▼たべるか食べないか

うち、とは形の違ったその日本家屋は、少しいびつな瓦屋根の平屋で何人が使用しているのだろう山積みの布団が隅っこに積み上げられていた。

「人間の飲み物とかそういうのはお酒か水しかないんだよね。水でいい?」

「あ、いえ」

結構です。と答えながらリフレインするチョロ松の言葉をかみしめる。
外出、遠出、外泊は許さないけれどどこに行っても誰と会話してもかまわない。僕らだけじゃつまんないでしょ?でも絶対うちで出したものか自分で狩ったもの以外口にしちゃいけない。これだけは守って、行ってらっしゃい。

「ふうん」

「水筒もあるので、お気遣いなく」

「まあ、いいけど。じゃあさっそく、お姉さんは何が気になる?」

何が、と言われて、水筒からくみ取っていれていた川水と喉に流しながら少しばかり考える。
なにがわからないと言われたらすべてだ。
ここに私がいる理由。顔もわからない家族、生贄にされた経緯、カラ松というまだあった事のないうちの家主の事。チョロ松と私の関係。エトセトラエトセトラ。
目の前にいるトド松の存在もよくわかっていない。
にっこり笑っているのに、時たま首や額のあっちこっちからぎょろりとした黒目の大きな目が突然あらわれてこちらを見てくるのだ。

「此処は?」

現在を問おう。
此処は彼の家にあたるのだろうけど、到底一人ですんでるようには見えない。
帰り道もあいまいなのだが、それはなんとなくどうにかなるような気がしている。

「此処は、僕の家。そっちと同じ今は三人で暮らしてるよ。でもここってばじめっとしてるし、変なのが周りによく徘徊してくれるから嫌なんだよねー僕」

「さんにん…」

「変な三人、っていえばそっちもだけど天狗とがしゃどくろと目目連。天狗の兄さんは、毎日どっかにでかけてふらっと帰ってきてるけど、どくろの兄さんはいつも此処にいるよ」

あそこね、と指さされた先は、先ほど少し気になった山積みの布団で、ほんの少しだけそのやまが動いたとこをを見るに間違いなくそこでこの会話を聞いているのだろう。

「あの、お二人に聞きたいのですが…」

出てきなよ一松兄さんと布団に向かって声をかけたり引っ張ったりを繰りかえすトド松を見ながら、ぽつり、不意に気になった事があった。

「人間、食べますか?」

素朴な、疑問だった。
もしチョロ松の様にただ理由があって食べないのもいるかもしれない。
人間は骨ばっかりでおなか一杯にならないからいいやと言ってのける十四松もいる。
うちにいる二名は、食べられないこともないけれど食べない。
口調から、昔は食べていた事を察したが、まあ、私は食料に入っていないのだからいいかと安直に感じていた。
非常食ではあるかもしれないが。

「食べるよ」

にんまりと笑って言うトド松の周りの壁にびっちりと、こちらを一斉に見つめるいつかと同じような目玉が見えた。

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20160614

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