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ヤガラで進むウォーターセブン。
揺れる体も靡く髪がまとう風も心地よく、今日も買い出しは順調だ。
ブルーノさんから頼まれたのは、昨日壊れたグラスの代わりを三つとサラダに使える野菜。
予算を握り締めて出かけてから二時間、ギリギリに収まったお使いの内容に私は満足している。

「うわ、また見逃した」

空中を跳ぶ気配に急ぎ目を向けるが、砂埃が少量舞うだけで何の姿も見えない。
ガレーラカンパニーの誰か、というのしか知らないその凄まじい身体能力の人を私は見よう見ようと毎日思っている。
一般人が目で追うなんて無理だと、酒を呑みにきた船大工の一人に言われた事があるが諦めきれない。
船を持っているわけでもない私がドッグに近づく機会もあるわけがなく。
あんなに人が高く跳べるなんて、やはり信じ切れなくて、それをしている人物を私は是非とも見たかった。

「ヤガラちゃん、あれ誰なんだろうね」

話しかける相手がヤガラしか居ない為ほとんど独り言に近く呟く。
水路を進み、裏口からお使いの品を抱えて入ればそれに気付いたブルーノさんがお疲れさんと荷を受け取ってくれる。
もうすぐ開店の時間だろう、エプロンを腰に巻きつつ外に看板と電灯に光をつけた。
ぽわんと浮かぶような灯りに灯されたドアに、今日も酒を嗜みにくる輩がたかるのだろう。

「丁度いい開いたとこみたいじゃの」

「カクさん、お仕事終わりですか?」

「ああ、いつもの頼む」

中に戻る途中で、後ろからかけられる声に笑顔を返して招き入れればブルーノさんのまたかという呆れ声がする。
何も言わずとも用意されるグラスとつまみを目指しカウンターに腰かけたカクさんは、にんまりと笑みを浮かべた。

「なまえ、跳んでる奴はわかったんか?」

それが、まだなんですよね。そう言えばカクさんは、探し方が甘いんじゃと私の頭を撫でた。


end
20120704

ただ憧れで知りたいだけのヒロインと、自分を見つけて欲しい反面いたずら心で教えてあげない小悪魔カク。
周囲はその関係をただ見守るだけで、お互い恋愛感情は今のところナシ
機会があれば続き書きたいと思います。


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