5

グロワール邸のEAST棟にある一室。
そのベッドの中で、私は総司の腕の中に収まっていた。
ふわりと香る総司の匂いと柔らかく包み込む温もり。
すぐ目の前にはだけた総司の胸元があって、私は思わず目を見開いた。
思わず視線を逸らそうとするけど、どこを向いても総司がいる……。


「大人しくしててね、セラ」


耳元で囁かれ、頬が熱くなってしまう。
総司の声は落ち着いていて、それが余計に緊張を煽るけど、直ぐに部屋に戻ってきた三人の声が聞こえてきた。


「戻りましたよ、沖田君」

「おかえり、みんな」

「なあ、総司。俺達を置いて一人だけ逃げるとかずりーじゃん」

「あんなの捕まる方が悪いんだよ」

「あんたが逃げた故、残念そうにしていた令嬢が何人かいた。明日また話しかけられるかもしれないな」

「えー、そうなの?面倒だな」


男子用と女子用ではお風呂の場所も別なのに、わざわざお話をするため、出向いている女の子達がいることに少し驚く。
それだけ皆は学院での交流を通して将来の構築を考えているのだと思うと、まだ先のことを考えられていない自分に少しばかり焦りを感じた。

でもお父様は良いご縁は日々を懸命に過ごしていれば自ずと舞い込んでくると仰ってくれている。
だから私は私のペースで、徐々に世界を広げていきたいと思っていた。

それに将来のことで言えば、私はこの先もずっとずっと総司といたい。
できれば総司と……結婚したい……。
そう願わずにはいられないのに、他の人との結婚なんて今はとても考えられることではなかった。

でも総司のことだから、多分そんな先のことまで考えていないだろうな。
私の専属騎士になることを懸命に目指してくれているだけで十分ありがたいことだから、あまり先のことばかり考えていても仕方ないよね。

だけどいつか総司の隣に自分以外の女の子が寄り添うことを考えたら、思わず視界が歪んでしまう。
離れたくない気持ちから総司の胸に擦り寄ると、背中に添えられていた彼の腕が、優しく私を抱きしめ返してくれた。


「つーか、なんでそんなに早く寝てんだよ」

「僕はいつもこんな感じだけど」

「嘘つけ。お前、夜更かしばっかしてんじゃん」

「今日は疲れたんだよね。だから取り敢えず横になりたくてさ」


総司は片腕で私を抱き締めたまま、もう片方の腕は肘をついて寝そべっているようだった。
背中にあった手が、今度はベッドに潜っている私の髪を優しく撫でてくれるから、その心地よさと温かさに私の瞳はとろんとしてきてしまう。


「確かに今日は疲れましたよね。でも僕達よりセラの方が疲れているでしょうね。あれだけの人達と話せば、相当神経も使うでしょう」

「確かにな。それに加え、総司の相手もしている故、負担が大きいのではないかと心配だが」

「ちょっと、はじめ君。それどういう意味?僕はセラの護衛であって、ただ相手をしてもらってるわけじゃないんだけど」

「でも総司はセラをからかって、困らせてばっかいるじゃん」

「いいんだよ。セラは喜んでるんだから」

「喜んでいるのでしょうか?あまりそうは見えないですけど」

「なぜあんたが護衛役に抜擢されているのか、理解に苦しむな」

「だよな。でも、総司は剣術だけは強いから仕方ないんだと思う」

「そうですね。内面で選ばれたわけではありませんから」

「ちょっと……。みんな、なんなの?」


皆の話を盗み聞きしているみたいで申し訳なかったけど、耳に入ってきた可愛らしい会話に思わず吹き出しそうになる。
総司の腕の中で声を殺して笑っていると、私の顔周りに手探りで伸ばされた総司の手が、私の頬を柔らかく引っ張った。


