それはだめ
テニス部に所属して早二年と数ヶ月たった現在、何の問題もなく日々が過ぎていく事を私は苦々しいと心の奥底で歯ぎしりをする。
自分の割り切れない気持ち、頭にしっかりと刻み込まれている記憶、毎日友好的な彼を新たな仲間として見ようとするもののどうしても脳内で名前を呼び抱き締めてくれる過去の姿が浮かんでしまう。
成される最低限の会話。
相変わらずのピラミッド最下部に位置した役回りをこなしつつ、今日も洗濯や雑務を終わらせていく。
自然と彼を探してしまう目線を振り切るように頭を激しく揺さぶるのは、いつもの癖となりつつあった。
明日から、以前から予告されていた夏期合同合宿の期間となる。
ゴールデンウイークと夏休みの間の微妙な一週間を特別活動期間と認可した学園は、テニス部を大手を振って見送るのだ。
次こそは頂点と期待からあるのはわかる。
合同合宿に参加する各強豪テニス部の面々は、この二年と少しで顔も名前もきちんと判別でき名前も言えるが仲がいいわけではない。
所詮は敵対する身、しかしながら私以外の部員は好敵手ばかりなのだと交友関係はなかなか良好らしい。
私はどうやら、そんな関係にすら怯えて手がでなかった。
話しかけてきてくれる者もいたが、私のどこか壁を作るような空気を察してすぐに離れていく。
話をするといえば、各校のマネージャーと部長、お手伝いにきた生徒、顧問の先生ぐらいだろう。
業務としてしか会話をしないのだから、当然仲良しな関係にはなれないしうちの重要な練習関係には必ず彼女がついてきた。
「明日からまたお手伝いさせていただきます!池内香澄です、よろしく!」
愛想のよい笑顔を向けて挨拶をし、私の横に立つ彼女は私に今回もよろしくねと可愛らしく笑ってみせる。
プリントに印字されていた名前の通り、彼女は部活動助力特別枠として授業を休む事を許された。
そもそも、気配りができて何でもそつなくこなし愛想のいい彼女を、皆が歓迎し教員は信用しているのだから誰も反対や文句は言わない。
普段ならば何の問題もなく仕事が楽になる程度にしか思わないのだが、そんな中で私はいつもと違う不可思議な感覚に陥っていた。
毎回合宿や部活の手伝いをする度に挨拶をし、優しい彼女の様子が以前と変化している。
それは、私にしかわかっていない事なのかもしれない。
最も、まず本当にそうであるかの確証も正直なところ曖昧にしかない。
しかし、女とは末恐ろしく直感的な生き物で、その直感を確信だと私の脳は位置付けた。
彼女が恋をしているのだと、そしてその相手がはからずしも彼だと言う事を、私は彼女が一番強い笑みを向けた方向にいるだけで理解し、その瞬間。
自分の中の女の子の部分が、憎らしいという彼女への敵意と羨ましいと羨望の念を生まれ落とした。
「…やめてよ」
なんて小さな台詞を誰が聞くわけでも無い。
ただ、風が吹き抜けるに重なってうやむやに滲んだ。
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20120627
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