▼優しい色した
家の前。人型になった十四松に抱えられたまま何かをぶつぶつと呟くチョロ松の後ろを進む。
ときおり聞こえてくる言葉から察するに、私を自由にさせすぎた事へのどこへもぶつけきれない苛立ちに聞こえるが、私にはその苛立ちをぶちまける気はないようで、ちらりと向けられた目はいつものどちらかといえば優しい瞳が見えた。
そんな目で見られてしまうと、先ほどの羽音の天狗に会えなかった事をもったいなかっただとか、会ってみたかっただとか口にする気はなかったが、するべきではないと思い知らされる。
不意。ぴくんっ、と十四松が耳を立て、鼻をひくつかせたのはまだ玄関の扉まで1間(約2メートル)ほど先の距離で、チョロ松に向かってワンッと一鳴きしたことにチョロ松が、目線を戸口に向けて私の頭を撫でた。
「…こっちもお帰りか。十四松、奈緒おろして、奈緒は、挨拶の準備して」
「あい!」
「家主が帰ってる。奈緒は、僕の従者だって、はっきり言うんだよ。君はもう半分僕だから妹か娘とかでもいいんだけど、一応ね」
身支度も整える暇も言葉の意味を問いかける暇すらもなく、チョロ松に手を引かれ十四松に押されいつもの我が家に入る。
3か月間過ごし、もうだいたいのものがどこにあるのかも理解している最近。
いつもとあきらかに違う空気に、少しだけ背筋がぴんとのびた。
ただいまとおかえりをどちらも口にした2人の間の私から見えたのは、青黒い髪をした二本の角と口端からむき出しになったこちらも二本の牙を持った鬼。
見た目とは裏腹にとても優しい笑顔で2人と同じように言葉を紡いだ。
「ブラザーにお土産がある…っと、こちらが噂のレディか?」
手には、ビードロの笛と手触りの良さそうな反物を抱えたその鬼は、少し困った様に私に軽く手招きをする。
next
20160616
- 19 / 34 -
▼back / top / bkm / ▲next
ALICE+