共闘

降谷はすぐさま爆弾の起爆タイマーを起動させ、ライフルバックに詰め込む。

「見逃すなよォ!!」

降谷が投げたライフルバックは爆発し、オスプレイを照らす。そして見えたその姿に向かってコナンがサッカーボール型の花火を打ち込む。ボールは見事機体に当たり、その体制を崩させ、夜空を明るく照らす。

「「「墜ちろ」」」

三人の声が揃った瞬間放たれた弾丸たちはそれぞれ目標にしていた部分に当たる。
プロペラ二つとフロントガラスに弾は見事に当たり、機体は制御不能となってフラフラと揺れ始める。機体の中では、ジンの右肩に大空の死ぬ気の炎を纏った銃弾があたり、ジンの右手は全く使い物にならなくなった。
ジンは憎悪を募らせ、コルンに操縦を変わると、銃を観覧車に向けて打つ。
三雲は落ちながらもこちらに弾丸を打ち込んでくる機体を確認すると、リボーンに視線をやる。リボーン自身もそれが分かっていたようで頷き返す。

「ライファーン!!」

ライフルから姿を変えたライファーンに三雲はすぐさまつかまり、下に降りる。それに合わせてコナンも「クッソ」と呟きながら階段を降りて行く。銃弾は観覧車の車軸を中心に当てているようで、いくら爆弾の付いていない車軸と言えど、同じ場所に強力な鉛玉を浴びせられたらその形を保つには限界がある。
案の定コナンが去ってすぐに観覧車はガタが来たようで崩壊への道をたどりだす。
リボーンは最後にもう一度オスプレイに標準合わせ撃つ。体勢が崩れていたが、見事それはオスプレイの機体の下にくっつく。それを確認したリボーンは崩壊した床に従ってその身を宙へ投げるのであった。

そしてとうとう車軸が耐えきれなくなり、観覧車の片輪がゆっくりと水族館へと動き出す。コナンが伸縮性のあるベルトを観覧車に着けて走っているとすぐ隣を降谷が走ってきた。

「止められるのかっ?」
「分からない、でもやらないとっ」

降谷はその言葉を聞くと、横を走っていた先程見たよりも大きくなっているキングチーターに目をやり、コナンを抱き上げ、マフデトの背中に乗る。

「あ、安室さんっ!?」
「マフデト、頼む」
「ミャゥ」

マフデトは一声鳴くと一気に加速していく。マフデトはぐんぐん加速し、柵から飛び降り、器用に下にあったゴンドラの上に着地する。
降谷はすぐさまコナンを抱き上げ、「行くぞ」と合図し、思いっきりコナンを反対にある観覧車へ投げる。
遠目から無事彼が反対の観覧車に行けたことを確認した降谷は一つ安堵の息を吐く。

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一方先程彼らと離れていた三雲はキュラソーを探して走っていた。動き出した観覧車に舌打ちをして方向転換を使用とした時、観覧車と水族館の間に一台のクレーン車がクラクションを鳴らしながらやってきた。
三雲はそのクレーン車に乗っているのがキュラソーだと気づくと、彼女の運転するクレーン車に飛び乗る。

「キュラソー!!やっと見つけたっ…って貴女その傷っ!!」
「っ、なんで私をっ!!」

いきなり運転席に飛びついてきた女に警戒して、見るもののどこか見覚えのある面影に頭を傾げ、眉間に皺を寄せたまま「ブルームーン?」と戸惑いがちに聞いてくる。三雲はその言葉に大きくうなずくと、観覧車を止めようとするキュラソーに視線をやる。

「なんで生きてるのっ、それにその姿っ!!」
「そんなの後回しっ…それを止めないと大勢の人がっ」
「分かっているわよっ…っ!!ブルームーン、見て!!」

キュラソーが何かに気づいたように観覧車のゴンドラを指さす。そこにはコナンの友人たちである子供たちが乗っていた。三雲はチッっと舌打ちをする。
ラルはキュラソーを護るため子供たちから引き離してしまった。これは己の采配のミスだ…
その時、インカムにとある人物が到着したと連絡が入る。三雲はすぐさま動くように指示をし、キュラソーを見る。

「キュラソー!!あの子達が大事っ!!?」
「当たり前じゃないっ!!黒しかない私に色をくれたのっ!!ブルームーン、もうこのクレーン車は持たないわっ、私のことは良いから逃げて!!」
「死なせるわけないじゃないっ!!全員っ!!」

観覧車の重力によりぎちぎちと言っているクレーン車を見て三雲は大きく息を吐き、リングとボックスを取り出す…と同時に辺りに濃霧が漂う。

「私が…あの子達を助けたら私に貴女の力貸してくれる?」
「っ、分かったわっ!!お願い助けてっ!!」

その言葉を聞いて三雲はニコリと笑みを浮かべて最大出力でリングに炎を灯す。
そして膨大な炎をリングに差し込む。

「私の名前は沢田三雲!!…ライファーン、観覧車を止めなさいっ!!」
「ピュィィイイ!!!」

甲高い鳴き声を出しながらライファーンは濃霧の中を真っ直ぐに飛び、観覧車を水族館から引き離すようにズルズルと引っ張る。
キュラソーは目の前で起こったことが信じられないとばかりに見ていた。そして子供たちのいるゴンドラを見れば、黒髪のリーゼント頭の男と、黒髪の女が子供たちを助け出していた。キュラソーはホッと息を吐き、安堵の息を吐く。
子供たちが救いだされたとほぼ同時に観覧車はぐらりと傾き、ゆっくりと倒れていく。
白い巨大な鳥は役目を終えたとばかりに、その身を橙色の火の粉となり、消えていく。
キュラソーはその光景をみて涙を流した。