酔っ払いは二種類にわかれる
あ、やはりこいつもただの男だ。と思った名前は、すでに重なった佐助の唇に目を丸くした。
いいか悪いか、軽く重なっただけで離れた彼は満足げでいて不満げ。
抵抗する暇も与えず抵抗しろとでも言いたいのか、と軽く睨みつけられるとごめんごめんと返す佐助に名前は小さくため息を吐き出した。
「あはー、ふふ。口吸いなんて久々」
「…くそが」
「口悪いよ名前ちゃん」
ほんのりと頬を染める佐助を見ながら徐々にアルコールが抜けていくのを名前は感じとっていた。
まだ動けないが、悪態をつける余裕がでてきたのが何よりの証拠だろう。
手の甲で唇を拭って彼を睨みつけると、ごめん。とまた困ったように佐助は笑う。
「こっちの酒ってばよくまわるんだもん」
「言い訳にしか聞こえない」
「ほんと、ほんと。こんなふわふわするの初めて、ザルなんだけどなー」
饒舌に動く唇は、梯子から顔だけを出すように名前を見つめる。
一瞬でも、一回ぐらい仕方ないと諦めそうになった自分を怒鳴りつけたくなると名前は動く左手で目元を抑え後悔した。
くしゃりと頭に伸ばされた手で撫でられ、目線を向ければ微笑みを浮かべた佐助さんが見つめる。
「名前ちゃん、危機感持ってね?」
「…持ってたはず」
「俺様に簡単に唇奪われちゃねえ」
「破廉恥」
「旦那みたいな事言わないで」
話に聞いただけの上司は破廉恥が口癖なのかと少し考えて、目元を抱え込み今回は自業自得だと考えを改める。
それを見ていた佐助が、小さく何かを呟いたように感じたが風のようにながれ過ぎたそれを聞き取る事などできるわけがなく再び目線をかち合わせる。
またへらへらと緩む佐助の表情に、こないだまでの警戒心をお前はどこに捨ててきたんだと問いたい。
名前は危機感を、佐助は警戒心を間違いなく捨てている。
「体は許さん」
「そこまで手出す気なら口吸いだけで止まって会話なんてしてないよ」
「油断ならない」
牽制のつもりの言葉すら受け流し、佐助はじゃあね、おやすみと梯子を降りていく。
ひょこひょこと視界端に見える赤毛に目線を向けて小さくおやすみと呟けば含み笑いの混ざったおやすみが再度唱えられた。
パチリと消える部屋の灯りと食器を片付けていく音に、電気消さなくていいと思うものの仮にも忍者が都会の明るい暗がりで作業ができないわけがなかろう。
「本当にもう…」
今更ドキドキイベントなんかいらないって
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20121116
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