動き

その日の夜、三雲のスマホ宛に降谷の方からメールが来た。
内容としては【しばらく仕事が立て込んでおり帰れない事、この連絡先は使えなくなる、もしもの時は部下から連絡させる】ということだった。
なんとも必要最低限の言葉でつづられたメールを見て、すぐそばにあったイアリング型イヤホンを素早くつける。

"もしも"ってなによ。まさか死を覚悟しているんじゃないでしょうね!!

イライラしながら、イヤホンの電源を押せば、アサリのあいさつが入り、すぐさま昨夜の高速道路で起きた事件のニュースを伝えてくれる。
それを聞き、紅茶を飲みながら頭の中ですべての出来事をまとめる。

事件は昨夜警察庁で起こった。
内容としては黒の組織と呼ばれる犯罪組織に潜入しているNOC(スパイ)リストがある人物によって盗まれた。
盗んだ人物は黒の組織で、キュラソーのコードネームを与えられた幹部。彼女は黒の組織の2ラムの腹心であり、情報収集のスペシャリスト。腹心であるからか、その身体能力は映像を見る限りかなり高い物(映像を監視カメラにハッキングして確認)。なんせあの降谷と互角に渡り合っていたぐらいだ。
警察庁から出た後は、走行中のチェイサーを奪い、都市高速にはいり逃亡。公安の降谷とFBIの赤井の追跡を様々な方法で逃げ、最後は海へ転落。
逃亡中メールを恐らく組織に向けて送信するも、アサリのハッキングによりすべてを送信することはかなわず…。
だがすべてを消すことはできなかった。
【ノックはスタウト、アクアビット、リースリング。あなたが気にしていたキール、バーボン】が組織の人間に送られた。幸いなのか降谷はノックなのか、違うのか不明な部分となっている。
スタウト、アクアビット、リースリングに関しては既にボンゴレが動き、三人のノックは保護している、と連絡があった。それぞれ組織の幹部が暗殺しに来たようだが、全て霧属性の幻覚により、幻覚の三人を撃ち殺して撤退したという、報告も来た。三人には申し訳ないが、組織の潜入という舞台から降りてもらうしかない。

事件ほいほい、突っ込みなコナンにはバジルとリボーンが付いている。
先程、彼と一緒に行動しているリボーンから【水族館に言ってくるぞ☆】とラインが来た。と同時にバジルと灰原哀に付いているラルからも【水族館に行く】と報告メールが来ている。
彼に何か動きがあれば、三人から連絡は来るだろう。
あとは…

「お嬢、車の用意できましたよ」

天野さんからの言葉に紅茶を置き、彼が持っていたスーツを羽織る。

「じゃ行ってきますので…あとはお願いします」
「はい、お気をつけて…」

今回組織に顔のばれている天野さんは強制待機だ。
死んだことにはなっている為、信じないだろうが念の為だ。本部との連絡係として今回は働いてもらうつもりだ。
パタンと扉を閉め、目の前にある愛車の横にあるフェアレディ。
日産フェアレディZのホワイトパールは降谷に仕事用としてプレゼントするつもりのものだ。組織と公安どちらも同じ車を使っていてよく怪しまれないな…と感心していたのだ。
まぁ渡すのはこれが終わってからだな…そう思いながら愛車であるGT-Rを発進させる。


誰もいなくなったアジトの彼女の部屋で天野は拳を握りしめる。
こんな時表で死んだ自分は、幼馴染で親友の彼を直接助けに行くことができない。
己より小さく、幼く、その背に多くのモノを背負った彼女に頼むしかできないのだ。

「ゼロを、頼みます…」

天野は誰もいなくなったアジトで小さく呟いたのだ。