6
日々は過ぎ、私の体調は順調に回復していった。
総司が見守ってくれる中、医者の診断を終えた私はホッと息を吐き出した。
「良かったね。明日からは起きて通常通り生活していいみたいだし、薬の量も減ったしね」
総司は笑顔でそう言ってくれる。
私は微笑みを返しながらも、心の奥ではこうして総司と過ごせなくなるだろう明日からの日々を想像して寂しい気持ちになった。
『毎日献身的に看病してくれて、どうもありがとう。総司のおかげですっかり元通りになったよ』
ベッドから出て、敢えて元気に見えるようにその場で軽く歩いてみる。
少し怠さは残るものの、以前まで抱えていた不安に押し潰されそうな感覚はなくなってくれたみたいだ。
『明日からまた少しずつ、妃教育がんばらないとだね』
そう言った私の元に総司が歩いてくると、不意に私を持ち上げる。
びっくりして小さな悲鳴を洩らしたのに、総司は上に掲げた私を見上げたまま、その場でふわりと一回転した。
「ははっ、なんかこうしてると子供みたいだね」
『もう、何してるの?びっくりしたよ』
「今回のことで、前まで以上に軽くなっちゃったみたいだし、今ならこうして遊んであげられるかなって思ってさ」
『遊んでくれなくていいよ、もうおろして』
「残念、喜んでくれると思ったんだけど」
『恥ずかしいの』
総司は私を優しくベッドに下ろすと、そのままそっと触れるだけのキスをする。
こうして触れ合えることがただ幸せなのに、ここ最近は薫様のことが心にちらついて、これから先の日々のことばかり考えるようになってしまった。
『総司』
「うん?」
『明日もまた来てくれる?』
私の治療が始まってから、総司は毎日この部屋を訪ねてきてくれた。
それでも夜になると不安で、総司との約束がないと心配だった。
今では以前までのような言いようのない不安は軽減されたけど、ほんの少しの甘えから気づけばそう口にしていた。
「勿論。明日も明後日も、そのまた次の日も僕は君に会いに行くよ」
もし……あの夜。
総司が王宮に同行することを私が最後まで反対していたら、どうなっていたんだろう。
私は今頃、総司を想って一人で泣いていたのかな。
会いたくても会えなくて、触れたくても触れられなくて。
そのあたたかさや声すらも感じることができない毎日を想像すれば、今がどんなに恵まれていて幸せなのか実感できるようだった。
けれど反対していれば、総司が今回のことに巻き込まれることも、未来を縛られることもなかったのかもしれない。
アストリアには戻れないと言った千鶴様の言葉を思い出し、不安を紛らわすように総司の胸に頬を寄せた。
『私ね、総司に毎日会えて話せて……こうして一緒にいられるだけで凄く幸せ』
「うん、僕もだよ」
『もし今一人だったら、総司に会いたくて毎日泣いちゃってたと思うから』
総司は私の髪を撫でながら、私の言葉を聞いて優しく微笑んでくれる。
それは公爵邸の庭園で同じように過ごしていた時と同じで、私にとって何よりも大切な温かい時間だった。
私達の気持ちは、あの頃と何も変わっていない。
変わっていないはずなのに、私の心はもう以前までのように手放しで幸せを感じることは出来なくなってしまった。
そしてそれは総司も同じだとわかってしまうから、また胸が痛んだ。
「君を一人はしないよ」
優しい総司の声が聞こえる。
その甘い声に誘われて顔を上げると、柔らかく唇が重なった。
何度も触れては離れて、その温もりを感じられることが唯一の幸せ。
私はいつまで現実から目を背けて、こうして総司と過ごしていられるんだろう。
「セラ、ごめんね。今回のこと、僕が真っ先に気づいてあげるべきだったのに」
眉尻を下げてそう言った総司は、苦しそうに顔を歪めている。
その表情を見て胸が締めつけられて、私は慌てて首を横に振った。
