▼相方
あつしくんさ。
表向き、あまり話もしない男が、誰もいないのを確認して話しかけてくる。
その手には、女子かと思うパールピンクの携帯が握りしめられていて、話しかけているくせにそいつの目線も一切そこから離れることはない。
「生徒会長と付き合ってんの?」
「それ、こないだも聞いてきたけどなんかあるの?」
「みーんなが疑ってる事を僕が聞いてるだけだよ」
喉の奥を鳴らすように笑うと持ち上げられた目は、さも楽しいと言わんばかりにものを言う。
「付き合ってないし、付き合う気もないよ」
「それ、理由は?もうほぼ毎日一緒にいてさ。そういう雰囲気にならない?」
こういう疑問が多いのはわかるのだ。
生徒会に所属して2年目。
当初、誰もが自分が生徒会長に立候補するものだと思ったのだろう、ダークホースとして現れたの奈緒をそれまで誰が注目したか。
もともと幼いころからの友人であった。
男女で友情が成り立つ存在などないと考える者もいるだろうが、此処にはそれが確かに存在していた。
女友達ではない友人の一人で、もはや半身とまで思っている節もある。
互いを相方だと、背中を任せられる存在だと実感したのは、生徒会に入って1年目のはじめのこと。
自分が驚くほどにポンコツになった事と、奈緒が驚くほど怪我をするようになった事でお互いに自覚した。
あの時にお互いに発した「お前といた時ならこうならなかったのに」というのを、口に出すまでまったく気が付かなかったそれ。
なら、共にいねばなるまいと、何も言わずに一緒にいるようになった。
これが男女の関係かと言われたら違う。
それがわからず理解できない人とはお付き合いもできないだろうと笑って話したのも最近のことだ。
「俺と奈緒が付き合う事はないな。あいつとセックスなんてなんか気持ち悪い」
「そう?会長結構かわいいけど」
かわいいかわいくないの問題ではないのだけれど。と思いながらそれは口に出すことなく今日は、猫に餌をあげに行くと言っていた相方を思い出す。
昔からなんとなく思っていた。
あいつに手をだすのは、俺じゃない。
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20160714
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