2

僕の腕の中、セラは潤んだ瞳で僕を見つめた。
小さな身体を抱きしめながらセラの中に埋めた指を動かせば、その瞳は細められ甘い声が漏れた。


『……ゃ……あ……』


最初の頃よりセラの中は柔らかくほぐれ、二本の指が奥を撫でると細い腰が揺れる。
もう数度達しているのに、セラの腹部や脚には力が入り、小さな手はシーツをきつく握っていた。


「……セラ」


耳元でセラの名前を呟けば、それに反応したように中が締まり、僕の指を締め付けてくる。
この中に自分のを埋める想像をして、僕の下半身の熱は苦しいくらいに高まった。
きっとこの中に挿れたら相当気持ちいいんだろうと考えてしまう邪な感情は、どうしても拭いきれない。
蕩けたセラの顔を目の前に、呼吸すら乱れてしまいそうな程だった。


『あ、あっ……やぁ……』

「……セラ、可愛いね」

『……それ……だめ……っ』


もう一方の手で薄ピンク色の胸の先端を刺激すれば、甘えるようなか細い声が僕の耳へと届く。
その様子に喉を鳴らし指の動きを早めると、セラは奥歯を噛みしめるように顔を歪め、息遣いを少し荒くした。


『や……見な……いで……』

「どうして?全部見せてよ、君は僕のものでしょ?」

『あっ……そ……じっ……』


果てる寸前のセラは破壊的に可愛い。
潤った唇が無気力に開かれて、そこから覗く小さな舌ですら僕を欲情させる。
整った形のふくよかな胸が揺れて、腰が僅かに震えて持ち上がれば、小さな悲鳴と共に膣内はぎゅっと僕の指を締め付けてくる。
いつものこの子からは想像できないくらい妖艶なその姿に、僕は堪らずセラの唇を塞いだ。


「はっ……」

『……ふ……、ぁ……』


熱が高まり過ぎて辛いものの、セラのこの姿を見られるのは僕だけだと思うと堪らなく幸せを感じる。
それと同時に、この子と結ばれる未来は本当に来るのだろうかという不安も湧き上がった。
大切に想うからこそ一線は越えられないけど、大切だからこそ全て自分のものにしたくなる。
セラがいずれ他の誰かと、僕とした以上のことをする可能性を考えれば、胸が苦しくて堪らなくなった。
だけど……


『総司……大好き』


どんなに苦しく感じようとも目の前でこうして大好きだと言われたら、この苦しみすら愛おしく感じてしまう。
痛みも辛さもセラを想うが故だとしたら、僕はそれすら受け入れてこの子を愛し尽くしたいと思った。


「僕も大好きだよ」


もう一度、愛らしく悶える姿を見たくてセラの中の指を動かせば、セラは瞳を潤ませて僕の腕をそっと掴んだ。


『あの……もう……』

「ん?」

『今日はもう沢山気持ち良くなっちゃったから、これで……おしまいにしたい……』


その言葉を聞いて改めてセラを見れば、身体は熱く汗ばみ、ややぐったりしている様子だ。
瞳も今にも寝てしまいそうなくらいとろんとしていて、僕は苦笑いをこぼした。


「ごめんね、無理させちゃったかな」

『ううん、総司に触ってもらえて嬉しかったよ』


照れくさそうにそう言ったセラを抱きしめると、僕の肩に頬を寄せていつものようにすりすりと甘えてくる。
その様子に頬は緩み、そっとセラの肩から腕を撫でた。
セラの肌は驚くほど柔らかくて、指の腹で撫でるたびに心まで引き寄せられるようだった。


「沢山汗かいちゃったね」


額に張り付いた前髪をそっと撫でると、閉じていた瞳は開かれて、セラは恥ずかしそうに唇を結んだ。


『……ごめんね。総司のベッドなのに……』


伏せられた睫毛の奥で、視線を逸らす仕草がたまらなく愛おしい。
そんなふうに恥ずかしがられるとついからかいたくもなってしまうけど、今はただ優しく抱きしめていたかった。