「総司、お前さっきから何もぞもぞやってんだよ」

「んー?ちょっと身体が痒くてさ」

「お風呂上がりなのに痒いなんて……。ちゃんと身体、洗ったんですか?」

「失礼だな、洗ったよ。僕が不潔みたいに言うの、やめてくれる?」

「汚れた身体でセラの護衛など務まるとは思えないが」

「だから。汚れてないってば」


笑ったら駄目だと思うと余計におかしさが込み上げてくる。
そもそも男の子の会話って、いつもこんなにおかしいものなんだと、自然と頬を緩めてしまった。


「あんた達に聞きたいことがある」


私が笑いを堪えていると、不意にはじめが真面目な音色で話し始めた。


「以前、セラが誘拐されたことがあっただろう。その組織の連中は皆捕えられたと聞いたが、そもそも何故セラが標的になったのか、その理由はわかったのだろうか」


総司の手がぴくりと揺れて、部屋にも静寂が訪れる。
総司が関わっていたことははじめは勿論知らないから、伊庭君と平助君も言葉を選んでいるのだろう。
最初に答えたのは総司だった。


「尋問したけど、明確な理由はわからなかったよ。どうして?」

「不自然だと思っただけだ。あれほど大きな騎士団を抱えている家の者を狙うなど、無鉄砲にも程がある」

「だからこそ侍女を買収してあの子を城の外に出したんでしょ」

「だが犯人からすれば攫った後こそ命懸けだろう。身代金が目当てだとしたら、敢えてセラを狙うのは合点がいかぬ。これは俺の推測に過ぎないが、他に何か目的があったのではないかと思ってな」


あの時は今より子供で、ただ怖くて。
無事に帰れるかどうかばかりを気にしていた。
でもはじめの話を聞くと、確かにどうして私だったのだろう。
たまたま居合わせたわけではなく、入念に準備された計画だったからこそ、そのことについて考えてしまった。


「セラは目を引きますから。これは良い意味でも悪い意味でも言えることです。彼女の情報が出回っていたのは確かですが、高貴族の子女である限り、身代金目当てに狙われてしまうのは致し方ないことかもしれません」

「だからセラが危険な目にこれ以上遭わないように、学院にも俺達が同行してるってこと。普段城の外に出る時も俺達が一緒だしさ、あれから侍女も新しい人雇ってねーみたいだし、平気だと思うぜ」

「そうだね。それに、攫った連中が全員捕まったなら、もう心配いらないんじゃない?」


総司が穏やかに言う。
私が布団の中で彼の手を握ると、微かに指が重なった。


「それが、どうにも腑に落ちない。たとえ全員捕らえたとしても、彼らを動かした黒幕がいた可能性はあるのではないか?」

「黒幕……ですか」

「ああ。簡単に捕えられたわりには、動きが慎重すぎる。あまりにも計画的で、準備が整いすぎていた。まるでセラを確実に攫うために、長い時間をかけて機会を狙っていたように思える」

「確かに、何かしらの目的があった可能性は否定できませんね。ただの誘拐ではなくもっと別の理由が……」


私は布団の中で小さく息をのんだ。
考えたこともなかったけど、そんなふうに言われると確かに不気味だった。
あの時、私を攫うことに決めた黒幕がもしいたとしたら、その人は何が目的だったのだろう。
まだ私を狙っていたら……


「セラが二度と危険な思いをしなくて済むように、僕達がいるんだよ」


総司が少しだけ強く私の手を握った。
不安に思う私の心情を察してくれたかのように包み込むその手は、何よりも私を安心させてくれるものだった。


「そうですね。セラの安全は、僕達が護ります。決して一人にはしません」

「確かに……攫われそうになったら、俺達がすぐに助けに行けばいいんだよな」

「俺にもできることがあれば声をかけてくれ。伊達に剣は握ってきてないからな」


布団の中で、胸がぎゅっと締めつけられるようだった。
こんなに真剣に私のことを考えてくれる人達がいる。
それが嬉しくて、でも同時に申し訳なくもなる。


「はじめ君も味方でいてくれるのは心強いかな」


総司の声は軽やかだったけど、手のぬくもりは優しくて。
まるで怖がらなくていいよと言ってくれているみたいだった。
皆に護ってもらうからには私はしっかりとやるべきことを全うして、アストリア公爵家に恥じない女の子でいたいと思う。
そして無事家を継いだ時、皆に目一杯お礼をしたいと考えていた。

