家事

「三雲の言う通りだよな…流石に毎日コンビニ弁当だけじゃ…」
「子供が添加物なんて言葉よく知っていたな」
「ライ…頼む真面目に考えてくれ」

三人はウム…と考え、バーボンが何か決意したように立ちあがる。
そしてキッチンに入っていく。
片手にはスマホを持って。
残り二人も顔を見合わせ共についていく。

部屋で悶々としていた三雲の聴覚と嗅覚が刺激される。
そろーと扉を開けて匂いのする方へ足を向ければ、そこはキッチンで男三人がワイワイ言いながら料理をしていた。

「あ、ライ卵にそれは必要ありません!!」
「む?」
「お、おいバーボン!!焦げてる焦げてる!!!」
「え、あぁあああ!!ライのせいですよ!!」
「ホー、己の失敗を他人に擦り付けるか」
「何ですって!?」
「ふ、ふたりとも落ち着け!!」

ギャーギャーと騒がしく男三人が料理を作っている姿を三雲はぽかんとした顔で見ていた。
だがその光景は、ハルや京子が来る前の基地に似ており、三雲は懐かしい…と小さく呟きながらその光景をリビングのソファからみることにした。
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「か、完成した」
「完成したが…」
「これは…」

三人は皿の中の食事を見て、なんとも言えない表情をする。

「オムライス?」
「「「!!」」」

三人とシンクの間からひょっこと顔をのぞかせそれを目にした三雲。
皿の上には焦げの多いライスと黄色い卵と思われるものが乗っていた。
本来のオムライスからかけ離れたその姿でも三雲はうれしかったのだ。

皿をシンクから取り、スプーンと冷蔵庫に入っていた水を取り、トコトコとリビングに持っていく。
男三人はあまりの速さにぽかんとなっていたが、ハッとした顔になり、三雲からオムライスを奪おうとする。

「待って!!それ食べちゃダメ!!」
「…いただきまーす」
「お腹壊す!!」
「離してスコッチ…」
「悪いことは言わん、やめとけ」
「…ライまで」

三人は食べさせるために作ったのであろうに己たちの出来の悪い料理を子供に食べさせるのはダメだという。
スコッチの拘束を巧みに抜け、オムライスを一口口に運ぶ。
運んだ瞬間「あ」という三人の言葉が聞こえた。

確かに見た目通り焦げの苦みが口に広がるが、ほんのりとバターの味が口に広がる。
卵もふわふわとはかけ離れているが、ちょっとした砂糖の甘味がする。
お世辞にもおいしいとは言えないが三雲にとってはなれないことをしてくれた三人の心がうれしかった。

正直三人のことは幹部にいる日本人(ライだけ日系アメリカ人だが)としか思っていなかったが、果たして薬や殺人をしている人物なのだろうか、と彼女は思うようになった…否、己の血筋のみがもつ超直感が告げている。
この人たちは敵ではない、と。

三雲は心配そうに見ている三人にニッコリと笑いかけ、一言。

「ありがとう!!」

と伝えた。