花が咲く


女子高生。花の女子高生。
何を見てそう呼ぶのか知らないが、私はその花の女子高生真っ只中でありながら自分の冴えない生活に毎日毎日幸せの大安売りだとため息を吐いた。
それが今、なんだ。

「一目惚れだ!」

「…おお、そうか」

一目惚れとは初めて見たその人にフォーリンラブしてしまう事を言うのではなかっただろうか。
卒業式を終えた最後のホームルーム前に、目の前のクラスメートは顔面を真っ赤にして私の前に立つ。
胸元の造花が可愛らしく、ブレザーのボタンはすっきりと無くなっていた。

「七松。悪いけど一目惚れって私あなたと去年から同じクラスじゃ」

「じゃあ一年惚れだ!」

「私の存在はそんなに薄かったかい?」

嫌みなのだろうか、大きな目が印象的なお顔が妙に何もかも吹っ切った表情を浮かべる。
周りのクラスメートも唖然、呆然。
中には馬鹿がいると笑いを堪えている姿も見える。

「私と付き合いたいのか」

「付き合ってくれるのか?!」

「勘弁してくれ」

お前が人気者だという事は知っている。
否、男女共に教員にまで理解された周知の事実だ。
しかし、そんな君はいつも告白されたら「愛だとか恋だとかより遊びたい」と言うそうじゃないか、学校内じゃなかなか有名な決まり文句である。
そんな言葉の大元が何故、今、明日から別々に歩む私に恋心など抱いたのか。

「駄目…か?」

「お前のその目は私には効かないからな。やめろ、まじで」

子犬のように丸い目でわざと下から覗く様はあざとい。
何の嫌がらせか、やはり女の子である私にその可愛らしい姿はツボである。が故に

「とりあえず。信用ならん、パス」

面倒なこの男に恋心など持つものか。

「なら、惚れさせる」

「がんばれ」

「待ってろよなまえ!」

パシりと教室に入ってきた担任が最後だからと優しく七松をクラス名簿で叩く音が響く。
いてっという声に担任が、お前ら二人同じ大学行くんだから仲良くしろよー。という言葉をあげる。
静まり返る教室の中、ただ一人彼だけがにんまりと笑った。


end
20120702

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