買い物と雲

あれから家事の担当は掃除、スコッチ、洗濯、ライ、料理、バーボンとなった。
三雲はまだ幼いということで、自分の部屋の片づけのみだ。といっても彼女の部屋にはまだ何もないため、本日任務のない日だというバーボンとライと共に買いに出ていた。

隣町にある其のグループに入り、家具などを選んでいく。
彼女の家具を選ぶのはバーボンがなぜかし、主に白を基準とした色を選んでいっている。三雲はライにだっこされながらピンクなどの色じゃない限り文句を言わずにいた。

「…三雲の好きな色は何だ?」
「空」
「…水色ってことか?」
「水色も好きだけど、青も赤もオレンジも紫も、紺も好き」

空を彩る色であれば彼女はなんでも受け入れる。
勿論稲光の鋭い黄色なども好きだ。
雲の灰色や白も好きだし、虹色の色も好きだ。
要するに嫌いな色はないという訳だ。

「なんで空なんだ?」
「すべてに染まりつつ、全てを飲み込み、抱擁する大空」
「?」
「私の好きな言葉」

ニッと笑って彼女は買い物をするバーボンを見る。
その目はとても子供のするような目ではなかった。
ライは得体のしれない物を組織に入れてしまったのではないのか…と人知れず不安に駆られた。
そして先程の言葉をどこかで聞いたことがあったのだ。それは組織の中であったのかFBIにいた時だったのか定かではないが、その言葉をどこかで…。

ある程度買い物が済んで一息つくかという時、彼女は「お手洗い」といってライとバーボンから離れる。ある程度離れると、すらっとした体型のスーツ姿の男が彼女の前にやって来てしゃがむ。

「ワォ、本当に小さくなってる」
「煩いよ雲雀くん」
「...そんな顔で睨まれても」

クククっと心底面白そうに笑うのは、ボンゴレファミリー幹部の一人雲の守護者、雲雀恭弥だった。彼は基本日本から離れない為、彼女との通信係に任命されたのだ。
彼はポケットから何かオレンジ色の匣と同じくオレンジ色の指輪を取り出す。

「はい、リングとボンゴレボックス」
「ありがとう…お帰りライファーン」

オレンジ色の石を包み込むように鳥の翼のような装飾がされたリングをチェーンに通して首から下げる。
ボスである綱吉と同じデザインのオレンジ色のボックスはショルダーに入れる。

「あと、これピアス型の無線機と...」
「アサリ!!」

差し出された小さな液晶には彼女がボンゴレの科学者たちと作ったAIがいた。
名前の由来は貝のアサリからだ。
名前を呼んだ瞬間スマホの画面には其のボーカロイドに似た少女が現れる。

【マスター!!】
「アサリ!」

名前を呼べば彼女は嬉しそうに笑みを浮かべた。

「とりあえず、今必要なものは渡したよ」
「ありがとう雲雀くん」

三雲は左右についていたピアスを外し、それと酷似したピアス型無線機をつける。
そして彼をもう一度見て手を振ってライやバーボンの待つ場所に向かう。


帰ってきた彼女を先に見つけたライは彼女をその腕に抱き上げる。
それに対して文句を言うのはバーボンだ。

「ちょ、僕にもだっこさせてくださいよ!!」
「…さ、三雲のどは乾いてないか?」
「無視するな!!」

ギャーギャー言いあう二人に苦笑しつつ彼女は耳から聞こえてくるアサリの情報に耳を傾け彼らを見る。

ライ…偽名諸星大、本名赤井秀一。
FBI所属。

バーボン…偽名安室透、本名降谷零。
公安所属。

そして、三人の中で一番残りの寿命が少ないスコッチ。
本名 高野裕。
降谷とは同期で同じく公安所属。

さて、これからどうしようか…。
二人の喧騒を聞きながらそう思う三雲だった