同居

いきなり四人で暮らすことになったバーボン、スコッチ、ライ、三雲。
都内にある高級マンションの最上階が部屋のようで四人は玄関に荷物と共においていかれてしまった。

玄関で呆然と立ち尽くす三人と違って三雲は部屋の中にトコトコと入って部屋を見て回っていた。

「これってマジですか?」
「まじだ」
「……」

唖然とする三人をジッと廊下の先から見ている三雲。
正直あの三人よりも彼女の方が嘆きたい気分なのだ。
何せ本来の年齢は成人済みの女性。
いくら男性の多いマフィアの中で過ごしていても、彼らは全くの他人。
しかも敵かもしれないという状態だ。
薬自体も実験では一か月しか効力を持たないという話でもあるし…。
もし薬が切れたら幻術でどうにかするしかない…だが定期連絡どうしようと考えていた。
ただえさえこの任務に反対していた我がボスは三日に一度の定期的な連絡をするように散々いわれてたのだ。

まだ本部に一人部屋の方が良かった…そう思いながら溜息をつきながら、リビングにあるこれまた高級そうなソファーに座る。
改めて部屋を見れば黒を中心とした家具でそろえられ、床は白。
全体的にモノトーンのようだ。
テレビも大きいし、ざっと見る感じ部屋は4つあるようでそれぞれ個室がもらえるはずだ…。

三人はようやく動き出したようでそれぞれ己の自室となる部屋に向かっている。
残りの一つが私かな?と思っていれば、バーボンがちょいちょいと呼ぶ。
その部屋に行けば…

「!!!」

大きな窓が部屋一面に広がっていた。
そこから見える景色は本当に空の上にいるようで子供のようにキャキャと喜んでしまった。

「三雲の部屋はここにしますか?」
「え…こんないい部屋いいの?」
「えぇ、私たちにはこのような大きな窓は必要ないですから」

バーボンがそう言って後ろを向けば、ライとスコッチが扉に寄りかからながらこちらをみて頷いていた。
三雲は再度ここから見える景色を見て、空を見上げる。
まだ昼ということもあって澄み切った空とその空を自由に流れる雲と温かな光を放つ太陽があった。
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「…ということで、ボスの命令により、四人で暮らすことになりました」

リビングに全員集合してこれからのことを話し合うようだ。
三雲はスコッチとライの真ん中にチョコンと座って正面に仁王立ちするバーボンを見る。

「これから四人で暮らすことによってルールを作ります」
「はーい」
「別に必要ない…」
「ライ!!」
「…」

きっちりした性格のバーボンに対し波風立てぬように返事するスコッチ、かなりめんどくさそうな様子のライ。
こんな男たちと無期限の同居を強いられる彼女の精神は大丈夫なのだろうか…。
否、もうすでに泣きたそうな顔をしている。

「とりあえず、家事を分担しよう、洗濯は僕、掃除はスコッチとライで頼むよ」
「まぁそれなら」
「異論はない」
「よし、ならかいさ」
「ご飯は?」

「「「……」」」

少女のこの言葉に男たちはあー…と小さくぼやく。
三人ともすでに独立した大人だが、何せ男。
料理に関してはほぼからっきしだった。
自分が食べる物に関しては問題はない…。
適当に作っても文句を言われることはないのだから。
最悪コンビニや外食でいいと思ってたぐらいだった。
だが、ここには女性でしかも成長期の子供がいる。
自分達なら問題はないが子供にはそういう訳にはいかない。

ずーんと考え込む男たちを見て三雲は嫌な冷や汗が背中を流れる。
まさか、こんな子供にコンビニ弁当とか食べさせるわけないわよね…そう思いながら三人を見る。

三人は許してくれといわんばかりに彼女を見てくる。
その視線ですべてを察した彼女はソファから降りる。

「毎日コンビニ弁当とか絶対いや!!添加物沢山のモノ食べるくらいなら何も食べない!!!」

バンっと勢いよく自室となった部屋に入り、扉をしめカギをかける。
…彼女は幼い頃から母の手作りの食事を食べて育った。
さらに大人になってもシェフが作る栄養バランスの良い物しか食べてきていない。
殆どコンビニ弁当を食べてきて来なかった彼女にとってそれが毎日続くとなるとたまったモノじゃない。

でもいくら子供でも我儘言い過ぎたかしら…そう不安になりリビングに繋がる扉をちらっと見る。