それからしばらく、私は総司のベッドの中で息を潜めたまま、じっと会話に耳を澄ませていた。
でもこのままではいつか見つかってしまうかもしれないし、早く戻らないと大変なことになる。
そっと総司の袖を引くと、彼はすぐに気づいたのか、何気ない調子で口を開いた。


「ねえ、さっき講堂の近くを通ったらさ、アイス売ってたよ」

「アイス?」


平助君が一番に反応した。


「うん。期間限定の特別販売らしいよ。オリエンテーション参加者限定で、今日しか食べられないんだって」

「え、それ本当かよ!」

「うん、間違いないよ。僕、さっき見たし。結構いろんな種類があってさ、美味しそうだったな」


総司が少しだけ残念そうに言うと、平助君は興味津々の様子で応えていた。


「なあ、何味があったんだ?」

「えーっとね、チョコとかバニラとかはもちろん、フルーツ系もあったよ。あと特別な蜂蜜を使ったやつとか。珍しいのが多くて、迷っちゃいそうだったかな」

「やば、それ絶対美味いやつじゃん」

「でしょ?」

「くそっ、そんなの聞いたら食べたくなるだろ!ちょっと見に行ってくる!」

「あれ、行くんだ?」


総司がわざとらしく驚いたふりをすると、平助君は「当然だろ」と声をあげている。


「限定だぞ?しかも今日しか食えないんだろ?買うしかねーじゃん!」

「確かにそうだね。伊庭君とはじめ君もどう?せっかくだし、一緒に行ったら?」

「俺はさほど興味はないが」

「話を聞いていたら、少し気になってきました。せっかくですし、行ってみてもいいかもしれませんね。皆で行きましょうか」

「だよね。僕も食べたかったんだけどさ、ちょっと今は動くのが面倒でさ」


総司があくまで気怠そうに言うと、平助君が呆れたようにため息をついた。


「お前、せっかく見つけたのに行かねーのかよ」

「うん。だから代わりに買ってきてよ。チョコと蜂蜜のやつ、美味しそうだったから、どっちか頼むね」

「まったく、しょうがねーな」

「ありがと。僕の分のお金は後で渡すから」

「はいはい。んじゃはじめ君、伊庭君は俺についてきな!」

「何故俺まで……」

「沖田君も寝てばかりいないで、少しは明日の準備もしてくださいね」

「はーい」


総司が気の抜けた返事をすると、平助君ははじめと伊庭君を急かしながら部屋を出ていく。
扉が閉まる音がして、私は小さく息をついた。


『……本当に、行っちゃった』


私が布団から顔を出すと、総司が悪戯っぽく微笑んでいた。


「作戦成功、だね」

『ふふ、総司凄いね。私までアイス食べたくなっちゃった』

「じゃあ明日買ってあげる。一緒に食べようよ」

『うん、食べたい。楽しみだな』


ちょっとした総司の優しさが嬉しい。
だからもう少し一緒にいたくなるけど、そろそろ私は戻らないとならない。
ベッドから出て身なりを整えていると、総司が私の着ているカーディガンを直してくれた。


「さ、今のうちに部屋に戻らないとね。送っていくよ」

『ありがとう』


私が頷くと、総司の手が頬を撫でて、そっと唇が重ねられる。
たったの一回、でも愛情が込められているように感じたから、また心臓の鼓動が早くなった。


「さてと……このまま出るわけにはいかないし、ここから出ようか」


グロワール館の男子部屋のバルコニー。
総司が窓を開けると、夜風がふわりと吹き込んできた。


『本当にここから出るの?』

「うん。だって、セラが廊下を歩いてたら、誰かに見られちゃうでしょ?僕は今のセラを誰にも見せたくないんだよね」


そう言いながら、総司は自分のカーディガンをふわりと私の肩にかけてくれる。


「これ、着て」

『でも総司が身体冷えちゃうよ』

「僕は寒くないから平気だよ。だから君が着てて」


こうして優しくされるとまたもっと総司を好きになってしまうから、この気持ちは落ち着くどころか日毎に大きさを増している気がする。
でもそう自覚しても幸せで、私は総司を見上げて微笑んだ。