『総司は謝らないで。だって総司は私の様子がおかしかったことに気付いて、ずっと気にかけてくれてたよ。それに、お香や紅茶のことは私自身が気付くべきことだったから』
「あのお香は本物を嗅ぎ慣れている人でも違いがわからないくらいよく出来てるらしいよ。だから気付かないまま身体や精神を蝕んでいくし、少しでも体内に取り入れれば思考力が鈍って余計に気付けなくなるんだ。だから阻止できるとしたら、身近にいる人間がいかに早く気付いて使用を止められるかなんだよ。セラが前までと違うことはわかってたのに、それがまさか麻薬だとは思わなくてさ……そのことに気付いたのもはじめ君が君の様子を見て、街で偽物のお香が出回っている話を教えてくれたからなんだ。その話を聞かなければ、僕は最後まで何も気付いてあげられなかったかもしれない」
『でも、そのお香の話は私も聞いたことがなかったから……』
「君を護る騎士として、ただ剣が振れるだけじゃだめだよね。何かあった時に対応できるように情報を得ることも大事なのに、僕にはそれが足りてなかったって反省したよ。本当にごめん」
いつになく思い詰めた表情でそう零した総司の言葉を聞いて、胸の奥に痛みが広がった。
こうして総司に心労ばかりかけてしまう自分が情けなく思えて、私は唇を噛んだ。
私がもっとしっかりしていれば。
自分の身くらい自分で守れていれば、総司にこんな顔や辛い想いをさせなくて済んだのに。
『私はあのお香の影響で不安で堪らなかった時、総司が優しくしてくれたことや、総司がかけてくれた言葉に沢山支えてもらったよ。それは私の傍にいてくれたのが、他でもない総司だったからだよ。だから総司はそんなふうに思わないで』
総司のまなざしが少し揺れて、いまだ自分を責めている影が消えない。
私は思わず身を乗り出し、必死に言葉を探した。
『ねえ、私たち、まだ十代だよ?完璧でいられるはずなんてないし、失敗しちゃうことだって沢山あると思うの。でも、そういう出来事から学んで、少しずつ大人になっていけるんだよ。今回だってそう。私にとっても総司にとっても、きっと大きな成長に繋がることになった筈だよね』
息が詰まりそうになるくらい一生懸命に言葉を重ねる。
総司のことを支えたい、少しでも気持ちを軽くしてほしい、その一心だった。
『だから、総司が自分を責める必要なんてないんだよ。だって……私は総司がいてくれるだけで、ちゃんと心の支えになってるから』
ここまで言って、私は小さく息をついた。
すると総司が、目をぱちくりさせてきょとんとした顔で私を見ていた。
思わず私ははっとして、頬が一気に熱を帯びた。
『あ、でも……心配とか、迷惑を沢山かけちゃったと思うから、それについてはちゃんと私も反省してるんだよ?ごめんなさい……』
しょんぼりして告げると、総司がふっと口元を緩めてくすくすと笑った。
その笑い声は優しくて、その笑顔を見れば私の頬には熱がより集まってしまうようだった。
「ほんと、セラは可愛いね。僕が気にしないで済むように、そんなに一生懸命言ってくれるなんて」
大好きな柔らかい声に、胸が甘く震えた。
総司の瞳が柔らかく細められて、まるで私を包み込むように見つめてくれる。
「ありがとう。セラがそう言ってくれるなら、今回のことは次に繋げられるようにいい勉強になった思えるよ。それにもしまた同じようなことが起きたら、次は絶対君を護るって誓うよ」
その一言に心がじんわり熱くなって、視界が滲みそうになる。
嬉しくて、安心して、どうしようもなく心が満たされていく。
私はそっと総司の胸に頬を寄せ、彼の鼓動を感じながら小さく呟いた。
『私も……。ありがとう、総司』
総司の胸に寄りかかっていたら、そっと髪を梳くように撫でてくれた。
その指先が頬をなぞり、やがておでこに触れて留まる。
ひんやりとした感触に思わず瞬きをして、私は見上げた。
『……総司?』
「熱がまだ残ってないか、確かめたくて」
