序章

ギュルルルル!!!

甲高いタイヤの音と固い物が激しくぶつかる音が聞こえてくる。普通なら聞こえないその音に青年は近くのビルの屋上に上る。

「レオン、双眼鏡」

少年は頭に常に乗っているカメレオンにそう言えば、摩訶不思議なカメレオンはその姿を黒い双眼鏡へと変える。双眼鏡を覗きながら音の発生源を見れば、スポーツカーである車が二台、一台の車を追っていた。
車たちは警察庁方面から都市高速に入ったようだ。
追われている車はトヨタのチェイサーで、追っている車の一種はとても見覚えのある車種だった。

「レイの奴何やってんだ?」

少年…リボーンはすぐさま端末をポケットから出すと、彼の婚約関係者に当たる三雲を呼び出す。
呑気に欠伸をしながら電話に出た彼女はリボーンからの説明を聞くと頭を傾げる。

『…いや、何も聞いてないけど』
「だがあそこまで必死になってあの車を追いかけるってことは、それなりのことだぞ…ん?追っている奴がスマホに何か打ち込んでいるな…ノックはスタウト、アクアビット…」

レオンが変化した双眼鏡はただものではない為、遠く離れた物もはっきり見ることが可能なのだ。リボーンが読み上げれば、三雲が息を飲んだのが分かった。

『……NOCリスト』
「Non Official Cover…日本警察がスパイとして活動している捜査官をまとめたアレか…」

リボーンは電話をしながら都市高速の車たちを巻き込んで行われるカーチェイスを見ながらレオンを形態変化させる。

『盗まれたのか…リボーン、彼女が使っているスマホの特徴を』

リボーンはすぐさま先程見たスマホの種類を伝えれば、「アサリ、ハッキング」との指示が入る。

「最後に見た時の寿命は」
『大きくは変化してなかった…今から行く』
「来るのか?」
『えぇ…もうつく』

そう声が聞こえて空を見れば白い鳥がこちらに降りてくるところだった。

「リボーン!!この都市高速は渋滞が起こっている、必ず引き返してくるはずだから、そのポイントに行くわ!!」

三雲の指示により、ライファーンがリボーンの乗れる範囲まで降下してくる。すぐさまライファーンの背に乗れば、この近くで最も高いビルに降り立つ。
ライファーンはすぐさま形態変化をし、真っ白いライフルに姿を変える。
都市高速ではトラックが道を塞いでいる。その近くにはマスタングが止まり、持ち主が車から出てくる。

「あれは…赤井秀一だな」
「彼も打つ気ね…」

赤井はボンネットを台にしてライフルをセットする。

「あいつが右前輪を打つと仮定して、俺は左後輪を狙う」
「なら私は彼女のスマホを」

案の定逆走してきたチェイサーを見て二人は銃の引き金に手をかける。
運がいいことにスマホは左座席に置かれている。

「今だ」

リボーンは赤井の指が動いた瞬間合図を出す。
その合図と共に引き金を引けば、ギュルギュル!!と激しい音を出しながら車は海へと落ちていった。

「アサリ、スマホは…」
[マスター…申し訳ございません…後半は何とか消せましたが…前半の三名の名前は既に送られ、バーボンとキールの名前も少し入ってしまいました。ですがノックであるという部分は消せました…]
「いや、あの短時間でそこまで消せたね…ありがとう」
「仕方ねぇ…すぐに彼らを保護するように連絡するしかないな」
「えぇ…アサリ、ツナに今のことを連絡してすぐに各国へ」
[はい]

アサリからの連絡が消えて目の前の惨状を見れば、赤井と降谷がにらみ合っていた。

「これから忙しくなるな…」
「えぇ、寿命は減ってなかったもののどこでそれは変わるか分からない…」
「名前はわかったか?」

リボーンの言葉に彼女は頷く。

「黒の組織でのコードネームはキュラソー」
「…黒の組織か…俺はあのガキ共と行動する」
「了解、私は赤井さんと共に行動した方が、いいかもね」
「あぁ、レイはもしかしたら疑われている可能性があるからな」

そう言ってから彼らはビルの屋上を後にした。
後にしたビルを赤いはジッと見ていた。