愛想も、これも、自分の実力
これから売れる良い子。というのは、自分の中で結構確立させているつもりだと、阿藤は常に思っていた。
自分の感性に自信を持ってスカウトやオーディションの審査に加わり次世代のスターを自らの目で見つける、と躍起になるほどに今の仕事は充実していてやりがいもあった。
そして今日、この間見つけたばかりのニューフェイスが現場見学に現れる。
「俺はな、人脈と愛想の良さなら誰にも負けん」
常日頃から部下につらつらと言っていた甲斐があったというものだ。
ニューフェイスはまさかの顔も覚えていない大道具の知人だという。
これこそ、新人芸人からアルバイトにすら名刺を渡して愛想を振りまいた成果と言えないだろうか、いや、まったくもってこれは成果以外のなにものでもない。
都内の小奇麗なスタジオに、雑誌の撮影のために集まっているモデル数人にはすでに説明を終えており、撮影が進むい片隅で今か今かとチャイムが鳴るのを待った。
「っ!きた!」
唐突に聞こえてきた高らかなチャイムの音に急ぎ足でインターフォンの前に立つ、電子機器を通して聞こえてくる不安げな会話から察するに大道具も付添いとして来ているのだろう。
どうぞと中に促せば、ドアの開く音と吹き抜けの下の階に二人分の足音が響いた。
「ようこそ!佐助君!」
身を乗り出すように声を上げてみれば、あはは、どうも。なんて空笑が聞こえたがそれがどうした、後悔はない。
このニューフェイスを何としてでも我が事務所に欲しい。
その一心で、大道具の女にも愛想よく笑いかけた。
「名字さんもよく来たね。上で撮影なんだ。上がってくるといい」
トイレならそっちだよ、と二階の奥を指差して細めた目線は佐助くんから離さない。
適度に鍛えられていながら細身の四肢に端整な顔つき、姿勢もいいし髪色もどうやって染めているのか実に綺麗な色をしている。
「さ、此処がスタジオだ。自由に見学して行ってくれたまえよ!」
此処からが本職の腕の見せ所だ。
next
20131012
[
back]