Answer


「こっちが三郎、こっちが雷蔵」

2つ並んだ同じ顔を指差して、彼女は今日も名前当てゲームに必死だ。
いつから始まったのだっけ?と思い出してみるが最低一年はやり続けているこのやりとりに周囲の感想は、またやってる、の一言だろう。
先ほどの解答を間違いだと言えば、なんで当たらないんだとぶつぶつ呟いて長屋を去っていく。
暇なのか、阿呆なのか、学園の決まり事よりも名前を当てる事が優先らしいなまえは、1日に一回忍たま長屋に現れて同じ事を叫んだ。
正直、先生も知っていて面白がっている節がある。
誰もなまえがくのたまの敷地を出るのを止めないあたり、間違いなく。

「三郎、またいじわるして。今正解してたじゃないか」

隣で雷蔵が緩く眉間に皺を寄せる。
先ほどの右が私で左が雷蔵という解答は間違いではなく正解であった。
しかし、そう簡単に大当たりなどと言ってやる義理も無い。
嘘も見破れないのなら忍など無理だろう。

これは、私なりの優しさだ。

「言い返して来ないじゃないか。何事にも疑ってかかってこそ忍だろう」

「まあ、なまえの人を信用しやすい部分は忍には向かないかな…ううん」

何かを悩み出した雷蔵を置いてもうすぐ夕餉の時間だと、食堂に向けて足を進める。
後ろからまだ唸りつつついてくる雷蔵は、どうやら視界に見えた今日のメニューに悩みの元を変えてしまったらしい。
口からは、AだのBだの相変わらずの優柔不断さがこぼれる。

「おばちゃん、AとBひとつづつ」

「Aの豚汁も…でも煮魚…」

「雷蔵もう頼んだから悩まなくていいぞ」

さっさと雷蔵の分も決めて受け取り、近くの開いている席に腰掛ければ向かいの机に友人だろう桃色の隣で黙々と煮魚に箸を進めるなまえがいた。
見過ぎていたのかはたりと目が合えば、口に箸を突っ込んだままじっと品定めをする様に合ったままの目が細くなる。
隣に座る雷蔵は、まだなまえに気付いていないまま、すでに決まって手に持っている定食をどれから箸をつけようかと首を傾げている。
私を指差すなまえは、もごもごと箸を上下に揺らしながら口を動かした。

「さ・ぶ・ろ・う」

隣の雷蔵が、三郎?と私を呼ぶものだから。
彼女は当たったのだと口端をあげてニンマリと笑みを浮かべた。


end
20120711

prev next

[back]


ALICE+