Let's dress up.


四国行きが決定してから三日。
その日に四国に向けて出発できるわけもなく、元の時代のようにその日に目的地に到達できるわけでもないこの時代。
政宗さんと小十郎さんは政を詰め、不在の間の警備や伝達は事細かく決めていく作業に追われているらしかった。

「姉上、これは…」

「あら、小十郎。どうかしら?」

そんな忙しい二人を置いて、私は何もできない状態で女中頭でもあり小十郎さんの姉にあたる喜多さんに精一杯の装飾を施されていた。
本来は髪をまとめるのに使用する髪紐をまるでラッピングするように巻かれ、壊れてしまった簪の飾りを紐に差し込む。
日本らしい落ち着いた飾りこまれた所詮板の完成だ。
といっても、私は何をされているかわかっても自分を確認する事はできない。
あくまでも装飾をほどこされている最中の動きから予測したに過ぎず、この時代の鏡は到底何かを映しこむには適していなかった。
よって現状、どういうオブジェとなっているかは判断のしようがない。

「折角初めて奥州から出るのですから少しくらい着飾ってもよいでしょう?」

「しかし…」

「さあ、アイ。政宗様にも見ていただきましょう」

「政宗様は今謁見の最中で…」

「それならば先ほど先方がお帰りになったところ、小十郎、きちんと把握してこそ政宗様の右目ですよ」

喜多さんは小十郎さんに対してやはりというか強かった。
静かに反発を許さない喜多さんの覆いかぶさるような一言一言に気圧され、若干の不服そうな表情を浮かべた小十郎さんをそのままに、喜多さん抱えられて向かうのは一番日当たりのよい政宗さんの私室である。
喜多さんが障子前に膝をつき、政宗さんに声をかければすぐに入ってよいとの返答が返る。
スルっと開く障子の先では、片手に筆を持ったままの政宗さんが視線を書状に向けたまま何用だ。と声を発した。
その背はぴんと伸びていてそれだけで育ちの良さがにじみ出ている。

「いえ、もうすぐ四国への出立もあります故、アイを少々めかし込んでみましたもので」

そのお披露目に。と続いた言葉に政宗さんの手から筆が硯へと置かれ目線がこちらへと向く。
一瞬きょとんとした政宗さんは、喜多さんが掲げる私をしばらく呆然と見た後口を押えて肩を震わせ出した。

「So cuteっ随分と派手になったじゃねえか」

「これ、政宗様。笑うとは何事ですか」

「Sorry、いや。しっかしこりゃ懐かしい。俺が使ってた髪紐か?こんなもん残してたんだな」

「政宗様の成長の痕跡、私がそう簡単に捨てるわけもありませんでしょう」

違いない、と喉を鳴らして一度笑って見せれば、政宗さんは喜多さんから私を受け取り膝に乗せる。
覗き込まれる事を想定し、モニターは白のみに統一させていつものごとく顔を表示させた。

「明朝、出る」

言葉は先程と違い真剣みを含む。

「俺と小十郎、忍を一人とお前だけだ。大人数引き連れて通り道に使う越後に甲斐、三河に攻め込みにきただの勘違いされちゃたまんねえからな」

「それもそうですね」

「ちゃんとわかっとけよ?奥州王、この地の領主がお前の為に国を開けること」

「もちろんですよ。政宗様」

ニヤリという効果音の似合うであろう口角の上がる正宗さんの笑みは、至極楽しそうであった。

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20130612

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