3
僕がこの世界に回帰してから、気付けば半年以上が経っていた。
その間、僕は順調に功績を重ね、剣の腕も前の世界の時より確実に上達している。
任務でも成果を上げ、先日ようやく騎士階級二級を取得したところだ。
焦りはないつもりだけど、前回の世界で取得していた一級にいち早く辿り着きたいと思ってしまう。
その理由というのは、セラに関する僕自身の事情だった。
『総司と建国祭回れるの、とっても嬉しい』
今日はアストリア公国の建国祭。
式典や花贈りの儀を終えた僕達は、一度城に戻って着替えた後、お忍びで建国祭を楽しむために出かけていた。
以前同様セラの護衛役に抜擢してもらった僕は、彼女を護るために隣にいる。
こうして可愛い笑顔で嬉しいと言われると、今にも自分の想いを打ち明けたくなってしまうから困ったものだ。
「僕もだよ。今日はセラの行きたいところ、全部行こうか」
『わあ、いいの?』
「もちろん。折角の機会だし、たくさん楽しまないとね」
『ありがとう。総司の行きたいところにも行こうね』
この世界に足を踏み入れたときから、僕には一つ、決めていたことがあった。
セラに想いを告げるのは、騎士階級一級を手にしてからにする。
それは誓いというより、むしろ自分への戒めに近いものだったと思う。
あの日、彼女を護りきれなかった自分が、何ひとつ成し遂げていないまま、その隣を望むなんて許されない。
きちんと力を示して相応しい場所に立って、それから初めて隣を願う。
そうでなければ、きっとまた同じ過ちを繰り返してしまう。
だからこの約束だけは、どんなことがあっても曲げないと心に決めていた。
そんな思いを抱えながらも、こうしてセラの傍にいると心がやけに揺さぶられる。
先日の猫の一件でも、去り際に言ったセラの言葉があまりにも可愛すぎて、思わず後を追いかけそうになったくらいだ。
それに本人は無自覚だろうけど、あんな甘えたような視線を向けられたら、どうしてもこの胸はざわついてしまう。
今も嬉しそうに僕を見上げてくるから、短い返事を返してさりげなく目を逸らした。
「じゃあ、歩こうか」
祭りの喧騒が心地よく耳に響く。
色とりどりの屋台が並び、行き交う人々の笑顔が賑わいをさらに彩っていた。
僕はそんな活気あふれる街を歩きながら、隣を歩くセラを盗み見た。
ヴェールを被った彼女はいくら控えめな装いをしていても、貴族の子女にしか見えない。
その仕草や声、時折僕を見上げる瞳の輝きは、どうしようもなく僕を惹きつけるものだった。
『すごいね。いつもと違って、なんだか夢の中みたい。歩いてるだけで楽しいね』
嬉しそうに微笑む彼女の横顔を見て、胸が熱くなる。
その愛らしさを前にしてただの護衛として振る舞わなければならないのは、正直酷な話だと思う。
しかも前回同様、僕が護衛している様子は少し離れた場所から山南さんと山崎君が護衛も兼ねて監視している。
前はセラの手に指を絡めたり、彼女の食べるパイをかじったりしてお説教を受けたから、今回はそんなことがないよう完璧に護衛を熟すつもりだ。
「セラがそう言うなら、僕も護衛のしがいがあるかな」
『総司が一緒だから、私もっと楽しいよ』
甘えたような声音、僕を見つめる穏やかな笑顔。
そんな風に言われたら、勘違いしそうになる。
いや、でも……勘違いじゃないかもしれない。
セラは僕を困らせないよう余計なことは言わないだけで、この時には既に特別な感情を抱いてくれていた可能性も十分にあると考えていた。
「そういうこと、あんまり言わない方がいいよ」
『え?どうして?』
「僕が調子に乗るから」
冗談めかして笑いながら言ってみたけど、本当は今すぐ手を伸ばして頬に触れたいし、ヴェールの下の柔らかな髪を指に絡めたい。
それができたら今日という一日がもっと最高になるんだけどね。
