俺、だけか


天気は快晴を期し、昼から始まった四コート同時進行でランダムマッチが始まる。
昨日の最終調整も、各校問題なく万全と言えるだろう。
しかしながら何故、現在のこのマッチングになった理由については暴君のわがまま以外無い。
くじなど関係なく、本来試合相手であった四天宝寺の千歳に目の前で変わってくれ!と言い放ち当然のように変わってしまうのもどうかと思う。
OBだからといって優遇されているのか、そんな事をぼんやりと考えながらぎゅっぎゅっと握り混まれるボールが軋む音を聞いた。

「なぁ、鉢屋」

かちりとあったまま外れる事のない目線は、自然と動き声を発する口元へ落ちる。
コート面から跳ね上がるボールは、実に軽やかでいい音を奏でた。

「お前たち二人。随分と変わってしまったな」

「…」

「ま、独り言、だ!」

パシンと高い音をたてて叩きつけられたボールが、耳元を通過してアウトコースどころかフェンスに向かってぶち当たる。
いけどんアタックならぬいけどんサーブか、変わらぬ力業を見せつけられ審判を任されていた富松も目を見開いた。
ぎらぎらとした七松先輩の目は、獣の如く的である私を見つめる。

何を考えているのかは想像もつかないが、お前たち二人などという言葉からあの時代の事からだろうと予想はついた。
確か、彩と七松先輩は仲がよかったし別段自分もそれは兄と妹の仲のようで嫉妬の対象にもならなかったと記憶する。
しかし、さも変化が残念な方向へ向かってしまったと聞き取れる発言は控えてもらいたい。

「ああ、もう…」

含みのある言葉など得意ではない七松先輩の後ろ。
企ての内容など自分には関係ない、しかし、私の事も知らずによくもまあ言える。
あんたらに恋しい人物の命が消えた時を二度も見た私のツラさがわかるのか。
それを間近で手を拱き見送り、あまつさえ傷つけた張本人は自分だと。
半世紀前のままで平然と居られる方が異常ではないか

再度開始した試合の決着は、あっという間に決まった。

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20121224

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