『うん、総司の言う通りにする。ありがとう』

「じゃあ、おいで」


総司が私の手を引いて、ベランダの柵の向こうを指さすと、そこにはグロワール館の庭園が広がっている。
夜風がそっと吹き抜けて、羽織っていたカーディガンがふわりと揺れた。


『本当にここから行けるの?』

「うん。このまま廊下を歩くより、絶対安全だよ」

『でも暗くてちょっとだけ怖いね?』

「大丈夫。僕がついてるから」


そう言って、総司は私の肩にそっと手を添えた。


「僕を信じてくれるでしょ?」

『うん、信じてるよ』

「良い子だね」


私が答えた瞬間、総司はひょいっと私の身体を抱え上げた。


『あっ……』


驚いて声をあげると、総司は少し楽しそうに笑う。


「ほら、大人しくしてないと落としちゃうよ」

『えっ……やだよ、落とさないで』

「ははっ、セラを落とすなんて絶対にしないってば」


私をしっかりと抱えたまま、総司は静かにベランダから飛び降りる。
風が頬をなでて、ふわっと心が浮くような感覚がした。
けれど総司の腕の中はとても安定していて、不思議と安心できた。


『……すごい、全然揺れなかった』

「そりゃあ、僕だからね」


得意気な総司に、思わずくすりと笑う。


「さ、セラの部屋まで行こうか」


そっと地面に降ろされると、総司が柔らかく私を見つめている。
こうして夜に総司と二人でいられることはあまりないから、それだけでとても新鮮に感じられた。

庭園は夜の静けさに包まれ、月の光が白く道を照らし、足元には柔らかな草が広がっている。
総司は私の手をしっかり握ったまま、ゆっくりと歩き出した。


『こうして二人で歩いてるの、すごく特別な感じがする』

「それなら、余計にこの帰り方で正解だったね。セラとこうして夜の庭を歩くの、僕も悪くないって思ってるよ」

『ふふ、悪くないって言うことは良くもないってこと?』

「良いに決まってるじゃない。セラといる時間はどんな時でも特別だからさ」

『私もそう思ってるよ』

「じゃあずっと僕の隣にいればいいよ」

『うん……』


これからもずっと総司の隣にいたいな。
こうしてたまにでも夜道を一緒に歩いたり、手を繋いだり、他愛ない話で笑い合ったりしていたい。
いつか終わりが来るなんて考えたくはないから、握っている総司の手に力を篭める。
すると必ず握り返してくれる総司の優しさが嬉しかった。


『出会ってまだ間もない頃ね?私が総司に思っていた人と違ったって言ったこと、覚えてる?』


総司はもっと真面目で、落ち着いてて、優しい人だと思ってたけど、ちょっと意地悪な人だったって、お城の庭園で言ったあの日が懐かしい。
総司も覚えていてくれていたのか、くすりと笑って私を見つめた。


「覚えてるよ。意地悪な人だったって言われた時だよね」

『うん。あれから時間が経って、また思ってた人と違うなって最近思ってるんだ』

「そうなの?なんかやだな、今度はどう違うの?」


ふふっ、と私が笑うと、月明かりの下を歩く総司は苦笑いをしながら私を見つめている。


『私が思っていたより、もっともっと優しい人だった』


優しいのは知っていたし、だからこそ総司が好きになった。
でも想いが通じてからはより優しくて、いつも私を一番に考えてくれていることが総司の様子から常に伝わってくる。
それが義務ではなく心からそうしてくれていることがわかるから、総司の優しさに触れる度に私はいつも幸せな気持ちになるんだよ。


