並ぶ、色彩
今回の合同合宿の主催は、氷帝学園顧問の榊先生である。
参加校は場所提供と主催校の氷帝学園をはじめ、青春学園、立海大付属中学。
関西から四天宝寺中学もこの合同合宿に参加予定だが、1、2日程遅れての合流となる。
あわせて全4校。
レギュラーをメインとしたこの大所帯で、4つのコートを分けて使用し最終日に練習試合を行う。
総当たりではない、シングルスとダブルスで別れてのランダムマッチに参加者の一部はどこかわくわくと胸を弾ませるのだろう。
「作兵衛は、マネージャーなのね」
はい!と元気に答える姿に自然と表情は綻ぶ。
少し違和感のある一回り程大きい青いジャージを身に纏う姿は、体格的にも一年生という年齢的にもまだ成長途中に見えた。
前々から、委員会での立ち振る舞いや迷子二人への手綱さばきも見事だと思っていたので世話やきな作兵衛にマネージャーという立場はぴたりとハマる。
今回立海にマネージャー役は居ないとの事なので現時点では三人で三校につく事となる。
四天宝寺にもマネージャーが居ればいいな、と作業効率を考えていれば作兵衛が部長の手塚に呼ばれてその場を去っていった。
「春本さん、富松くんと知り合いだったんだね」
ええ、昔なじみですと返せば池内さんはまるでお姉さんと弟みたいと笑みをつくる。
そう見えるのならばそれはすごくて嬉しい事で、図らずも頬が緩むのがわかった。
「とりあえず!富松くんは、青学で春本さんは氷帝で私が立海かな?」
「いえ、池内さんがよろしければ氷帝をお任せしたいのですが」
「え?いいの?」
頷く私に、彼女の表情はぎこちない。
てっきり喜ぶだろうと思ったのは違っていたようで、少し悩んでただ何かに納得する様に頷く。
跡部に呼ばれて立ち去る姿を見送ってから、立海にあてられたコートに向かえば合宿の荷物を持った芥子色がざわざわと雑談をしていた。
相変わらず顧問の姿は無く、部長である幸村が私に気付いて軽い足取りで駆け寄るので頭を軽く下げてみせる。
「春本さんか、よろしく」
「よろしくお願いします」
「メンバーは以前と変わらないから、自己紹介とかいらないね。昼食前に軽くランニングだけしようと思うから荷物をロビーに入れるのだけ頼めるかい?」
了承の言葉と共に頭を下げれば、一カ所に荷物が集められ円形になっての軽いストレッチが始まる。
色味の賑やかな鞄を2つずしりと肩にのし掛からせて屋敷に向かえば同じように指示を受けたのだろう作兵衛がコートに戻るところだった。
へらりとした笑みを向けてきた作兵衛の頭にぽんと軽く手を乗せてすれ違う。
矢羽音を決めてもいいなと思い三年で習ったか?というのは無意味な悩みを頭を振って打ち払った。
きっと彼ならば私のように途中で脱落などしていない。
揃いの青いボストンバッグがロビーのソファ近くにぎゅっと集められているのを確認して、向かいのソファ下に自分の持つ鞄を並べる。
氷帝は、おそらく跡部の使用人か誰かが運んでくるだろうと思っていれば案の定のりの効いた黒いスーツの男性が荷台に山になるようにバッグを重ねて屋敷に入ってきた。
入れ違いにまたコートに戻り鞄を2つという作業を繰り返す。
最後の鞄を肩に乗せ立海のコートを振り返ればランニングのノルマを終えたメンバーが私の後ろを歩きだしていた。
「荷物は?」
「ロビーのソファのそばに、何か入り用な物はありますか?」
「いや、飲み物もタオルも今は各自持参分で足りる」
午後からは必要だろうと言うこの相手は、確か柳という名字だったと思う。
背筋の伸びたきちんとしたその立ち姿。
美しいなと思いつられるようにいつもより意識をして背筋を伸ばした。
不意に片方の手が軽くなり、その行動の先へと目線を寄せる。
「それは俺の鞄だ。持とう」
一言だけ残してさっさと私を置いて立ち去る姿に、どこか歯がゆく頭を下げる。
女扱いをされたな、と短絡的に思い片方の肩に乗るボストンバッグを持ち直した。
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20120722
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