「別に構わないよ。むしろセラの汗なら大歓迎なんだけど」

『そんなわけないよ……』

「本当だよ。だっていい香りだし」


後頭部に手を添えぎゅっと抱きしめ、その首筋に顔を寄せる。
甘い香りを胸いっぱいに吸い込めば、大好きでたまらないセラの香りがした。


『や、やだよ……何してるの?』

「セラがいい匂いだなって」

『恥ずかしいよ、やめて……』


僕を押し返そうとしてもセラの腕の力なんてたかが知れていて、結局ずっと僕の腕の中にいる。
そしてそのうち諦めたのか、セラはまた静かになった。
でも首筋や頬にキスをすれば、セラはまた僕の肩に頬を寄せて、くすぐったそうに笑ってくれる。
その笑顔が見たくて、また肩にキスを落とす僕がいた。


「気持ちよかった?」

『うん、とっても』

「良かった」


指先がセラの背を撫でるたびに、擽ったさに耐えるような甘い声が聞こえる。
このままだと僕の方が耐えられそうになくて、ベッドから起き上がるなり彼女の身体をひょいと抱き上げた。


『え?なにしてるの?』

「ん、ちょっと運搬中。君の身体が冷えたら困るし、お風呂入りに行こっか」

『でも、自分で歩けるよ?』

「甘えられる時は甘えてよ」


何も言わず、セラが小さく頷く。
その仕草も可愛くて、僕は満足げに笑みを浮かべた。
自然と歩幅を落として、抱き上げた体温を確かめる。
華奢な肩がそっと揺れると、くすぐったそうに僕の首にしがみつく感触が伝わってきた。


「じゃあ、そのままでいてね」


足元に気をつけながら、寝室の奥にあるバスルームへと向かう。
浴槽には湯が張られていて、湯気が立ち上り、ほのかに花の香りが漂っている。


「湯船、ぬるくないかな。……うん、大丈夫そうだね」


セラの身体をもう一度胸元で支え直して、僕は片足だけ先に湯の中へと沈めた……つもりだったんだけど。


「……うわっ」


滑った。
それも、ものの見事に。

咄嗟にセラを庇って腕を強く抱きしめたまま、僕はそのまま浴槽の中へと沈み込む。
湯が大きく跳ねて、近くにあった入浴剤の箱まで巻き込んで倒れた。
ばしゃん、と派手な音を立てたのと同時に、浴槽のお湯が一気に乳白色に変わっていく。
バスルームいっぱいに、甘くて柔らかな香りが満ちた。


