現代の交通技術に感謝して


月末。
今日は、私と佐助さんの給料日である。
完全歩合制の佐助さんと私の基本給+出張費+時間外作業費+退職金。
マイナス、福利厚生保険うんぬん。残額。
おそらくこれが私たち二人にとって最後の高額収入になる。
基本的に私は外出をあまり好む方ではないし、佐助さんも仕事でたくさんの人に係りすぎるせいか休日に外に出たいとは言わない。
仕事を辞めたばかりの私とふたりでのんびりと、惰眠をむさぼりテレビを見てご飯を食べる。
最近の休日はほぼそれだけだった。
しかし、贅沢できるのは今しかないと考えるとこの考えも一時的にではあるが変わるのだから不思議なものである。
佐助さんのメディア露出が増えてきた事で、ある意味ストーカーのような人もでてきたようだが何の問題もない。
変化。という変装とはまた違ったその隠れ蓑は、一か月以上一緒に暮らしている私でも声をかけてくれない限り気付くことはない。
便利ですねえ。なんていえば、流石でしょ?なんて鼻を鳴らしてみせるのだ。
話をもどそう。
せっかくの高額収入。
私はどうしても旅行に行きたかった。
それは、今までも何度か仕事で訪れる機会もあった場所ではあるが佐助さんと出会いさらにきちんとまわりたくなった山梨県。
過去に甲斐の国と呼ばれたその地は、佐助さんのかけがえのないものであると知ってその場所を希望した。
佐助さんは、少し複雑そうな顔を浮かべていたけれど、お館様にあいさつしなきゃなあなんて言ってくれたからきっかけにはなるだろうと考えている。

「阿藤さんに聞いたらあんまり長期のお休みはあげらんないって言ってたけど、甲斐までそんなに早くつくの?」

「新幹線っていう便利な乗り物がありましてね」

「ふうん、三日ぐらい?かかる?」

「2時間あれば行けるんじゃ?」

うっそ!と声荒げる佐助さんは、早速と言わんばかりに最近使い慣れ始めたスマートフォンで何かを調べ始める。
事務所に所属してから阿藤さんから私経由でばかり連絡している時間がもったいないと言われて支給されたもの。
そのスマホに向かって声を張り上げれば文字がうててしまうのだから、便利なモノで最近は、どうやっているのか一発で認識させる発声テクニックはすごいと思うがつかいどころは今の所音声認識がある場所でしか意味がない。

「新幹線のチケットと旅館と、観光パンフレットもほしいから買いに行かないと」

わくわくそわそわ。
仕事をしていた時ではできなかった旅行ができるとなれば楽しみな気持ちはふつふつと湧き上がってくる。
しかし貧乏性の私と節約家の佐助さんの事だ。
最安値でたたき売り。
計画の話をきりだして3日後には、もう来週末に旅行に行ける準備は完璧に整っていた。


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20140212

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