▼注意

よく耳にしたこともあるだろう。
野良猫に餌をやってはいけません。と、
まだ小学生のころ、なぜそれがいけないことなのかなんてかわらなくて、毎日の様に給食ででたパンやおかずを帰り道の空き地に住み着いていた野良猫にあたえていた。
今思えば、ただ世話をやかれる側でしかなかった当時の私にとって、世話ができている様に思わせてくれるその野良猫は、お人形遊びやままごとの延長線上にであったのだろう。
当然、大人たちがダメだと言う理由はそんなことではなく、住み着いてゴミをあさったり衛生面でどうのという事だと今はわかっているつもりだ。

「猫に餌やっちゃいけないよ」

校舎裏の使われなくなった物置の裏。
錆びたトタン屋根と色が薄くなってしまった水色のペンキで塗られた壁を背にして、道路と学校を区切る塀は、ボロボロで穴だらけ。
用務員さんすら手をつけていないのだろう背の高い伸びきった雑草だらけのその場所に座り込む紫色のパーカーは、私の声を無視して、あけたばかりの猫缶をとら柄の少し汚れた猫に寄せた。

「…」

「松野…何松くん?飼えないんなら人間から餌をあたえちゃいけない。猫ほぼ毎日餌やってるのばれてるよ」

「…別に、関係なくない」

口を開けばツンとした態度をとる。
これは何松だったかと、相方からもらっていた情報を頭の中でぐるぐるとひっかきまわす。
次男は、演劇部のあれ。
五年が、野球部のあれ。
六男は、相方の友達。
長男と三男と五男のイメージがわかずに座り込んでながめていれば、一瞬こちらに驚いた様子で目をまるくしたもののすぐ口元をマスクでかくしてしまう。

1か3か5。

奇数のどれかでまあ、どうでもいいかと思っていれば、満足したのかトラ猫がにゃおんとひと鳴きして松にすり寄った。

「生徒会長。やってるから関係なくないんだよね。ほら、保護者の方とかにはめんどくさーいのがたくさんいらっしゃるから」

「…」

「飼えばいいのに。あなたの家マンションとかじゃないでしょ」

「チョロ松兄さんが嫌がる」

「…それ、何番目?」

「さん」

3と言われて、そして3を兄と言った事で5番目の松であることが確定したが、3番目のチョロ松とやらは猫アレルギーか何かなのだろうか。
トラ猫がするりと塀の小さな穴から外に出ていってしまえば、5番目は片手に空になった猫缶をつかんで立ち上がる。
制服のズボンのすそには、猫の毛だろうか、少し綿ぼこりの様なものがくっついていた。

「五男くん、猫すき?」

「…まあ、それなりに」

振り返ることなく、かえしてくれたセリフに、わかりやすすぎる天邪鬼が見え隠れしていた。

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20160705

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