▼お揃いに憧れて
兄たちは、母に逆らえない。
母の準備したものを文句も言わずに着るし、何か欲しいものがあれば母に精一杯おねだりをする。
母さんは、ニートたちと兄をひとまとめにすることが多いが、服もひとまとめに買ってくることが多い。
小さい時には、私にも兄たちとは色違いの何かを買ってきていたが、女のなんだからもっとかわいいのがいいわよね。小学校にあがると同時に色で判別されることはなかった。
その代わり、兄たちそれぞれに色が振り分けられたのは、部活や食の好みで体形にわずかながらに差ができてしまい、どれでも着れるではなくなったからだろう。
「同じ服が六着並ぶのって、いつみても部活感あるよね」
洗濯物をする母さんの横で、そうつぶやけば、部活なら同じデザインに色でしょと指摘されてそれもそうかと納得する。
六着のパーカーの横に並ぶ私のブラウスがとても小さく見えるのは、成人済み男性と成人前の女性の体格差だろう。
私のブラウスの横にチョロ松兄さんがよく着ているシャツが並んで、仲間ができたように見えて少しうれしくなった。
「そういえば奈緒が、シャツとかブラウスよく着るのはチョロ松の真似だったわよね」
「だって、母さん私にはおそろい買ってくれないじゃない」
「だって、パーカーとかつなぎじゃ女の子産んだ母さん何にも楽しくないわ」
それもそうかもしれないが、と言葉をつづけようとすれば、そうなの?と末弟で兄の声が聞こえた。
手に持ったスマートフォンから目線を外してこちらを見てくるトド松兄さんは、不思議そうに私と母を交互に見やった。
「奈緒は、チョロ松兄さんのあのクソダサセンス認めちゃったわけ?」
「いや、さすがにチェックに薄い茶色のスラックスは推奨しないけど。パーカーの中にシャツはいいと思う。ラフなのにきちっと感あってかわいいし」
「時と場合によるって事?ふうん」
納得したのだろうか、そのまままたスマートフォンへ目線を落としたトド松兄さんは、すぐまた何かを思いついたように頭をこちらに持ち上げた。
「今度買い物行こ」
末の兄は、妹をとられるのが不愉快なようねと、母さんが私にだけ聞こえる声でほくそ笑んだ。
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20160529
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