「ぷはっ……」


湯船から顔を出すと、目の前が一瞬くらっとするほど眩しい。
僕の腕の中には、呆けたように目を見開いているセラがいた。


『大丈夫?頭とか打ってない?』

「僕は大丈夫だよ。セラは平気?」

『私は総司に抱っこされてたから大丈夫だったけど……』


そう言って、僕を見上げたセラが、ふふっと笑いはじめた。


『びっくりした。総司も結局濡れちゃったね』

「うん。しかも寝着までね。……あーあ、入浴剤も贅沢に使っちゃったし」


苦笑しながら、傍に転がっていた入浴剤の箱を拾い上げた。
蓋は外れていて、中身が半分くらい流れている。


『もう、私があげた入浴剤、無駄遣いしないで』

「それ、今言う?だって仕方なかったんだよ。事故だったんだから」


思わず肩を竦めると、セラはぷいと頬を膨らませる。
わざとそうしているその様子が可愛くて、僕はつい笑ってしまった。


「でもさ、これで君の好きな香りに包まれながら一緒に入れるんだからちょっとは嬉しくない?」

『そういう言い方するのはずるいよね?』

「ずるくなんかないよ。君からのプレゼントを最大限に活かしただけだしね」


くすくすと笑いながらも、セラはどこか落ち着いた表情で僕の腕の中にいる。
湯船の中は真っ白で肌は見えないけど、セラのぬくもりははっきりと感じられた。


『濡れちゃったし、総司も一緒にあったまろう?』

「うん。でもこのままだと、服が貼りついて気持ち悪いな。ちょっと脱ぐね」


そう言って、濡れて重くなった寝着を一枚ずつ脱いで、浴槽の外に置いた。
布が濡れると、思った以上に身体にまとわりついて動きづらい。


「よいしょ……っと。これですっきり」


セラを後ろからそっと抱きしめ湯船に浸かる。
触れ合う素肌の感覚が心地良くて、心の奥から熱が上がってくるような気がした。


『ふふ……あったかくて気持ちいい』

「そっか。それなら良かったよ」


こうしていると、胸を渦巻く不安を全部忘れられそうだった。
甘い花の香りに包まれて、肌をなでる湯が心地よくて、僕の腕の中でセラは少しずつ力を抜いていく。
でも白濁した湯のおかげで何も見えないとはいえ、彼女の柔らかな肌がすぐそこにあるというだけで、意識が熱を帯びてしまう。 
肌が触れ合うたびに胸の奥がじわじわと刺激されて、僕の下の部分にはすっかり熱が戻りつつあった。


「僕、もう出ようかな」

『え、もう?今入ったばっかりなのに?』


セラが僕の方を振り返ったことで、目の前には愛らしい顔がある。
思わず目を見開けば今度は胸の膨らみがお湯から覗いて見えてしまうから、僕は思わず息をのんだ。


「セラはゆっくり入ってていいよ」

『あと少しだけ、一緒に入ろう?』

「…………」


僕が今、半生殺し状態でいることなんて知りもしないだろうセラは潤んだ瞳で僕を見上げてくる。
この心情を見透かされるのも格好悪いから、僕は敢えてにやりと口角を上げてみせた。


「そんなに僕と一緒にいたいの?」

『うん、少しでも長く総司といたいよ』


完全に僕と向き合う体勢になったセラは、可愛い顔でそんなことを言った挙句、僕に抱きついてすりすりと頬を寄せてくる。
柔らかい二つの膨らみが僕の胸元に当たり、僕の中心は情けないくらい元気になってしまった。


「……あのさ。セラって無自覚だよね」

『え?何が?』

「んー、たとえば……さっきから僕の肩に、そうやって何の躊躇もなく頭のせてくるとことか」

『だめ?』

「だめじゃないよ。むしろちょっと嬉しいけどさ」


ほんの少しだけ声が掠れたのを、自分でも誤魔化せなかった。
そのままセラがきょとんとした顔で僕を見上げてくる。


「ただ、ずるいなって思って。こっちはけっこうドキドキしてるのにね」

『え、総司が?』

「……悪い?」


照れ隠しのつもりで少し睨んだけど、その視線は自然と逸れてしまった。


『ううん、嬉しい……』


セラが頬を染めながら微かに笑った。
その笑顔が可愛過ぎて、不覚にも僕の鼓動が跳ね上がるのを感じる。


『私もね、総司といるといつもドキドキしちゃうんだ。今も……たくさんドキドキしてるよ』


何かを強請るように上目で僕を見つめてくるのはもういつものことだけど、この状況でそんな顔をされたら理性が本気で吹っ飛びそうになる。
完全に雑念塗れになったから、思わず深いため息を吐き出した。


「……あーあ、ダメだ。セラが可愛すぎると、いろいろ我慢するのが大変になるんだけど」

『我慢?なにを?』

「何を……って、たとえばこうやって隙だらけの君にキスしたくなっちゃうとか」


少し含みを持たせて言ってみたけど、返ってきた声は想像以上に素直だった。


『じゃあキス、して?』


……この子は、ほんとに。 

回帰を繰り返す前のセラなら、こんな風に自分から何かを望むようなことは滅多になかった。
なのに今は、顔を赤らめながらも僕をまっすぐ見つめて、ちゃんと自分の気持ちを言葉にしてくれる。
それがどれだけ嬉しいことか、本人は気づいてないんだろう。
その一言で心の奥がまた熱くなった。


