仕事とは

「三雲、仕事だ」

そう言って四人の住居にやってきたのは銀色の髪を持つ男…ジンだった。
四人は本日休暇中の為、リビングで思い思いに過ごしていた。
バーボンは最近はまってしまった料理雑誌を見て勉強中、ライは推理小説を読み、三雲はスコッチに英語を教えてもらっていた。

「仕事?」
「あぁ、とあるターゲットを消すためにお前の眼が必要だ」
「っちょ!!まさか三雲にそんなものを見せるつもりじゃ…」
「見ることになるな」

ジンの言葉にカッとなるバーボンをスコッチが抑える。
ライは無言でジンを睨みつけるように見る。
そんな大人たちとは反対に彼女は自室に行き、支給されていた黒いワンピースを着る。足はニーハイを履き、ワンピースの上からはフード付きの黒いパーカーを着る。ボックスは幻術により、人の眼に見えないようにする。

準備ができ、リビングに行けばいまだジンに噛みつくバーボン、睨みつけるライ、それを止めつつもなんとかならないのか、と聞いているスコッチ。

「…お前たちより、こいつの方が自分の立ち位置を理解しているじゃないか」

着替えてきた彼女をみて、ジンは踵を返し、玄関に向かう。

「三雲…」
「大丈夫」
「…無理にいくことはない」
「平気」

バイバイと手を振って少女もジンの後を追う。その姿を三人は心配そうに見ていたのだ。
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とあるビルの屋上から見える景色は絶景といえるようなものだ。
ぼーっと空を見上げていれば、ジンの相棒ともいえるウォッカに名前を呼ばれる。
ウォッカの傍に行けば、向かいの廃屋のビルを見るように言われる。

透視していることを分からせるため、幻術で瞳の色を赤色に変え必要な情報を伝える。

「ビルの中には人がいる」
「何人だ?」
「5」
「こんな奴はいるか?」

ジンにそう言われて写真を見れば"綿野太郎"の名前。
再度廃屋のビルを見れば少し小太りな男の頭には"綿野太郎"の名前と寿命があった。
他の人を見れば、どれも同じ寿命が表示されているが、彼だけが唯一寿命が長かった。

「ジン、配置はどうなっているの?」
「あ?いきなりなんだよ」
「たしか出入り口と裏口に二人配置してるっすよ」
「綿野さん、逃げるよ?部屋の中に隠し扉があって、それが…排水口に繋がっている。
あの排水口から入ったら近いよ…右側に階段がある」

指をさしていけばジンはウォッカに顎で指示する。
ウォッカは無線で配置を変える。
黒いスーツをきた男性が一人排水口に入っていくのを確認する。
そうすると、少しのずれはあるものの寿命がほぼ同じになった。

それを確認してジンに頷けば、彼は合図をする。
そうすれば一斉に銃が四方から打たれる。
そして部下が死んでいくなか、綿野さんは一人本棚をずらしてそこから逃げる。

「…綿野さん本棚から逃げた」
「おい、奴はあと何秒で排水口にくる」
「5、4、3、2、1…」

【ジンさん、ターゲット排除しました】

無線からそう流れジンは双眼鏡で廃屋のビルを見る。

「任務完了だ」
「良くやったな嬢ちゃん!!」

そう言ってウォッカはオレンジのキャンディーを彼女に渡す。
正直に言おう。
このコンビ、飴と鞭が分かっているなと思った。