『じゃあ、調子に乗ってみてもいいよ?』
「はい?」
ふわりと笑うセラの様子に苦笑いする。
可愛い顔でそんなことを言われたら、ますます堪えられなくなるんですけど。
『だって総司が楽しそうなら、それだけで私も嬉しいもん』
「最近思うんだけどさ。セラは僕のことを試してるの?」
『試すって何のこと?』
首を傾げる彼女の表情はどこまでも純粋で、何も考えていなさそうだ。
「……はあ。君はほんとに困ったお嬢様だよね」
『え?』
「セラは気づいてないかもしれないけど、あんまり可愛い過ぎると僕も困るってこと」
やられっぱなしも癪だから、僕も素直な気持ちを口にした。
すると一瞬で頬を染めてヴェールの下で視線を逸らすセラは、可愛いという言葉には照れてしまうらしい。
その仕草さえ愛らしくて、結局僕の方がまた気持ちを揺さぶられてしまう気がした。
「……さあ、じゃあ行こうか。これ以上ここにいたら、余計なことしちゃいそうだから」
『余計なことって?』
「セラには内緒」
困ったように目を瞬く彼女の手を取る。
今回はあくまでも逸れないように繋ぐだけだけど、その温もりが胸に優しく広がっていった。
それからセラが食べたいと言ったパンを買い、焼き菓子も買い、人の流れに気を配りながら二人の建国祭を楽しむ。
セラは言葉通りずっとにこにこ楽しそうにしてくれるから、こうしてまた二人で建国祭を過ごせていることに幸せを感じていた。
「次はどこに行きたい?」
『うーん、今度は総司が決めて?』
「それじゃあ、少し静かなところへ行こうか」
メインの通りから少し離れた場所に来ると、先程までの喧騒が少し遠ざかり、涼やかな風が吹き抜けた。
屋台の並ぶ大通りとは違って、この辺りは落ち着いた雰囲気の店が多い。
雑貨屋やちょっとしたカフェのような店が並ぶ路地を歩きながら、セラは辺りを興味深そうに見回していた。
『総司、あのお店……なんだか綺麗だよ?』
セラが指さしたのは、ガラス窓から温かな光が漏れる、小さな洋菓子店だった。
外には木製の看板が掛かっていて、焼きたてのタルトやフィナンシェが並んでいるのが見える。
「甘いものが食べたいの?」
『ううん、この雰囲気がいいなって思ったんだ。可愛くて、なんだか落ち着く感じ』
「セラっぽいね」
『え?私?』
「うん。可愛くて、でもどこか落ち着く感じ」
ヴェールの下で、セラが頬を染めるのが分かった。
その反応が初々しくて、つい口元が緩んでしまう。
『そんなふうに言われたらちょっと恥ずかしいよ……』
「なんで?」
『……なんでもない』
セラはそう言いながら目を伏せてもじもじと袖を握る仕草をするから、僕は思わず笑ってしまった。
「ははっ、何今の。セラって本当に可愛いね」
『総司、からかってるでしょ?』
「本心だけど?」
『……もう、知らない』
セラは少し眉を下げると、拗ねたように片頬をふくらませている。
あーあ、ほんとにどうしてこんなに可愛いのかな。
「丁度喉も渇いてたし、ここでお茶でも飲んでいこうか」
『うん』
甘えたように僕の袖をそっと引く仕草に、また口元は緩むから気を引き締めないと。
気づかれないように深く息を吐いて、僕は彼女の手を引いた。
店内に入ると、建国祭の特別な装飾が施されたカフェの中は可愛らしい雰囲気に包まれていた。
テーブルには色とりどりのフィナンシェやマカロン、小さなケーキが並び、どれも目を引くものばかりだ。
セラは店内を見回して、見てわかる程に目を輝かせた。
ショーケースの中を覗き込む彼女の柔らかな仕草が、カフェの甘い雰囲気にぴったりだと思う。
「ここの席はどう?」
店の奥の窓際。
大きなガラス窓の向こうには、建国祭の華やかな景色が広がっている。
色とりどりの旗が揺れ、人々の笑い声が響く。
