知らずの雨


大川高校というのは、極々一般的な普通科高校である。
難関大学合格率○○パーセント!なんていう宣伝文句も言えない普通科と情報科のある偏差値も並のそれなりにのどかな学校。
しかしながら、県外から受験を受けたがる者が多いという事は、あっちこっちと交友関係の広い校長の手腕なのかもしれない。
同じ県内ではあったが、推薦の話がなければこの学校の所在も自分は知らずに過ごしていただろう。
しかし、見知らぬ学校の推薦であったにも拘わらず素直に此処に入れたら、と思ったのは自分にも何故だろうかと疑問を持ってしまう。

「どうした潮江」

ぼやり、休み時間に入ったばかりの俺がこうやって何もせずにいる事が多かったが学期後半になって話しかけてくるようになった立花と仲良くなった。
日本画の様な細く白い見た目とは打って変わって力もあるし勉強もできるという天は二物与えたパターンの人間であると思う。
仲良くなり始めた当初、そんなスペック俺にも少しでいから分けてほしいもんだと言って見せれば、苦笑いをされたのも今は懐かしい。

「いんや、なんでもない」

「寝不足か?隈が濃いぞ」

「生まれつきだってんだバカヤロウ」

悪態をつきつつまたぼやりと空を見上げる。
今日はこぼれ落ちそうな曇天だ。
こんな日には、さっさと帰って弟の迎えに行ってやらないといけない。
確か朝早くに部活だからと出て行ったくせに傘はもって行かなかったはず。
優しい兄を持って幸せだなと嫌味をぶつけたいが、あの阿呆にはまったくもってこの嫌味すら効果は毛ほどもないのだろう。
携帯を操作して阿呆な弟に向けて迎えに行くこと伝えてみれば、すぐさま兄ちゃんありがとう!とかえってくるのだ。

「左門にか?」

「ん?ああ、雨降りそうだろ?あいつ
傘持って出なかったからな」

「…気持ち悪いぞ潮江」

げんなりとした表情を見ていれば、授業の始まり告げる音が鳴る。
次はなんだっけな、と席を離れていく立花を見送り入ってきた担当教諭の手元の束を見て、まさか、と数人がざわついた気がした。
えげつない。抜き打ちテストなんていまどき流行らない。

楽しそうに笑う安藤先生の顔をちらりと見つつ、手元にきたB5サイズの小さな紙にまとめられた問題の羅列に軽く目を通し、名前欄にきちりとこの年齢にしては綺麗だと言われる字を書いていく。
1年A組潮江門次。

さて、あの意地悪な問題ばかりつくってくれる安藤先生の鼻っ柱を折ってやろうではないか。

ぐりっとシャープペンシルを握る手に力を込めていれば窓の外では、小さな雨粒がぽつりと地面に向かって落ち始めていた。

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20140116

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