滝の様に汗
学校の帰り道に買い食いして帰ろう、どこどこに寄って行かないかと話すクラスメイトたちを横目に、紙のパックジュースのゴミとプリントをまるめたものだろう紙屑でいっぱいのゴミ袋を片手に掴んだ。
もう片方に通学用のカバンを掴み、運悪く本日は担任にまで頼まれてしまった教室の施錠を済ませる。
職員室に行くまでにダストシューターにゴミを突っ込み、鍵を返却して部活に向かうとすればいつもよりも10分15分は遅くなってしまいそうだと溜息をこぼした。首筋にまとわりつく髪をひとつにまとめ視界をかすめた自分の腕に視線を落とし、焼けたなとひとりごちて少し急ぐように足を動かす。
「私、告白しようって思うんだ」
荷物も軽くなって階段を駆け下りようとした矢先、上の方から聞こえてきた声の人を私はすぐに理解した。
途端にぴたりと体は止まり吐息すら気づかれないように自然と自分を消す。
「え?跡部様?」
「違うよー!景吾はそんなんじゃないし」
「じゃあ誰よ。私アンタからそんな話聞くの初めてなんだけど」
声は着実に階段を降りてきている。
少なくとも踊り場の反対方向にもうすでにいるのだろう。
緊張で動かなくなる自分の足をぎゅっとつねり、此処で立ち止まっているのは自分なのにもかかわらず聞きたくないと片方の耳を強く押さえつけた。
「えっとね、鉢屋くん」
スタンと軽やかな音と共に視界に現れた人の姿は、くっきりと目の前で固まる。
一人が状況を把握できていない中、私と彼女はしっかりと視線を合わせ互いを見据える。
聞いた、聞こえた。
「…春本さん、今から部活?」
「、はい」
「そっか、がんばってね」
「池内さんも、御帰りにはお気をつけて」
そっちこそ。と柔らかいいつもの笑みを向ける彼女は、まるで今自分が発言したことなどなかったかの様に軽く手を振りつつ私の横を通り過ぎた。
ついて行く友人であろう女子生徒はちらちらと私を見ながら通り過ぎ、池内さんに向けて詰め寄るように何かを口にする。
冷静であれば、唇を読むなりなんなりでその後の彼女らの会話を聞こうとしていたかもしれない。
しかしながら、私の頭は存外簡単に冷静さを失えるようでぐるぐると思考だけがめぐる。
いつ言うのか、返事はきっと、いや、私のことなど、彼はきっと、覚えてる?
ぎゅっと鞄の持ち手を握りしめて、気持ちを切り替える。
部活に、もうすでに遅刻が確定しているのだから急がなければいけない。
駆け足がいつもよりもつれておぼつかない。
少しばかりもたついたもののロッカールームに駆け込み、結び目をあげようと自身の髪にふれてみれば、だらだらと汗が落ちる。
制服ににじんだシミを見下ろし、それが熱によっての汗なのか何かを恐れてのものなのか、今の私には判断がつくわけもなくわからない。
ただ、じとりとまとわりつく窮屈な感覚を一気に打破すべく、私はシャツに手をかけた。
next
20130529
- 31 -
*前次#
ページ:
ALICE+