀が突きつけられた。

「よぉ、お前FBI赤井秀一だなぁ?」

男…赤井は何時の間に己の背後に回っていた男のドスの効いた声と共に視界に入った銀色の髪に身を固くする。

〈赤井side〉

「俺にいつ気づいた…?」
「あ?んなの姫様の指示通りに辺りを警戒していたら、異様に存在感のある銃をもった男を見つけたまでよぉ」

ー…俺は限りなく気配を殺している…ましてやここは空港からかなり距離があるというのにか?

「姫…とは一体何だ…?」
「おっとそれを言うのは良いが、お仲間に銃を下ろすように言え、まぁ下げなかったらあの宙に浮いたナイフでぐさっだがなぁあ?」

男はそう言って己の耳に付いていたインカムに手を伸ばす。

「Ho trovato un ratto.Quand seguaio,uccidi(ネズミを見つけた。俺が合図をしたら、殺れ)」

耳に入った音はイタリア語。このことからこの男がイタリアから来た可能性があるということだ。

「…ルチアーノの仲間か?」
「はぁああ!?俺達があんな雑魚の仲間なわけないだろぉおがぁ!!!」

可能性の話をすれば大音量で否定された。こっちは潜入捜査官だからやめていただきたいのだが…。
男は忌々しそうに舌打ちをする。そして早くしろっといわんばかりに刀を俺の首にあてがう。
空港を見れば現れたFBIにルパンがボウヤの指示に従おうとしていた。ボウヤの作戦通りだったんだがな…。

「ボウヤ、すまない…奴らの仲間に見つかった。悪いが銃を下ろすようビュロウに言ってくれ…」
[赤井さんっ!?]
「今全員の背後にナイフが仕掛けられている。彼の要求を聞かなければ…」
[っくそっ!!]

ボウヤはすぐに近くにいたジェイムズとジョディに指示を飛ばしたようだ。すぐに銃が下ろされる。

「良かったなぁあ!!仲間が串刺しにならずに…Ehi,reccoglie(おい、回収しろ)」

男が再度インカムに指示を飛ばせば微かに聞こえる"了解"の言葉。

「お前たちは何者だ…?」
「…まぁ一つぐらい教えてやるよ」

男の長い髪が耳元に近づき、今までうるさく話していたのが嘘のように静かに言葉が聞こえたと同時に意識が暗闇に落ちていった。