▼小竜の飼い犬
犬神。というのは神と名はつくが神ではない。
とにかく犬の首を飢えさせ、飢餓により苦しんだ生命を神ともてはやした存在。
「あのねー!僕十四松!犬神だよ!!」
焦点のあわない目で私の目の前にきた青年は、ぺらぺらと矢次に自己紹介をしてからアッという間にどこかへ行ってしまう。
なんだったのかと思うほど茫然としていれば、チョロ松に手招きされる形で、古いカラぶき屋根の日本家屋の中に入る。
見た目に反して、埃っぽさもない内装を見渡していれば改まった様に名前を聞かれた。
「奈緒。うん、これで君は僕のね」
にっこりと、とても優しい笑みだと記憶している。
不思議と、その時に撫でられた手はあたたかく感じられたが、言葉の端に見えたまだよくわからないそれを何と表現していいのかわからなかった。
「ここに住んでいるのは、僕と十四松とここの主のカラ松。僕が七歩蛇。十四松が犬神。カラ松が…」
少し平べったく硬い座布団の上。
小ぶりながら立派な囲炉裏を囲いながら、十四松が甘酒をぐいぐいと流し込むように飲んでいる。
説明を始めたはずのチョロ松が、途中で言葉を止めるものだから、自分の分だとわたされたまだ熱い甘酒から口を離し、そちらに目をやった。
「まあ、君は僕のだしあいつはほとんど帰ってこないからいいか」
あっけらかんとそう言ってのけ、チョロ松はそばにいた十四松と私を抱き寄せてふうと気の抜けるような小さく息を吐き出した。
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20160602
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