賑やかな通りを眺めながら、甘いお菓子を楽しめるなんて最高だよね。
『うん。ここなら外の景色もよく見えるし、いいね』
セラは嬉しそうに頷いて微笑んだ。
この子が喜んでくれるだけで、僕まで幸せな気分になる。
僕達は席に着くと、テーブルの上に並んだメニューに目を落とした。
「どれも美味しそうだね。フィナンシェもあるし、マカロンもいいんじゃない?」
『ね、どれも綺麗で食べるのがもったいないくらい』
セラの目が、甘いお菓子に向けられて輝いている。
どれにしようか真剣に悩んでいる様子が可愛らしくて、つい悪戯をしたくなった。
「可愛いね」
『ねー、どれも可愛い。総司はどれが一番可愛いと思う?』
「断然、セラかな」
セラが一瞬、呆けたように瞬きをして、それから頬をじわりと染めていく。
予想通りの反応が見れて、僕は満足気に微笑んだ。
『何言ってるの?お菓子の話をしてたのに』
「本当にそう思ってるよ。セラが一番可愛いってさ」
『……もう、そういうことは言わなくていいよ』
小さな声でそう呟きながらメニューを見つめ直しているけど、耳まで赤くなっているのが分かる。
そんなセラを見ているこの他愛ない時間が、幸せだった。
「それで、どれにするの?」
『総司に変なこと言われたから、まだちゃんと選べないよ』
「ははっ、そっか。じゃあ、僕が選んでもいい?」
セラは少しだけ唇を尖らせながらも、こくりと頷く。
こんなに素直に照れてくれるんだから、からかいたくもなるのは仕方ない話だよね。
「んー。じゃあ、マカロンとフィナンシェと……あと、ショコラタルトにしようか」
『そんなに頼むの?』
「せっかくだしね。可愛いセラには、甘いものたくさん食べてほしいし」
『だから、可愛いって言うのはもうやめて』
セラが眉を釣り上げて、少し拗ねたように自分の指先をいじる。
そんな仕草すら可愛くて、つい言葉を重ねたくなった。
「そんな顔しないでよ。可愛い過ぎてずっと見てたくなっちゃうじゃない」
『総司、ちょっとしつこいよ?』
「しつこいって酷いよね。僕は可愛いねって、君を褒めてあげてるだけなのに」
ふと彼女の瞳が僕を見上げる。
揺れる青色の瞳が、何かを決意したように僕を捉えたような気がした。
『じゃあ、私も言っていい?』
「ん?何を?」
『総司のほうが、ずっとかっこいいと思うよ』
不覚にも、一瞬息が止まった。
セラの言葉はまっすぐで甘くて、僕の心に直接響いてしまったようだ。
「それ、仕返しのつもり?」
『うん。総司ばっかりずるいから』
「へえ。僕ってそんなにかっこいい?」
『うん。私が今まで出会ってきた人の中で、総司が一番かっこいいと思うよ』
躊躇いもなく言うものだから、心が落ち着かなくなるようか変な気分だ。
気づかないふりをしたいのに、彼女のまっすぐな愛情が胸の奥に深く刻まれていくようだった。
「……困ったな」
『ふふ、何が?』
「食べる前にお腹いっぱいになりそうなんだけど」
『それは困るよ。せっかく頼むのに』
くすくす笑いながらも、セラの頬はいまだに少し色付いている。
その顔を見ているだけで満たされて、同じ時間を過ごす度に、僕は何度も君に恋をするのだろうと思った。
「ちゃんと食べるよ。セラと一緒にね」
『うん、約束』
セラの小さな手がそっと伸びてきて、指先が僕の手に触れた。
一瞬だったけど、それだけで心臓がわずかに早くなった。
セラはきっと、僕を特別に想ってくれている。
そう感じる度に今すぐこの関係を進展させたくもなってしまうけど、今はまだ焦らずただセラと過ごせるこの時間を大切にしたかった。
「それで、どんなところがかっこいいって思ってくれてるの?」
僕がそう問いかけると、セラが目をぱちぱちと瞬かせる。
まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかったのか、わかり易く戸惑ったような顔をするところがまた可愛く思えた。
「ねえ、教えてってば」
少し意地悪に微笑んでみせると、セラは困った様子でメニューを握りしめた。
『それは……その……一番は優しくて、強くて、いつも私を護ってくれる頼りになるところ?』
「ふうん、他は?」
『笑った顔や声も穏やかですごく落ち着くし、総司といると居心地いいし』
「へえ、そうなんだ」
『それに総司は私のこと、アストリアの公女としてじゃなくちゃんと見てくれてるのかなって……』
段々と声が小さくなっていく。
最後の方はほとんど聞こえなかったけど、それでも十分過ぎるくらいだった。
それにセラは気付いていないみたいだけど、今のはかっこいいところをあげたというより、僕の好きなところを並べたみたいだ。
「続きは?もっと聞きたいんだけど」
『やだよ。それに、どうして総司は照れないの?』
「逆になんでセラはそんなに照れるの?」
『なんでって言われても……』
耳を隠すようにして俯くセラを見て、胸の奥が甘く疼いた。
そして一日も早く僕の想いを伝えられるように、早く強くなってやるという闘志により火がついた。
「からかってごめんね。じゃあ、そろそろ注文しようか」
膨れっ面をしながらも、どこか嬉しそうに微笑み頷いてくれる。
彼女の幸せそうな顔が、何よりも大切で愛おしくて。
僕はそっと、目の前のメニューを開き直した。
「折角だから、紅茶も選ばないとね」
『うん、楽しみだな』
気づかないふりをするのは、思っていたよりずっと難しい。
でも僕のけじめの問題だけではなく、この世界を生きるセラにも、もっと僕を知って欲しいし、好きになって欲しいから。
こうした穏やかな時間を純粋に楽しむことも大切だと思えた。
注文を終えてからしばらくすると洋菓子や紅茶が僕達のテーブルへと運ばれてくる。
僕の向かいに座るセラは、ヴェールの下でそっと紅茶の湯気がふわりと立ち昇るカップを手に取り、ゆっくりと口をつけた。
『あったかくて、美味しい』
「セラって本当に美味しそうに飲むよね」
『そうかな?でもここのお店の紅茶とっても香りが良いし、なんだか落ち着くね』
「セラが気に入ってくれてよかったよ」
『うん。お菓子もおいしいし、凄く気に入ったよ。それに総司が一緒だから、もっと幸せなのかも』
またそんなことを。
セラの言葉に他意はないんだろうけど、今のようなことを言われるたびに、僕は心の中で何度も葛藤する。
僕がどれだけ我慢してるかわかっていないだろうから、仕方ないことだけど。
『これ、総司も食べてみて?すごく美味しいよ』
そう言って小さなフィナンシェをひとつ僕の前に置く。
一口食べてみると、甘酸っぱいラズベリーの香りが広がった。
「うん、美味しいね」
セラは満足そうに微笑んで、またフィナンシェに視線を戻した。
しばらくの間、静かにお菓子を味わっていたセラだったけど不意に僕を見つめて口を開いた。
『総司はさ?』
「ん?」
僕を見つめたまま、少しだけ言葉をためらうような仕草を見せる。
そしてフィナンシェに視線を移し、静かに言葉を続けた。
『任務とかがない日に、女の子とデートしたりしてるの?』
その言葉とは裏腹にセラの声はどこか控えめだった。
僕を見上げたかと思うと、すぐにまた視線を逸らしてしまうから、僕はその仕草に少し微笑みながらカップを持ち上げる。
「どうしてそんなこと聞くの?」
『ただ、なんとなく?』
「ふーん、そうなんだ」
わざと少し間を置いてから、セラの表情を窺うように問いかけてみた。
「そんなこと聞くってことは、もしかして僕が他の女の子とデートしてたら嫌?」
『別に嫌とかじゃなくて……』
そう言って、フィナンシェに視線を戻すセラの頬は、少しだけ赤い。
