準備

コナンは日を改め、学校のない土曜日の朝早くにボンゴレのアジトを訪れた。
今回コナンが来たのは組織を壊滅させるための作戦会議に出席するためだ。
会議室まで案内をしているのは天野で、彼は少し緊張気味のコナンに様々な話をしている。

「今回作戦を練るため、イタリア本部のメンバーも来ているからな」
「う、うん」
「そんなに緊張しなくていいぞ、なんだかんだおもしろい奴らだ…とここだな」

そういって笑う天野にコナンも方の力を抜く。天野の笑みはどこか安心させられるような笑みをするため不思議だ。
この人が警察官だったことがコナンには何となく納得できる。
扉を開け、中に入っていく天野に連れられ部屋に入れば、そこには明らかに己の本来の年齢より年が上で、厳格そうな人たちが椅子に座っていた。

「紹介するな」

天野の言葉にコナンは静かにうなずく。

「まずは…技術系担当のスパナ」
「ふ〜ん、これがアポトキシンの影響ね…興味深い、けど小さくな〜るよりはまだまだだね、はい飴」
「あ、ありがとうございます」

イチゴ味の飴を差し出すスパナに礼を言いながら、コナンが受け取れば、彼は満足そうに笑う。

「次は、今回の作成の総責任者の入江正一くんだ」
「入江だ、よろしく頼むよ名探偵」
「よろしくお願いします…お腹痛いんですか?」
「はは、ちょっと胃痛がね」
「(ストレスか?)」

入江はお腹を押さえながら手を差し出す。

「次は、門外顧問からラル・ミチル」
「ラルと呼んでくれ」
「ちなみにラルは灰原…宮野志保の護衛をしている」
「貴女が」

「次は、ボンゴレ特殊暗殺部隊ヴァリアーからルッスーリア」
「あ、暗殺!?」
「あんらぁ、天野ちゃん暗殺なんて言ったらボウヤがおびえるじゃない!!私のことはルッスとでも呼んでちょうだい」
「ルッスはヴァリアーの幹部の一人だから気をつけてね」
「もう!!天野ちゃん!!シカトはだめよ!!」

バシバシと思いっきり天野の背中を叩いているこの人が、暗殺を?とびっくりしてみていれば、入江が補足のように言葉を付け足す。

「彼女の実力は本物だよ。それにマフィアだからね。そうしなければならない時もあるんだ。君の正義には反するかもしれないけど、郷に入っては郷に従えってね」
「は、はい」

そう、ここに今集まっている人物は少なからず何らかの方法で人を殺めている。
でないと、自分たちがやられて世界なのだから。…今回の作戦で一人でも犠牲を出さずに組織を壊滅させることは不可能。だが、被害を少しでも最小限にすることは可能だろう。

「次は]代目の守護者、獄寺隼人くん」
「嵐の守護者だ、お前の話はお嬢様からよく聞いている。その才能今回はわれ等ボンゴレに…」
「はい」

この人が嵐の守護者。
天野さんから聞いた話では、ボスである綱吉さんは、”大空”。
そして大空を守る守護者にそれぞれ天候の名が与えられるという。
晴、雨、嵐、雷、雲、霧。それぞれがその名を体現するという使命があるらしい。
そして、嵐の守護者である獄寺さんの役割は、「荒々しく吹き荒れる疾風」「常に攻撃の核となり、休むことのない怒涛の嵐」になることらしい。
さらに彼はかなり頭が切れ、ボスである綱吉さんの右腕を務める手腕の持ち主だ。
多分だが、今回の作戦の責任者は入江さんだが、最終決定者は彼であろう。

「そしてもう一人が、今回のキー」
「!!!」
「いろはよ、久しぶり」
「キュラソー!!」

そこにいたのは、春休み東都水族館で出会った黒の組織の元幹部だった女性だ。
長かった髪をバッサリ切って、パンツスーツ姿で現れた彼女に驚きはしたもののその美しい顔に笑みを浮かべ、己と同じ目線になり、手を差し伸べてくれた。

「あの時はありがとう」
「はは、ボンゴレに拾われたのか?」
「えぇ、組織を壊滅させる手伝いをするだけで、本当の自由が手に入るのであれば、私はそれに力を貸すの」

そう力強く言ってキュラソー…いろはは席に着く。
それを見て入江が「始めよう」と言葉をかけると同時に、空席の席からホログラム上の人物たちが現れる。
俺の横に座っている天野さんがそれぞれ軽く役職を教えてくれた。
青いホログラムで人物の顔を不明にしているのがゼロ、FBI、CIA、ICPOなどの各警察機関、そして人物の顔がしっかりと映し出されているのが、シモンファミリー、キャバッローネファミリーなどボンゴレファミリーの同盟ファミリーのようだ。
全員が軽く自己紹介を行うと作戦会議となった。



「だはー…」
「おう、お疲れさん」
「お疲れ様です…」
「すっかり疲れ切ってんな」
「ははは…」

会議は正直頭がパンクしそうだった。
各組織が集めた情報を三雲さんたちボンゴレが作ったAI…アサリがまとめ、更にキュラソーが過去に得たPCにない情報がこれまた機密事項だったり、それを元に各組織から選出される人物のリスト、戦場となる地形、武器諸々…すべてを頭にいれ、それを元に作戦を練る。
もちろんこれだけ人がいるのだから、意見も十色で、怒号が飛び交うなんて当たり前だった。
これだけの組織が一斉に動くので、今回の作戦はまた明日、そして来週と時間をかけて行うようだ。
にしても大人だらけの空間で、しかも互いに意見を譲らない大人たちの作戦会議は頭が痛い…。

「ほら名探偵、酷使したら糖分接種」

そういってスパナさんは甘い飴をくれた。
ありがたい…。

「終わった?」

扉がいきなりガチャっと開き、そこから顔をのぞかせたのは三雲さんだった。
彼女が部屋に入ってくると全員ピリッとした空気をだす。何事かと思い様子を見ていれば、獄寺さんと天野さんが彼女に今回の結果を報告している。

「ふーん…なるほどね」
「作戦がまとまるのはもう少し先になるかもしれません」

天野さんがそういったあと彼女は上を見て、にっこりと笑みを浮かべた。

「そんなところに朗報です」
「え?」

全員がきょとんとする顔になって彼女はさらに笑みを浮かべた。

「来月組織の会合があるそうよ」
「「「来月!?」」」
「情報源はバーボンとキール、そして潜入中の骸の部下、幹部を一網打尽にするにはラッキーよね」
「ってことはまさか…」
「来月…というか今月は缶詰状態だね、よろしく入江さん」

そう音符が語尾につきそうなほどの笑顔で爆弾…しかもとびっきりデカいやつを落としていった三雲さんは「夜食つくってくるね〜」といって去っていた。
ちょ、ちょいまて、ら、来月!!?

多分ここにいるメンバー全員がきっと同じことを思ったと思う。

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きっとそれぞれの上司からそのことを聞いたのだろう赤井さんと、降谷さんはすれ違いざまに無言で俺の頭と肩をやさしく叩いていった。
情報源は降谷さん…あんたもだからな。