近況は、父母へ
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挫いた足がじくじくと痛む。
やってしまった、と感じた時にはすでに遅くあと一刻と半も歩けば忍術学園には到着できるというのに山道の隅でへたりと座り込んだ。
弟に渡す予定の両親からの文と土産の団子の包みを抱え、少し向こうに見える屋根瓦に目を向ける。

「あ、なまえじゃん」

「本当だ!なまえさんだ!」

不意に山から身長差のある顔見知りが現れ私を指差す。
きょとり、としていればずんずんと近づいてくるその二人の腰にはしっかりと縄が結ばれ短く切れて垂れる一本がなんとも切ない。
嗚呼、またか。とため息が漏れた。

「三之助、左門。こんなところでどうしたの?」

「実習終わったから学園に帰るとこ、全然つかないんだけど学園って移動した?」

「こっち真っ直ぐだろ!」

見当違いな方向を指差す左門の手を本来学園がある方角に向かせ、私も学園に行くのよと伝えれば当然のようにじゃあ一緒にという声がかかる。
しかしながら、そうもいかない。
私の足は今まさに痛みに刺激されている上に、彼らに救護を呼んでくれと任せるのは恐ろしすぎた。

「俺が背負うから大丈夫大丈夫」

そう言うたが先か、ぐいっと三之助の力で体が持ち上げられあっという間に背中におわれる。
いつの間にこんなに力がついたのかと、呆然としていればまたまた二人して山の中に入って行こうとするのを慌てて止めて本来の道を進ませた。
あっちこっちと道を度々それようとする二人を操作し、本来なら半分の時間で済むはずの道のりは倍。
それでも体力が余っているのか三之助は、私を背負ったままずかずかと学園の中に入って行くのだから男の子の力とは侮れない。

「あれ、なまえさん…?」

入門表を書かなければと三之助を止めてあたりを見渡せば、バインダーを持った孫兵が首を傾げつつ近寄ってくる。

「こんにちは孫兵。小松田さんはお留守?」

「ええ、かわりに入門表持ってました。でも、なんで三之助に背負われてるんですか?」

「なまえ足挫いてんの、まぬけだよなー」

けらけらと笑う三之助の頭を軽く小突き、そのまま入門表に名前を記入している時に気づいた。
左門がいない。
先ほどから随分と静かだったと今更ながらに思った。
爛々とした瞳の彼はもう近くにはおらず少なからず焦ってしまう。

「左門なら数馬探しに行った」

三之助のその言葉は、安心させるどころか不安を煽る。
あの子がまともに到着などできるわけない。

「数馬ならさっき保健委員の当番で医務室に行ったけど」

「医務室あっちだろ?」

「真逆、なまえさんすみません」

いいのよと言えば、医務室まで三之助ごと案内してくれると名乗り出てくれる孫兵に甘えておいた。
もういつまでも迷子の操作に疲れたというのが本音であるが故の甘えなので許してもらいたい。
のろのろとしたペースで確実に医務室まで向かえば、戸口で見慣れた顔が2つにこにこと対話を交わしていた。

「?あ、珍しいなまえさんだ」

「おぶわれて医務室って事はどこか怪我ですか?」

「さすが藤内。来る途中に挫いちゃって。あ、ここまでありがとう孫兵、三之助」

ゆっくりと縁側に下ろしてもらい足を数馬に差し出せば、テキパキとした動作で治療が施されていく。
こうして見れば随分と皆しっかりと立派に成長していると思う。
あまり会わないからこそわかる皆の成長は、ただの知り合いである私もこそばゆく嬉しい。

「姉さん!」

足音が後方から響き、目線の端から見慣れた顔がこちらへと駆け寄る。
久々の声は少し低くなったのかもしれない、体つきも少しよくなった。

「作兵衛、息災ですか?」

「はい!怪我したって左門から聞いて!」

どうってことないと足を見せれば治療を終えた数馬から、杖はついて歩いてくださいと釘をさされてしまう。
作兵衛の後ろで作兵衛見つけたから連れてきた!と左門が腰に縄を繋がれたまま三之助に報告しているあたり、偶然作兵衛と鉢合わせしたのだろう。

「父上と母上からの文と、お土産にお団子。そうだ、みんなで食べましょうか」

私がそう言えば、お茶を煎れると立ち上がる藤内に孫兵が手伝うとついていく。
数馬が医務室から人数分の座布団を並べて、三之助と左門がふらりとどこかに行きそうになるのを縄で巧みに操る作兵が苦笑いを浮かべた。
隣に座る弟を久しぶりに撫でてやれば、もう子供じゃねえですと言い返すが手を払いのけたりはしてこない。
周りが軽く茶化し、到着した湯のみを手にとって唇を潤す。
我が弟は相変わらず随分といい友に囲まれて勉学に励んでおりましたと、伝える事の嬉しさが湯のあたたかさと共にじわりと滲んだ。

end
20120904

作兵衛姉と三年でほのぼの
で、10000hitリクエストをいただきました。
藤内と数馬と孫兵のしゃべり方が難しく、作兵衛に関しても最後に出てきたので少ない。
迷子二人がやはりきっかけとして出しやすいというのが本音でした。
なぜかだらだらと長くなっただけで本当にほのぼのか?と疑いたくもなりますが…
やはり三年は可愛いなぁと書きながら思いました。

Thanks request 優様!


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