僕はそんな彼女の反応を見ながら、穏やかに微笑んだ。
「デートなんてしてないよ。女の子と一緒にお菓子を食べる機会なんて、滅多にないからね」
『滅多にっていうことは、やっぱり女の子とこういうところ、行ったことはあるの?』
セラはフィナンシェをじっと見つめながら、ぽつりと呟いた。
淡く頬を膨らませた顔が、どこか拗ねているように見える。
指先でフィナンシェをちょん、と突いているのも、ちょっとした不満の表れにも見えて、僕は思わず口元を緩めた。
「んー、どうだろうね」
『どうだろうねじゃなくて、あるの?ないの?』
セラがちらりと僕を見上げる。
アイスブルーの瞳の奥には、ほんの少しの不安が揺れていた。
「どうしようかな。セラが知りたいなら、教えてあげてもいいけど」
『私は聞いてるの』
「そんなに気になる?」
『別に気になってはないよ?ただ……聞いてみただけ』
視線をそらしてカップに手を伸ばしながら、誤魔化すように言う。
一生懸命な様子が微笑ましくて、意地悪を続けるのはやめることにした。
「ないよ」
『ほんとに?』
「うん。ヴェルメルにいた頃は剣の修行ばかりで、誰かと出かけることもなかったし、国を出てからもそんなことは全くなかったよ。そもそも僕自身、そういうことに興味もなかったからね」
正直、女の子と出かけるなんて考えたこともなかった。
でもセラと一緒にいると、この時間がいかに特別で甘くて心地いいものなのかを思い知らされる。
そんなことを考えていると、セラは少しほっとしたように表情を緩めた。
でもまだどこか疑うような雰囲気を残しながら、僕のことを見つめていた。
「セラは?」
『私?』
「男の人とこうやってお茶するの、初めて?」
『うん、そうだよ』
彼女は迷いなく答えた。
でもふと考えて、僕はあることを思い出す。
「でも伊庭君とは、幼い頃からたまにお茶してるんじゃないの?」
『それはお父様もいるから二人きりじゃないし、伊庭君とはデートとかじゃないから』
「ふーん」
カップを置いて僕は少しだけ身を乗り出し、セラの瞳を覗き込んだ。
「じゃあ今日のこれはデートなの?」
にやりと笑って聞くと、セラは一瞬固まった。
「セラにとってこれはデートに入るのか気になったんだけど」
『それは……』
小さく唇を結んで、困ったように視線を揺らす。
「もしデートなら、僕ももう少し頑張らないといけないかな」
『え?』
「だってセラとのデートなら、もっと楽しくしてあげたいしね」
セラの頬がほんのり赤くなる。
そして少し俯くようにしながらも、ふわりと微笑んだ。
『……じゃあ、デートがいいな』
ゆるりと顔を上げた彼女の瞳が綺麗で、その甘えるような眼差しに心がぐっと掴まれた。
「……そっか」
『総司は……?』
「ん?」
『総司はデートって思ってくれるの?』
「うん、もちろん」
迷うことなく答えると、セラは一瞬驚いたようにも見えたけど、すぐに柔らかく微笑んでくれた。
『総司がそう思ってくれるなら……嬉しい』
僕からしたら、僕の言葉でセラが喜んでくれることが嬉しいよ。
それにさっきの「デートがいいな」っていう甘い声は、この先何度でも思い出してしまいそうだ。
「じゃあデートらしく、僕が次のお菓子を選んであげようか」
『ふふ、そうする』
ほんの少しだけ上目遣いで僕を見つめるセラが言葉では言い表せないほど愛おしく感じた。
素直過ぎて本当に困ったお嬢様だけど、そんなセラが好きでたまらないんだから仕方がない。
早くもっと強くなって、再び騎士階級一級を取得した暁には、またセラにこの想いを伝えたい。
そう考えながら、誰にも邪魔されない束の間の時間を、セラの隣で過ごしていた。
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