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ところ変わって東京…。
千代田区にあるとある建物に一人の黒ずくめの男とその横に赤い毛並みの特徴のルガルガン(真夜中の姿)が現れた。

「何の用ですか、赤井秀一」

男がきょろきょろとあたりを見渡していればグレーのスーツをビシッと着こなし、横に黄色いサンダースを連れたとこが現れた。

「久しぶりだな降谷零くん」
「…そうだな、それでいきなり連絡してきたと思ったら、警察庁(ここ)に来た理由はなんだ」
「そのことだが…別室を用意してくれないか?」

あたりを警戒するように目線をキョロっとする赤井に降谷と呼ばれた男は「はぁ〜」とため息を吐くとメモをサラサラと書いて己の横に座っていたサンダースに声をかける。

「悪いが、これを風見に届けてくれるか?」
「キャウ」

サンダースは一声鳴いて降谷から渡されたメモを咥えるとダッシュでその場を後にする。

「ヒューゥ、君のサンダースは本当に速いな」
「当たり前です。彼は俺のパーティーの中で最速ですから…コホン、こちらに」

手持ちが褒められフフンと鼻を鳴らしたが、赤井の横にいたルガルガンが赤い瞳でジーっと見上げてきているのに気づき、咳ばらいを一つして赤井達を案内する。

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別室に移動すれば、サンダースが部屋の前でお座りをして待っていた。その口には部屋の鍵が咥えられており、それをサンダースから受け取る際「ありがとう」とお礼を言えば、頭を撫でるように催促してくるため、それに応える。

部屋に入れば、適当にお互い飲み物を準備し、席に着く。
サンダースは降谷の足元で丸くなり、ルガルガンは赤井の後ろの壁に背をつけ座っている。

「それで?わざわざ部屋まで準備したんだ、それなりの理由はあるだろうな」

緑茶を一口飲んで本題を言えとばかりに赤井を見る降谷の目は心なしか厳しい。
赤井は急かすなとばかりにコーヒーを飲む。

「神崎リラン、という人物は知っているな」

疑問ではない質問に降谷は眉間を寄せ、大きく息を吐く。

「…当たり前だ、彼女はこの日本…否世界で最も有名な人物だ」

神崎リラン、彼女は日本出身の世界的有名なポケモンウォッチャーの一人だ。
代々ポケモンエリートトレーナーを輩出している有名な家柄の娘で、その才能はすでに幼少期から発揮され、わずか12歳にホウエン(九州)リーグのチャンピオンに上り詰めるほどの才能がある。その力はホウエンだけにとどまらず、次にシンオウ(北海道)、そしてイッシュ(アメリカ)、カロス(ヨーロッパ)、そしてカントー(関東)、すべてのリーグを齢16でクリアしている。
だが、それほどバトルの才能があるにも関わらず彼女はポケモンに対する知識欲が強く、チャンピオンという栄光を蹴り、ポケモンウォッチャーとしての人生を歩みだした。
彼女が調査したポケモンは多い…だが、彼女が有名になったのはそれだけではない。
彼女はかつて不可能、未知、伝説だと語り継がれてきた伝説のポケモンたちの調査を次々に成功させていったのだ。
それにより、彼女を知らない人はいないといわれるほど有名な人物になった。

そんな人物を赤井が探している?
何かある。
そんな雰囲気が伝わったのだろう赤井は一つため息をこぼす。

「組織…君はよく知っているな?」
「…えぇ、ほんの少しですが潜入していましたからね…それは貴方も同じでしょう?ライ」

降谷がそういえば赤井はフッと笑みを一つこぼして、また一口コーヒーを味わう。

「それで?その組織は数年前壊滅したはずですが?」
「確かに壊滅した…だが、まだ残っているだろう?」
「残党…ジン、ウォッカ、ベルモットですか」
「あぁ、奴らがどうやら数年前解散したロケット団と手を組んだらしい」

降谷は小さく「知っている」と答える。
この組織とロケット団だが、実は数年前、子供の手によって壊滅しているのだ。
組織の方は様々な警察機関ととある高校生探偵によって昨年壊滅、ロケット団に至っては10年ほど前に当時12歳だった少年に壊滅させられたのだ。
だがロケット団に関しては子供が対応したため、全ての幹部、さらにボスであるサカキを捕らえることはできなかったのだ。日本のどこかに秘密裏にロケット団の基地があるとされているが、それを見つけるまでには至っていないのが現状だ。
例え基地を見つけても降谷は過去、ジン、ウォッカ、ベルモットと呼ばれる黒の組織にいた幹部と接触し、顔がばれているため潜入できないのだ。

「その話と彼女のことを結びつけると…」
「そうだ、ロケット団は彼女を狙っている」

赤井はコーヒーをまたもやグイっと飲み、一息つくと両手を組み、そこに顎を載せて事らをそのグリーントルマリンの瞳で射貫く。

「彼女をFBIで保護する。その為に彼女の情報が欲しい」

降谷はその視線をインディゴライトトルマリンの瞳で睨み返す。

「悪いが、断る」
「…降谷くん、事は一刻も猶予はないんだ」
「彼女は日本人、俺の大事な日本国民だ。そんな人をアメリカに?FBIに?冗談じゃない。彼女は俺たち日本警察が護る!!」

降谷のその言葉に足元に伏せていたサンダースが立ち上がりうなり声を小さく上げる。
それに呼応するかのように赤井の後ろで控えていたルガルガンもうなり声をあげて立ち上がる。

「…彼女の知識は味方のうちはいい…だが敵に渡ると厄介なことになるぞ」
「渡らないように公安(こちら)で保護する」

両者一歩も譲らないにらみ合いが続く。
そんなにらみ合いに終止符を打ったのはバタバタと走り、バンと扉を開いた風見だ。傍には彼のパートナーであるサンドパンが主人を見上げている。
そして彼の言葉を聞いた降谷と赤井は自然と走り出すこととなる。

「ふ、降谷さん大変です!!実は…」
「「!!!」」




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