優しく落ち着いた声。
けれどその瞳は私の体調だけじゃなく、心の奥まで気遣ってくれているようだった。
『もう大丈夫だよ。総司がそばにいてくれるから安心してるし、すっごく元気』
「そう言ってもらえると、僕の方が安心するよ」
『ふふ』
穏やかに笑いながらも、額に置かれた手は離れず、むしろ護るようにぬくもりをくれた。
「セラ。僕は君を絶対に護るよ」
掠れる声でそう告げられて、鼓動が早くなるのを感じた。
翡翠色の瞳は強くて、切なくて、見ているだけで涙が込み上げそうになる。
『……総司……』
「君が少しでも苦しむのは、もう見たくないんだ。だから剣でも、言葉でも、僕は何だって使って君を護りたい」
総司は出会った時から私を護ろうとしてくれていた。
何度も何度も私を危険から救ってくれて、私の心まで大切にしてくれた。
その変わらない総司の気持ちに触れてしまえば胸の奥が熱く揺れて、どうしようもなく言葉が溢れてくる。
『私は剣で戦うことはできないけどね、でも……総司の健康を護りたい、総司の笑顔を護りたい、総司の幸せを護りたい。私が誰より護りたいのは総司だよ』
言ってしまった後、頬が熱くなる。
けれどそれが本当の気持ちだから、目を逸らせなかった。
「セラにそう思ってもらえるだけで、僕は幸せすぎるくらいかな」
その声音は掠れていて、まるで自分を抑え込んでいるように切なく響いた。
瞳の奥に浮かぶ光は、私への想いで満ちているようだった。
「僕の方こそ、君を笑顔にしたい。健康でいてほしいし、幸せでいてほしい。それが叶うなら、僕は何だってするよ」
そう言ってくれる声が、甘く胸に沁みて視界が滲む。
私はそっと総司の掌に額をすり寄せ、彼の温もりに身を委ねた。
『私たち、お互いに護りたいものが同じなんだね』
「そうだよ。だからこれからもずっと一緒にいようね」
柔らかな声とともに、額に置かれた手のひらがそっと力を込めた。
そのぬくもりに包まれながら、胸の奥でひとつ、静かに誓いが結ばれていくのを感じた。
「セラ、一つ話してもいい?」
『うん?』
「王女がなんで君にあんなものを渡したのか、その理由を君に話しておきたいんだ」
その件は私もとても気になっていたことだった。
総司と薫様からは、私の体調が回復してから話すと言われていたこと。
だから最悪の場合も想定して、私は無言のまま頷いた。
でも真剣に語られる言葉を聞いていると、不意に部屋の扉がノックされる。
総司が立ち上がり鍵を開けると、部屋の中へと入ってきたのは薫様だった。
「セラ、明日から普通の生活ができるらしいね。良かったじゃないか」
『薫様、ありがとうございます。おかげさまでもうすっかり元通りです。ご心配をおかけして申し訳ありません』
「お前が元気になったならそれでいいよ。沖田もこれでようやく安心したんじゃない?」
「ええ、そうですね。一時はどうなることかと思いましたけど、殿下が良い医師を紹介してくださったので助かりましたよ」
「あいつは中々優秀だからね。外部にも漏れてないし、これで一件落着だ」
千鶴様が私にあのお香や紅茶を渡した理由が気になった。
けれど双子の兄である薫様の前で尋ねることはできなくて、目の前の総司と薫様を見つめていた。
あの日から総司と薫様の会話のやり取りは、いつ見ても以前のまま。
だから千鶴様が私と総司のことを口外したわけではないのだろうけど、どうしても胸騒ぎはおさまってくれなかった。
「今日は公務も一通り片付いたんだ。だから沖田、お前はもう下がっていい」
「承知いたしました」
「ああ、それと。夜、俺の部屋に来てくれ。お前に話があるんだ」
総司の瞳が一瞬揺らいだ気がした。
言いようのない不安を感じて総司の名前を呼ぼうとした時、薫様が言葉を重ねた。
「と言っても、ただの任務の話なんだけどね」
「わかりました、夜お伺いします」
