ときめきの
「でかー」
「…そうだねい」
「きれー」
「そうだねい」
それしか言わないマルコさんは、待ち合わせ場所からすでにそわそわと落ち着きがない。
私は私で素直に花火を楽しんでいたがいかんせん仕事終わり、空腹は最高潮だったんだと言えばいいだろうか。
「そろそろ駅前戻ってご飯食べよっかー。最後まで見たらご飯食べらんないし」
きょとん。そんな効果音がぴったりあうマルコさんの顔を見て笑わなかった私をほめてもらいたい。
もう、手に取るようにわかっていた。
花火に乗じて告白しようとしていることなど。
しかし、予想外だろう私は色気より食い気を優先しあろうことか終わりまで見ずに飯行こうぜと誘っているのだ。
少しばかり戸惑いながら花火の大きな爆発音を背中にしょって隣に立って歩みを進める。
どんな表情をしているかはわからないが、口数はいつもより格段に少なく頭はぐるぐるとしているだろう。
単純にかわいいなあと思っていた。
「もうちょっと歩かねえかい?」
食事はいつも通りだった。
適度に食べて半分ずつ支払って、さあてマルコさんの終電は私より早いからそろそろ解散だなあと思っていた中でのその誘いに私はいいよーと返答するほかなかった。
安直に、私の家は終電が過ぎても歩いて帰れる距離にあったせいもあるだろう。
大きなビルの脇道。ぐるぐると散歩の様に歩いていて不意に履いていたスニーカーの紐が解けたので立ち止まってしゃがんだ瞬間だった。
「好きです。付き合ってください」
いつもの口癖もなくなって、でも場所はビルとビルの間の脇道で、私の状況はしゃがんで視線は靴ひもに向かっている。
なんともタイミングの悪い事だろう。
そう思いながら顔をマルコさんに向ければ街灯の薄明かりでもわかるほど耳まで真っ赤にしたマルコさんが顔を伏せて立っていた。
その瞬間、彼に初めてきゅんとした事を黙っていてもらいたい。
ゆっくりとマルコさんに近づいて緩む顔そのままに私はぽんぽんと伏せられた頭を撫でていた。
(こんな私でよかったら)
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20130711
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