「……じゃあ、遠慮なく」


囁くように言ってから、セラの唇をそっと塞いだ。
軽く触れるだけのつもりが、柔らかな感触に欲が滲んで自然と唇を重ねる深さが増していく。

セラの肩に手を添えて身体を抱き寄せると、小さく震えた気配が伝わってきた。
でも逃げようとするそぶりはなくて、むしろそっと目を閉じて、僕の動きを受け入れてくれている。
唇を離すと潤んだ瞳がすぐに見上げてきた。


『ふふ』

「何笑ってるのさ」

『総司と初めて一緒にお風呂入れたから嬉しいなって思って』


セラははにかみながら笑うと、体勢を変えたいのか、もぞりと動く。
でもセラの手が僕の熱を帯びて硬くなった場所にぐいと当たり、口からは思わず声が漏れた。


「……んっ……」

『あ、ごめ……』


慌てて手を引っ込めたセラは、目を見開いて僕を見る。
その顔は瞬時に真っ赤に染まり、僕も僕で思わず変な声を出したことに少なからず気まずさを覚えたからこそ視線を逸らした。


『ごめん……なさい……』

「……いや、いいよ」


あーあ……、これ絶対気づかれたよね。
でも、セラのことだから詳しいことまでは良くわかってないかな。
取り敢えず気にするのはやめようとため息を一つ吐いたけど、セラは何を思ったのか再び僕のそこにそっと手を触れた。


「……え?ちょ、何してるのさ」

『ここを触ったら……総司が気持ち良さそうにしてたから……』

「いや、いいってば……」


セラに触れられてると思えば、そこはどくんと脈打ち、情けなく反応してしまう。
セラの手首を掴んで離そうとしたけど、セラはきゅっとそれを握り真っ赤になった顔で言った。


『はしたなくてごめんなさい、でも……総司のことが好きだから、私も総司に気持ち良くなってもらいたい……』


消えそうな声で精一杯の様子でそう言ってくれた言葉を聞いて、僕の気持ちがぐらりと揺れる。
セラの細い肩を掴む手にも力が入り、理性で自分の欲求を抑え込もうとしていると、僕の耳には追い討ちをかけるような甘い声が届いた。


『だって、総司は私のでしょう?』


あの時のセラは今にも達しそうになりながら余裕なく浅い呼吸を繰り返していたのに、僕が言った言葉を覚えててこうして同じ言葉を僕に言うから、そんなところが堪らなく愛おしかった。
そして僕がこの子に抱く感情と同じような気持ちを持ってくれているのかもしれないと思えば、拒む理由なんていとも簡単になくなってしまった。


「本当に……いいの?」

『うん。どうしたら……気持ちよくなる?』

「ここを……こう」


セラの小さな手の上から上下に動かすよう手を重ねると、セラのてのひらが優しく包み込むように上下へと動きを与えてくれる。
その優しい触れ方や動かし方が異様に気持ち良くて、僕の息は次第に上がっていった。


「……ん……」

『総司……可愛い……』


セラの瞳は潤んでいて、その顔はいまだに真っ赤だ。
きっと物凄い恥ずかしい中、僕のためにこんなことをしてくれてるんだろう。
セラの手が動くたびにお湯がちゃぷりと揺れ、僕も羞恥の心を感じながらも段々余裕がなくなっていった。


「……は、セラ……」

『総司……好き……』

「僕も……」

『大好き、総司……』


ここ最近、セラに触れた夜は、この子が寝た後でやむなく自分で処理することがあった。
それで十分事足りると思っていたけど、こうしてセラに触れてもらうと自分でするのとは全然違う。
セラの眼差しや手の動き、僕の名前を大切そうに呼んでくれる声や、愛らしい愛情表現が僕の身体中を刺激して、あっという間に高みに昇りつめてしまう。


「……うっ、……あ、イク……」


セラをきつく抱きしめて奥歯を噛み締め、僕の下半身はどくんと大きく脈打った。
快楽と一緒に心が満たされて、僕は僅かに荒くなった息を整えるようにセラの肩に顔を埋めた。