「そうしてくれ。今日もご苦労だった」
総司は一礼をすると、私に視線を送り微笑んでくれる。
でもその笑顔が寂しそうに見えてしまったから、私は思わずその場で立ち上がった。
『総司……』
「うん?」
『今日もどうもありがとう。明日も……待ってるね』
総司はくすりと笑って私の頭に優しく手を置くと、そのまま部屋を去って行く。
寂しい気持ちのまま、その後ろ姿をただ眺めることしかできないでいると、不意に薫様が私の手を引きベッドサイドへと座らせた。
「体調はどう?」
『問題なく元気です。吐き気や頭痛もなくなりましたし、食欲もすっかり戻りました。幻覚も見なくなったんです』
「良かったね。顔色もいいし、少しずつ前までの生活に戻そう。でも無理だけはしないで」
『はい、無理のない程度に明日からは妃教育を頑張ってまいりますね』
ここ最近は、空いた時間を見つけては必死に学びを進めていた。
遅れを取り戻さなければならないと気持ちを引き締めていたから、その意気込みのまま薫様に微笑みかけると、彼は柔らかく口を開いた。
「そのことなんだけど、明日からしばらくは妃教育はできないんだ」
『それはどうしてですか?』
「俺が講師陣に言ったんだよ。あと一週間は休むことにするってね」
『薫様が?』
「ああ。明日からは、二人でのんびり過ごそう。街に出て少し散策をしたり、気取らない菓子屋で甘いものを食べてみたりね。それにほら、この王都の広場では季節ごとに楽団が演奏をしているだろ?一緒に聴きに行きたいんだ」
『わあ、音楽団ですか。素敵ですね』
「それに湖畔の庭園も案内したい。今の季節は薔薇が見頃でね。俺たちはずっと公務や教育に追われてしまっていて、落ち着いて二人で過ごす時間もなかったから、これを機に少しくらいゆっくりしても罰は当たらないだろ」
薫様はそう言いながら、わずかに目を細めた。
「だから数日分の公務はすべて片づけた。セラと過ごすために、先に済ませておいたんだ。ここ最近、俺がいつも以上に忙しくしていたのは全部そのためだったんだ」
その言葉に、私は思わず目を見開いてしまった。
確かに薫様はここ最近、私の部屋に来た後も連日遅くまで机に向かっていらした。
そのお姿を案じていたけど、それが私との時間を作るためだったなんて胸が痛む。
なぜなら薫様の思いやりが伝わってくるのに、私の心は別のところに囚われてしまっているからだ。
薫様と過ごすということは、総司に会えなくなる……そのことばかりがどうしようもなく胸を締めつけてしまうから、そんな想いを抱いてしまう自分を強く戒めた。
『お気遣いありがとうございます、薫様。お出掛け、とても楽しみです』
身勝手な気持ちを必死に抑え込んで、私は微笑んだ。
私のためにすべてを整えてくれようとする婚約者に、応えなければならないのに。
心の奥で疼く想いを隠しながら、その笑みを薫様へと向けた。
「セラが喜んでくれるなら、どこへでも連れて行きたい。お前の笑顔を見たいんだ」
薫様はまるで私の返事を確かめるように、静かに瞳をのぞき込んだ。
けれどその直後、薫様はふっと表情を曇らせて急に頭を下げた。
「それに今回の件、セラには本当に申し訳ないことをした」
『薫様……』
「沖田にも話したが、このことが外に漏れればセラの立場が危うくなる可能性が高い。だから両親にも伝えず、内々で処理することにした。千鶴にはきちんと事情を話し、罰も与えた。加担した侍女も捕らえたから、もう二度と同じことは起きないようにしてある。お前を護ってやれなくて本当に……すまなかった」
再び謝罪を告げられる薫様に、私は慌てて言葉を紡いだ。
『いいえ。沢山支えていただいて、薫様には感謝しているんです。それに謝らないでください。今回のことは、気づけなかった私が悪いのです。お香や紅茶に違和感を覚えられなかったなんて……自分の身くらい、自分で守れるようにしっかりしなければいけないのに。それに薫様は外交で国外にいらっしゃったではないですか』
