協力
コナンのは今の現状を素早く要点をまとめて説明をする。
そして、すぐさま四人は先程の消火栓の元に向かう。
降谷が慎重に消火栓の扉を開ければそこにはトラップが仕掛けられていた。
「安易に開けなかったのは正しい選択だったよ」
その言葉の後に爆弾を見に行っていた赤井が帰ってきた。
爆薬は非常にうまく配置されており、爆発すれば車軸がホイールの重さに耐えきれず、連鎖崩壊するようになっているらしい。
「まさかと思うけど、サウスホイールの方も…」
「それは安心して」
三雲の言葉に何故といわんばかりに彼は彼女を見るコナン。彼女はインカムをチョイチョイといじると皆が聞こえるように見せてくる。
「そっちはどう萩原?」
『あぁお嬢ですか、たぶんお嬢たちがいるところから大分下の方ですが、こっちにも起爆装置は仕掛けられていましたよ。しかも最新のヤバい奴が…。コードが繋がっている場所を辿れば、サウスホイールですね』
「「!!!」」
「やっぱり!!!くそ、どうしたら…」
慌てるコナンに降谷は安心するように頭を撫でる。
「大丈夫だ」
「なんでわかるのっ!?」
「あいつは只の三雲の部下じゃない、ってことさ」
降谷がそう言うと、インカムの向こうの萩原は「ははは」と笑う。
「爆弾は解体できるのよね」
『俺の手にかかれば、あと三分ってとこですわ』
「三分か…今度は油断せずに全て解体しなさいよ」
"三分"…その言葉にコナンは引っ掛かりを覚える。
「今は私の部下だけど、彼の元の所属場所は」
「日本警察爆発処理班だよ」
「「!!」」
『ま、そーゆこった。ボウズ、お前あの時の爆弾犯を捕まえる為に一役買ったんだろ?松田から聞いてるぜ』
「え…」
『ありがとうな』
コナンの中で爆弾犯、松田といえば、東都内の住民を人質にとったあの爆弾犯だった。
礼を言ったあと萩原は「集中するから」と言って通話を切った。三雲もインカムを耳に着けなおす。
降谷はフッと笑うと消火栓の中にあった爆弾を見る。彼曰くよくあるタイプのモノらしい。
「ヤツの所にあった最新の物じゃなくてよかったよ…コレなら解体できる」
「へぇ爆弾に詳しいんだね」
「警察学校時代の友人にいろいろ教えてもらったんだよ…それこそ萩原と同期のアイツにね」
「…松田さんのこと?」
コナンのその言葉に彼は頷きフッと笑う。その横で赤井はライフルに弾を装弾していた。三雲がウエストポーチからインカムを取り出し、降谷に渡す。
「…新しいインカムよ。耳に装着して自分の名前を言えば、あとは勝手にしてくれるわ」
「ありがとう…」
降谷はインカムを受け取って己の耳に装着して起動させる。
赤井はライフルケースの中に入っている工具を降谷に渡すと、キュラソーの奪還は恐らく空からだと言ってすぐさま上に上がっていってしまった。
コナンも何か思いだしたように走りだしてしまう。
「どうしたコナンくん!!」
「ノックリストを護らないと!!」
そう言って階段を降りてしまった。
降谷は一つ溜息を吐いて「たく、どいつもこいつも」と呟く。それに笑みを浮かべるのは三雲だった。
「それは貴方もでしょう…」
「ふっ…君もだよ」
そう言って笑いあって降谷は真剣な顔で三雲を見る。三雲も何か感じたのか降谷をジッと見る。
「…今から、君が何をするのか聞いてもいいかい?」
「……」
無言でジッとこちらを見てくる三雲に、やはり何も言ってくれない、頼ってくれないか…と視線を落とし、溜息をつきそうになった時だった。
そっと頬に手が当てられ、視線が合わさる。
「私はキュラソーを確保するわ」
「え」
「ボスからの指示、キュラソーをボンゴレで確保すること…これが今の私に…否、今のボンゴレファミリーに課された任務。私も、リボーンも萩原も天野もバジルもラルも皆この任務を成功させるために動いている」
降谷はまさか話してもらえるとは思っておらず、一瞬頭の中が真っ白になる。
「だけど、貴方はこれに従わなくていいわ」
三雲は降谷が困惑したと判断して苦笑をこぼす。
彼は偽りだとしても己の婚約者。普通ならば、ボスの命をボンゴレの為に聞かなければならない。だがそうなると公安としての彼は立場も悪くなってしまう。下っ端ならまだましも彼はそれなりの地位にいる人間。そんな人物が、別の任務についていてはいけない。綱吉もそれが分かっているからこそ、降谷には連絡を入れない。
「貴方はボンゴレとしてではなく、公安として活動してほしいの…だから言わなかったのに」
「今まで、それで言わなかったのか…?」
「ボンゴレと公安、貴方が取るのは決まっているでしょ?でもボンゴレの命令を伝えてしまうと、貴方はそれも気にしないといけなくなる…そうなると上手く運べそうなことも運べなくなる可能性が出てくる。それ以外にあるの?」
降谷はキョトンとした顔でこちらを見ている三雲に唖然としてしまった。
己は頼られていないのではなく、己の迷惑になるから任務内容を伝えられなかったということだったのか…。
「…俺が頼りない、とかそう言うんじゃないんだよな?」
「え?誰がそんなこと言ったの?」
彼女の顔は本当にそんなことを思っているような顔ではなかった。降谷の中でホッとした安堵が広がり、彼女をそのまま抱きしめる。
なんだ…俺の勝手な勘違いか。
三雲は何故か勝手に勘違いして安堵している降谷に困惑しながらも、腕を彼の背に回し、トントンと優しく叩く。それに気づいた降谷は彼女を開放する。
「貴方は貴方の思うままに行動して」
「…分かったよ」
そう言って降谷は彼女の額にキスを送る。
今まで婚約者として過ごしてきても彼からのキスはなかった。三雲はカァーーーと赤くなってキスされた額を抑える。
降谷はそんな彼女を見て愛おしいと思い再度その腕に彼女を抱きしめる。
「気をつけて」
「貴方も…」
そう言って腕から解放すれば、彼女はタッと走り去ってしまう。
降谷はそれを確認すると、「よし」と呟いて爆弾解体に取り掛かったのだ。