「……はあ……」


……まずいな、気持ち良過ぎて何も考えられなくなる。
そっと僕の髪を撫でてくれるセラの手の温もりが心地良くて、小さな身体をよりきつく抱きしめ擦り寄った。


『ふふ、くすぐったいよ』

「いつもの仕返しだよ」

『えー?』


くすくす笑うセラからそっと身体を離すと、セラの顔はやっぱりまだ赤い。
熱の籠った頬を撫でそっと唇を重ねて、そのまま優しく抱きしめた。


「ありがとう、気持ち良かったよ」

『良かった……』

「ごめんね、君に変なことさせて」


今になってようやく気持ちが落ち着いてきたけど、セラにあんなことをさせたと思えば自己嫌悪だ。
一緒に湯船に入るべきじゃなかったし、そもそも足を滑らせたりしなければ……いや、そんなことは言い訳にならない。
僕が自分の欲にすら抗えなかったことが問題だと、苦い気持ちになった。


『どうして総司が謝るの?私が勝手にしたことなのに』

「いや、違うよ。僕がつい君の優しさに甘えちゃったからさ」

『私もいつも総司に甘えさせて貰ってるよ?それに……総司だって私に触ってくれるのに』

「僕とセラとじゃ根本的に色々と違うでしょ。君はちゃんと自分を大切にしないといけない立場なんだから。それなのに、変なことに付き合わせてごめん」


またおかしな気を起こす前に湯船から上がろうと思ったけど、セラは僕の手をぎゅっと握って言った。


『私は総司の身体のことを一番大切に思ってるよ』


その言葉を聞いて、以前セラが自分の身体を大切にして欲しいと言ってくれた時のことをふと思い出した。
あの時もセラは懸命な様子で僕の手を取り、温かい言葉をかけてくれたよね。


『だから私は総司に触りたいし、総司を気持ち良くさせてあげたい……。総司が私にそう思ってくれてるみたいに、私も……総司に何かしたいって思うよ。総司と私、何も変わらないよ』


セラのその言葉は、まっすぐに僕の胸の奥へと届いてきた。
何気ない顔をして言っているけど、僕を想ってくれる気持ちが伝わってくるから僕はふっと口元を緩めた。


「セラがそう思ってくれるのは、すごく嬉しいよ。嬉しくて……どうにかなりそうになる」


思わず手を伸ばして、セラの頬にそっと触れると、その肌は火照ったように熱くて柔らかい。
セラは少しだけ戸惑いながらも、僕の手のひらに自分の頬を寄せてきてくれた。


『総司が、喜んでくれるなら……私はもっと触りたいって思うよ。ちゃんと大切にしたいって思ってる』


彼女の小さな指が、そっと僕の胸元に触れる。
それだけで胸の奥がどくんと音を立てるように跳ねて、息が止まりそうになった。


「……ほんと君って、ずるいよね」


僕はゆっくりと柔らかい髪を撫でながら、そんなことを呟いた。
セラは驚いたように目を丸くしながら、小さく首を傾ける。


『ずるい?私が?』

「うん。だってそんなふうに言われたら、君に甘えたくなるよ」

『甘えていいよ。私、甘えられるの好きだよ。だって、総司がそれだけ私を信頼してくれてるって思えるから』


優しい声。
それなのに僕の心臓は、みるみる鼓動を早めてしまう。


「僕の方が年上で護るべき立場のはずなのにさ。君といると、たまにどっちが支えてるのかわからなくなってくるんだよね」

『お互いに支え合ってるんだと思うよ。私が総司にしてもらってることと私がしたいって思うことは、同じくらい大切だもん』


どうしようもないくらいにこの子が愛しくて、僕は彼女の額にそっと口づけを落とした。
熱い湯の中で、心の温度がさらに上がっていくのを感じながら。


「ありがとう。君にそう言ってもらえるのが、僕にとって何よりの救いだよ」


僕は彼女の手を取り、優しく指を絡めた。
しばらく互いの肩に寄り添うようにして湯に浸かりながら、僕たちは穏やかな時間を過ごしていた。

その静けさの中でも、セラの柔らかな吐息やほんのわずかに触れる指先の感触が心を熱くさせる。
ただ一緒にいるだけで、今の僕は十分すぎるほど幸せだった。


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