そう口にすると、薫様は小さく首を横に振り、真っ直ぐに私を見据えた。
「いや、千鶴が問題を起こす奴だってわかってたのに、野放しにしていたのが悪かったんだ。どっかに閉じ込めるなりしておけば良かった」
『そんな、閉じ込めるだなんて……』
「セラのことは俺が護るって決めたんだ。だからこれからは俺に護らせてくれ」
『……ありがとうございます』
「とにかく、本当に良かった。セラが元通り元気になってくれて」
薫様の言葉は温かく優しくて、閉じ込めていた罪悪感をむき出しにさせてしまう。
それにどうしても気になることがあって、今ならこの流れで尋ねてもおかしくないかもしれないと、ゆっくり口を開いた私がいた。
『……薫様。千鶴様は、どうしてあのようなことをなさったのですか?』
「あいつはセラが羨ましかったんだよ。それに俺がセラのことばかり気にかけているのが気に食わなかったんだろうね。子供の頃からわがままな奴だったから」
『千鶴様が……そう仰ったのですか?』
「まあ、あいつはあんな性格だからはっきりとは言わなかったけど。でもそういうことで間違いない」
そんな理由で、あんなことを……?
漠然としすぎていて、胸の奥に釈然としないものが残るから、私は思わず再び聞き返していた。
『……本当に、それが理由なのですか?』
「そうだよ。なんで?」
『いえ……ただ、私が千鶴様の気に障るようなことをしてしまったのではないかと思って心配していたのです』
思い切って告げると、薫様は目を丸くし、小首をかしげられた。
「そんなことは、何も言ってなかったけど?」
その無邪気な言葉を耳にした瞬間、胸の奥に言いようのない不安が広がる。
けれど同時に、どうしようもなくほっとしてしまう自分がいた。
だってつまり、総司と私の関係を薫様はまだ知らない。
だからこそ総司と薫様は普通に話していたし、私への態度も以前までと変わらない。
その事実に安堵しながらも、複雑な感情が胸の奥で渦を巻いていた。
「とにかく、明日からは沢山出掛けよう。気分転換も必要だ、俺もお前もね」
その言葉を聞いて、真っ先に浮かんだのは総司の顔だった。
総司は自由に王宮を出ることができるのかな。
ふらっと一人で出歩いたり、仲間達とお酒を飲んだり……公爵邸にいた時のように気分転換ができているのかな。
そう考えてしまえば、また心が苦しくなる。
私から見て、総司は私の護衛と騎士としての任務や鍛錬に明け暮れて、とても自由に過ごしているようには見えなかったからだ。
総司を縛っているのは私なのに、私だけが気分転換だなんて間違っている。
総司は私のために。
私のためだけに王宮に来てくれたのに。
「セラ?どうかした?やっぱりまだ体調が悪いの?」
『あ、いいえ。元気ですよ』
「いきなり固まるからどうしたのかと思ったよ。驚かせないでもらいたいね」
『ごめんなさい。あの、薫様?』
「なに?」
『総司も……私が体調を崩したせいで休息を取れていないと思うんです。私の護衛がないこの時期に、総司にも休暇を与えて頂けませんか?』
差し出がましいかもしれない。
それでもお願いせずにはいられなくてそう告げると、薫様がふっと顔を緩めた。
「確かにそうだね。護衛の代わりに別の任務を一つお願いする予定でいたけど、それはやめて沖田には休暇を与えよう」
『本当ですか?ありがとうございます』
「お前の頼みなら聞かないわけにはいかないからね。今夜、沖田が来たら話しておくよ」
『はい、本当にありがとうございます』
良かった……。
少しでも総司の疲れや張り詰めたものがこの休暇で癒せたらいい。
一緒には過ごせなくても、総司には安らかな時間を過ごして欲しい。
そう思いながら、薫様に微笑みを返していた。
ページ:
トップページへ