きみとすこし


「おはよう、名前」

なんてハートが語尾についていそうなほどご機嫌な佐助さんとは裏腹に、私の羞恥心はどっかにすっぽ抜けてしまったようだ。
もちろん、佐助さんの様に和装に慣れていないのだから起きたら帯だけ装備しておっぴらげになっているなどの状況今のご時世当たり前だろう。
佐助さんは馬鹿にしたようにはだけきった私の浴衣を子供に着せるようにちゃっちゃかなおして笑んで見せた。
昨日のセンチメンタルな雰囲気はどこへやら。
もちろん、ほとんど着崩れる事などなく浴衣が装備されている佐助さんは、朝ご飯の為に髪の色を変えてダテメガネをかける。

私は、寝癖を直して眉毛だけ書いたのみの簡単人前仕様を簡単に済ませた。

「ぶらぶらしよ。ここらへん食べ歩きとかどう?」

朝のバイキングの中から選択してきた小柄な焼き魚を食べながら佐助さんが言葉を発する。
当初の予定だった墓参りは、精神的に参ってしまう為却下。
そうなれば、時間があれば行きたいとチェックした菓子屋や土産物屋に行くしかないのだから当然そのルートしかないだろう。
にこにこと笑い続ける佐助さんは、きっと昨日の事は忘れてほしいのだろうし私もこれ以上追及するつもりも傷口をえぐるつもりもない。
もう一泊する予定であるが故に、重い荷物を部屋の端に寄せたまま身軽な装いを整えてみれば、でえとだね。と佐助さんはゆっくりとぎこちなく口にした。

「何がいいかな。お菓子もいいけど、」

「ほうとう食べたいですねえ」

「俺様の厳しい舌にあうのがあるかな?」

晴天の中でたわいなく。
持ってきた観光ガイドも置いてきてしまったから、もう自分の足と運がものをいう。
おいしそうだ。おいしそうだとあっちこっちで買い食いばかりして、途中で夕食で出てくる懐石料理が食べられるか少しばかり心配になった。

「あ」

不意に、持っていたペットボトルから唇を離して佐助さんが一方をにらみつけた。
どうしたのかと問う暇もなく、困った様に眉を垂らしてぽんぽん。と頭に手をゆるりと乗せた佐助さんは小さくごめんねと謝罪を呟きくるりと睨んでいた方向に背を向ける。

「俺様としたことが、気が散ってたのかもしれないや」

懐石料理をなんとか平らげることができた次の日、阿藤さんから熱愛写真としてこの旅行の事がパパラッチにあった事が知らされた。

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20140908

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