▼四番
だから餌ダメだって、と生徒会長は、文句を言いながらよく此処へ来た。
内申点があがるから生徒会長になったのだと聞いてもいないのに答えるその人は、ひざ上丈のスカートをうまいぐあいにまとめて目の前に座り込み、ここいらに住み着いているトラ猫をすこしビビりながらなでる。
そんな上から手を差し出したら余計攻撃されると思って警戒してくるのにと思ったが、別に言わなくても自分に害はないので答えない。
以前一度ひっかかれていたのによくやるなとも思う。
なんどもなんども繰り返すから、トラ猫は、あいつがくると一度鳴く。
「なあ、お前松野の何番目?」
放課後のいつもの場所で、今日は猫缶はやめて煮干しと使い込んだ猫じゃらしを持ってきた。
もう先端が薄汚れたそれがお気に入りらしいトラ猫は、見知らぬ人間の気配に素早く姿をくらましてしまう。
手に持った行き場のない猫じゃらしが、フェンスの向こうから入ってくる風でふわりと猫のしっぽの様に揺れた。
「よん、だけど」
「はずれかよ。なあ、一番目どこにいる?別に同じ顔だからお前でもいいんだけど」
「いーや、俺はあいつに一発カマすまでイライラおさまんねえ」
「なあなあ、お兄ちゃん呼んでくんねえ?」
ああ、まためんどくさいのが。と思った。
五人の兄弟は、上から順に喧嘩っ早い。
トド松は、手は出さず陰険に周囲からの情報で締める。
十四松は、簡単に手がでるが自分からふっかけることは皆無に等しい。
僕は、兄から流れてきた流れ弾がよく当たる。
チョロ松兄さんは、うまく隠しているが突っかかってきたやつに対して容赦がない。
二番目は、部活という壁を突き破る行為はそれほど好き好んでやらない。
問題は一番目だ。
吹っ掛けられればもちろんとでも言いたげに買い。自らめんどくさそうな物事に顔を突っ込んだ。
物は壊さないが人をよく壊した。
呼んでしまおう、そう思って角が少しばかりへこんでしまっている携帯を取り出す。
ツィンクルサテンの様な光によって黒から紫色に見えるそれが気に入って買ったケースももう傷だらけで当初漂っていた高級感や特別感はない。
にゃおん、猫の鳴き声がした。
なんできた、なんで今、やっかい事はきらいだと言っていた、なんでなんで
足元にどこかに行ったはずのトラ猫を引き連れて、片手に猫缶を持った生徒会長は、くっきりと眉間にしわを寄せて立っていた。
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20160709
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