▼よく笑う鬼
チョロ松は、一言で言えば細くて食事が足りていないのではないかと思わせる。
十四松は、一般的な健康な体格といえるだろう。
ただ、2人とも、身長はそれほど高いわけでもなく見上げて首が痛いなどと思ったことは一度もなかった。
「ん?どうしたレディ?」
「いやなんでもありません」
カラ松は、大きい。
巨人というわけではない、いかんせん小さめの2人との差が激しくちゃんと目を見て話そうとすればするほど首を痛めてしまいそうだった。
十四松が野山を駆け回り集めてきた食事を口に運びながら、囲炉裏を囲い私の真正面に座ると近くに座っているはずなのにチョロ松がさらに小さく見える。
「チョロ松。贄を仲間にするなら一報くれたっていいんじゃないか?」
「めったに帰ってこないから帰ってきてからでいいと思ってたんだ。カラ松こそまた人里におりたんだろ?こんないい反物よく手に入ったもんだよ」
「カラ松にーさん!これ!壊れそう!」
「大丈夫だブラザー。これは、俺が踏んだって壊れなかったんだから早々にどうにかなる代物じゃない」
革の紐についた七色に光るビードロの笛を十四松の首につける手先はとても丁寧でぎこちなさはない。
ぼんやりと、自分の分の焼き魚を食べながらその様子を眺めた。
話を聞く限り、カラ松はその足であちらこちらに見聞を広げるのが好きなのだという。
そのせいで言葉遣いがいささかおかしいらしいが、特に気にしなくともすんなり耳には入ってきていた。
その旅は、7日ほどの時もあれば半年や一年いないこともざらで、しかし行った先で必ず遊び足りない十四松へ玩具を。
季節問わず寒がりなチョロ松には反物や着物を土産として持ち帰るというのを繰り返していたらしい。
その角や牙で人里へ…?と溢れる様につぶやけば、にっこりと笑ってその象徴ともいえる角や牙をするすると引っ込めてしまいただ大きい男がそこに存在した。
なるほど、チョロ松が特徴のある舌や目を。十四松がふかふかの耳や尻尾を一時的に隠してしまうのと同じなのだろう。
「次の時には、奈緒にも土産がいるな。何がいい?」
ぐるぐると喉を鳴らし猫の様に体を丸める十四松をなでながら、カラ松は私に向かってぱちんと指を鳴らした。
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20160617
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