talk with you
宿舎の裏で、膝を抱えるジャンを見つけて無視をしたのはもう一ヶ月も前になる。
当時私と彼は知り合いでもなんでもなかったし、訓練兵の一人がまた希望をなくしたかと思った。
大方、調査兵団を希望したものの、先日の巨人の強襲に聊か自信喪失といったところだろうか。
「干し肉食べる?」
さて、今回は何があったのだろう。
今でも彼とは顔だけわかる一方的に名前をプラスアルファして知っているぐらいで、特別なかかわりはない。
仮にも先輩、仮にも私は優秀で卑屈で弱虫な憲兵団。
後ろに構えるジャンの盾とは違い凛々しく見える陰った角のある馬は足も遅い。
差し出した干し肉と私を交互に見やりながら、ジャンは、誰だと私に問いかけた。
「下っ端の、だけど貴方より一期上の憲兵よ。ほら、食べない?食堂からくすねてきたの」
「…いらねえ」
「そう、なら全部食べちゃう」
ぐいと口に肉を押し込んでもごつくもののごくりと一気に押し込んだ。
「貴方、定期的に此処にいるわよね。仕事終わりによく見かける」
「見てたのか」
「見えちゃうの、私。目がいいから」
故の、憲兵団。
遠方からの万一の巨人襲撃と危険を視覚的に感知してお偉いさんを奥へ奥へと誘導する。
私はいつもここらへんで一番高い塔でばかり寝泊まりしていた。
「だから、ツートンカラーの貴方の頭もよく見えるわ」
ねえ、いつもいつもぐちゃぐちゃな事ばかり考えている貴方の名前をその口から教えてよ。
そんな事、干し肉の名残で出た唾液と共に飲み込んで、私はジャンの隣に腰を下ろした。
end
20140306
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