『総司がいつも私に優しくしてくれること、私……とっても嬉しいんだ。嬉しくて……すごく心が温かくなって、もっと総司のことが好きになるんだ』


たとえばハンカチを忘れて取りに行く時も。
庭園散策会で少し疲れた時も。
夜風に身体が冷えそうな時も。
総司は私が不安にならないように、出来る限りのことをしようとしてくれる。
そんな総司の優しさが私の心に降り注いで、総司を想う花が咲く。
この花は私の中でずっと綺麗に咲き続けて、きっと誰にも摘み取ることはできない。
私はこれから先もずっとこの花を大切に育てながら、総司の心にも同じように綺麗に花を咲かせてあげたらいいなと思う。
だから……


『総司が私のためにしてくれたこと、全部ちゃんと覚えてるね。それでいつか総司にお返ししたい。今は護ってもらうばかりだけど、いつか総司が幸せをくれた分、私も総司に幸せをあげたいって思うよ』


思わず涙が湧き上がって、慌てて目尻の涙を拭う。
悲しいわけでも嬉しいわけでもない、不思議な涙。
総司への想いが溢れて、理由がわからない涙をこぼすのは生まれて初めてだった。


「僕はもう十分幸せだよ」


総司は足を止めて、私を真っ直ぐ見つめている。
握られた温かい手はそのままで、総司の瞳だけが静かに揺らいで見えた。


「僕の方こそ君に返せないくらい幸せを貰ってるんだから、君はお返しなんて考えなくていいんだけどね」

『でも私、何もしてあげられてないよ』

「それは僕が決めることだよ。僕はセラにかけてもらった言葉で考え方も変わったし、誰かと過ごす時間がこんなに心地良いものなんだって初めて知った。だから今、君とこうしていられて凄い幸せなんだ」


総司にはこのアストリア公国で幸せになって欲しいと、ずっと願ってきた。
最初はそれだけだった筈の想いがいつのまにか恋になって、今は私が総司を幸せにしてあげたいとすら思うけど、どんな時も総司の幸せが私の中の大切な願いの一つだった。

だから総司の口から幸せだと言って貰えて、私も満たされた気持ちになる。
このまま総司の幸せがずっとずっと続きますようにと願いながら、総司を見上げた。


『嬉しいな、総司に幸せって想ってもらえること』

「幸せに決まってるよ、セラが傍にいてくれるんだからさ。僕はセラが一番大切だし、僕だって君に幸せになって欲しい。だから君に優しくしたいと思うのは当たり前のことなんだよ」


そっと腕を引かれ、優しく抱きしめられる。
誰もいない庭園で、暗闇に紛れた私達だけど、互いの声や温かさだけは鮮明に感じることができた。


「でも……嬉しいよ。セラが僕のことをそうやって考えてくれて」


耳元で囁かれる声に、心が熱くなる。
総司の背中に回した手で彼の服を掴めば、私を抱きしめる腕にも力が込められた。


「僕はね、君を誰にも渡したくない。誰よりも大事にするから、ずっと僕のそばにいてよ」

『……総司……』

「大好きだよ」  


総司の手がそっと髪を撫で、私の頬に触れる。
夜風がそよぐ中、総司の言葉が静かに心に響いて、私は温もりを待ち侘びるように瞳を閉じた。

優しく重なる唇は温かくて、ドキドキするのに安心もできる。
総司の肩を掴む指先には力が入り、ずっと一緒にいたいと何度も願った。


『私も大好きだよ。これからもずっとそばにいてね』

「もちろん。じゃあ約束」

『うん、約束』


総司は小指を差し出すから、その少し可愛らしい仕草に頬が緩む。
私も迷わず、その小指に自分の指を絡めた。
総司は私の手を取りそっと私の指にキスを落とすと、やわらかな笑みを浮かべた。
総司の温もりを胸に抱きながら、この日初めて、総司と過ごす未来の自分を想像することが出来た私がいた。


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