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あれから日々は流れ、ついに私達が学院に通う日がやってきた。
新しい制服を身にまとい、馬車に揺られながら新しい生活を楽しみに思う私がいた。


『ドキドキするけど楽しみ』

「そうですね、どんな方々がいらっしゃるのでしょうか」

「俺ぜってー友達百人作る!」


私同様嬉しそうにしている二人を目の前に思わず笑みをこぼすけど、ふと横を見ると窓の外を鋭くも見える瞳で眺めている総司が目に入る。
学院の話をすると、どこかピリついたような雰囲気になるのは度々で、そんな総司の様子を見ていると不安に感じることがあった。


『総司、少しネクタイ曲がってるよ』


ネクタイを直してあげると、私を見つめた総司は柔らかく微笑んでくれる。
話しかけるといつもの優しい総司だから、総司が少し殺気立って見えるのが私のただの気のせいだと良いんだけど。


「ありがとう」

『ううん』

「今挨拶の練習してみたら?聞いててあげるよ」

『ええ?絶対やだよ、逆に恥ずかしいよ』

「楽しみにしてますよ、君の代表スピーチ」

「俺も!めっちゃ拍手するから俺のこと探してくれよな」

『ふふ、分かった。ありがとう』


平助君なら本当にそうしてくれそうだから想像して笑っていると、総司が真剣な音色で私達に言った。


「僕はこの子が話してる間、舞台裏で待機してるよ」

「彼女が挨拶している間も護衛されるということですか?」

「そうだよ。この子はスピーチがあるから席も離れた場所になるだろうし、僕だけは一応直ぐ近くに待機していようと思ってるんだ」

「いいと思うけどそういうこと自由にしていいのか?俺もまだ学院の規則とかよく分かんねーけど」

「僕達は学院の生徒である前にこの子の護衛役なんだから、誰かしら傍にいるのは当たり前じゃない。そのことを学院側にどうこう言われる筋合いもないしね」

『気にかけてくれてありがとう、でも学院では皆にも自由に色々学んで欲しいって私もお父様も思ってるからそんなに気にしなくて大丈夫だよ?この前聞いた話だと、学院内は安全に過ごせるように警備態勢が凄く整ってるんだって』


お父様と山南さんに聞いた話によれば、学院で大きな事故や事件は今まで一度も起こったことがないという。
厳重な警備態勢が敷かれているから、生徒達だけでも安全に過ごせるように配慮してあるそうだ。
総司達も生徒として通うわけだけど、半分は護衛の任務にも携わっている。
とは言え、あくまでも何かあった時のためであり、普段からつきっきりで護衛して貰う必要はないということを伝えたかった。


『あと殆どの生徒は護衛もつけてないみたいなの。それなのに私だけ皆についてきて貰えてそれだけで嬉しいから、皆には学院内では羽を伸ばして欲しいよ。普通の生徒として過ごして貰って大丈夫だからね』


つい先日お父様からも皆にその話をしたばかりだけど、私も同意見だと伝えたくて告げてみた。
すると総司は表情を変えないまま、再び淡々と話し始めた。


「近藤さんが折角用意してくれた機会だから、授業や学業には真面目に取り組むよ。でも僕は君の護衛を疎かにするつもりはないし、君には絶対に一人になって欲しくないと思ってる。学院の警備態勢がどうかは知らないけど、確実に安全な場所なんて城外にはないからね」

「確かに総司の言うことは一理あるよな。皆が安全って思ってるからって実際も安全ってことは絶対ないじゃん。生徒の中にだって変な奴が紛れ込んでるかもしんないし、生徒同士のトラブルだってある可能性もあるから、俺もちゃんとセラの護衛を優先する」

「僕も同感です。君は女性ですから色々な面で注意するに越したことはないでしょうし、僕達が常に目を光らせていることで防げることもあると思うんです。学院内では剣の持ち込みも禁止されてしまうので、その分気を引き締める必要があると感じていますよ」

「だからセラには僕達と常に一緒にいて欲しい。なるべく僕が傍いるようにするけど、それぞれ予定があって近くにいられない時もあるだろうから、そういう時は他の二人と一緒にいるとかして必ず一人で行動することだけは避けて貰いたいんだ」


思っていた以上に真面目に考えてくれている三人の言葉を聞いて、心が温かくなる上、嬉しかった。
申し訳ない気持ちは勿論あったけど、皆の気持ちは真っ直ぐ受け取りたいと思う。


『ありがとう……。そんなに考えて貰えて凄く嬉しいし、皆がいるから心強いよ。私も皆と一緒にいることを意識して、気をつけて過ごすようにするね。いつも甘えてばかりで申し訳ないけど、学院でもよろしくお願いします。私皆と一緒に楽しい思い出たくさん作りたいよ』


三人はそれぞれ微笑んで頷いてくれたから、信用出来る人達が傍にいてくれることをとても幸せだと思う。
友達も欲しいけど、まずは皆と楽しい学院生活を送ることを目標にこれからの毎日を頑張りたいと思った。


『学院見えてきたね、段々緊張してきちゃった……』

「大丈夫だよ。台詞が飛んだら僕が舞台裏からこっそり教えてあげるから。まずは平助の恥ずかしい話からでいいかな」

「おい、総司。俺の恥ずかしい話ってなんだよ、そんなもんねーし」

「沖田君は余計なことばかりしますからね。セラの護衛をされるのは良いですが、問題を起こして先生方に目を付けられることだけはしないで下さいね」

「それは約束できないかな。僕は常に自分に正直に生きるって決めてるんだ」

「君の場合は正直過ぎますよ……。もう少し自重して生活して下さい」


三人の他愛のないやり取りを聞きながら、総司の顔が先程より少し明るくなったから安堵する私がいる。
きっと楽しいことばかりではなく、大変なことや辛いこともあるかもしれない。
でも総司や伊庭君、平助君がいるから絶対に大丈夫。
今日からの学院生活が私達にとって幸せなものになると信じて、息を吸い込んだ私がいた。

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