▼無意識の興味
奈緒がこの屋敷にきて3カ月が経過した。
毎日やることは、チョロ松と十四松の身の回りを世話して、夜は必ずチョロ松の隣で睡眠をとる。
ただ、ただ、それだけだった。
チョロ松自身、奈緒を己の所有物としたが周辺を歩き回る許可をし比較的自由にさせていた。
体を重ねるわけでもない。ただ、暖をとるだけのために共に寝ていた。
「こんにちは、お姉さん」
チョロ松と十四松が外へ出かけて行き暇を持て余し、山菜採りにでかけた山中。
目の前に現れた青年はにこにこと笑顔を向けて奈緒に話しかけてきた。
こんな人里離れた山の中に、着流しと少しボロついた傘、綺麗な桃色の鼻緒の下駄をはいたハイカラな青年。
人懐っこいその表情も合わさって明らかな違和感しかなかった。
「あなたもチョロ松と同じ妖怪?」
「あ、バレちゃう?やっぱり?」
「人間のフリをしたいなら、こんなところでそんな派手な格好じゃ変よ」
それは勉強不足だったな、と青年は傘を閉じて奈緒に近寄る。
愛想のいいその表情は、黒目の大きさがとても印象深い。
「僕は、トド松。ここから谷の方へ下った所にあるお屋敷に住んでる目目連。絵巻とかだと障子に目玉がぎょろぎょろある感じに描かれちゃうけどあれ可愛くないんだよねー」
ぺらぺらと、十四松とは違う説明を垂れ流しトド松はにっこり笑って奈緒の手を引く。
屋敷から一歩、離れた。
「お姉さんあの屋敷の蛇のってきいたけど、物好きだねー?あんなちっぽけな蛇のどこがいい?」
「どこがっていうか、蛇とかよくわかんなくて」
「七歩蛇知らないだけ?教えてあげよっか?僕情報収集なら得意だし妖怪の事なら結構わかるよ」
ねえ、教えて欲しいでしょ?あいつがなんで君を連れて帰ったか。
それは、普段の奈緒であれば別に気にならない理由だった。
知らなかったとしても、衣食住を与えてもらい、ただのんびりと毎日を過ごせている。
頭の片隅で机に向かって必死に何かをしていたような記憶を考えればとても楽で気ままな生活。
それを崩してまで、知る理由など…
「じゃあ、とりあえず立ち話もなんだし、…うちくる?」
ない、はずなのだが。
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20160611
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