キュラソー

一方所変わってこちらはコナンサイド。
コナンたちはできたばかりの東都水族館へやってきていた。
メンバーはおなじみの元太、光彦、歩美、灰原、そして引率の阿笠。さらに今日は珍しく最近転校して光彦たちと仲良くなったリボーンも一緒だ。
彼ははしゃぐ小学一年生よりもかなり大人びていており、正直本当の俺よりも大人びている雰囲気がある。
今回も子供達(ここでは元太、光彦、歩美を示す)のようにはしゃぎまわることもせず、俺達の会話に時々入ってくるような感じだった。
しかし、俺たちがベンチに座ってぼーっとしていた女性を見つけた時一瞬殺気が漏れた。
その女性は綺麗な銀髪をし、左右で瞳の色が違う記憶喪失の女性だった。
灰原はその女性を見ると怯えていた。

リボーンはコナンたちが対応していた女性…キュラソーを見つけた瞬間、ニット帽で隠していた耳に付いていた小さなインカムを起動させる。

「三雲」
『三雲様に連絡いたします』

その言葉と共に電話音が聞こえ、すぐさま「はい」と言葉が聞こえる。

「キュラソーだ」
『!!』
「頭を打って記憶がないみたいだ」
『OK、ならそっちは任せる』
「あぁ」

それだけの会話をすれば通話は途絶える。
その後なぜか子供たちと一緒に水族館を見て回る。
正直記憶を失くしたフリをしているのかと思いながら見ていたが、どうやらそうでもないらしい。
あのカーチェイスを繰り広げた人物とは思えない程、子供たちと過ごしている姿は穏やかだ。しかも子供を助けるということまでしていた。

「…これは厄介なことになったな」
「何が厄介なんだ?」
「いや、なんでもねぇーぞ」

近くにいたコナンに聞こえていたらしく、すぐさま突っ込まれたが、リボーンはすぐさまポーカーフェイスを被り、コナンから離れた。
恐らくこの様子はラル、バジルも見ている上にどちらかが録画を行っている…下手したら直接映像をアジトを経由して送っている可能性がある。もしそれをあの心優しいボス様が見ていたとしていたら…。

『綱吉さまから全員に連絡です、キュラソーを確保するようにとのことです。繰り返します』

リボーンは「予感的中」と溜息を吐く。

『なお全ての決定権は三雲様にあります。彼女の処遇につきましても彼女の指示に従うようにお願いいたします』

念押しするようにそう耳からアサリの声が聞こえる。
再度リボーンは全ての決定権を任せられた三雲を哀れに思い、大きなため息吐き出したのであった。

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一方こちらでも同じように大きく溜息を吐いた女性が…。
隣で愛車であるマスタングを運転していた赤井は不思議そうに助手席に座る彼女に視線を送った。

これほど近くに居ても先程の内容が、聞こえていないとは本当にこれを作った入江とスパナ、ジャンニーニには関心する。彼女がつけているのは、朝付けていたイヤリング型のイヤホンと、赤井のモノとはまた違ったデザインのモノで、衛星を経由することで世界各国どこにいてもアサリという人口知能を使って情報を共有できるものだ。
例えば本部で綱吉がアサリに「ご飯いらない」といえば、アサリが全ての人にそれを伝えてくれるのだ。そうすべての人に。イヤホンを付けていなくても、スマホにメッセージとして残る。

先程の内容は三雲が考えていたよりも厄介なものとなった。確かに彼女の身柄は己が引き取るといったが、アレは赤井との言葉遊びなようなものだった。…要するに本気ではなかったのだ。
それはキュラソーの頭上に浮かんでいた寿命に関する為だ。キュラソーの寿命は残りがかなり少なく、もし己が保護してもすぐに死ぬ可能性があったのだ。
そのため冗談のように彼に話を持ち掛けてもヘラヘラできていた。
だがボスである綱吉がそういった以上、己はその任務を全うせねばならない。記憶にある寿命を考えても本当に時間はない。
降谷のフォローとキュラソーの保護、二つに溜息を吐きたい気持ちであったが、ボスの綱吉の命令は絶対だ。

「Comprensione」

そう言葉を返して、三雲はタブレットを開くのだった。