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胸の奥からこみ上げてくる熱が、抑えきれないほどに広がっていった。
腕の中で息を乱すセラの姿があまりに愛しくて、見ているだけで意識が飛びそうになる。
触れれば触れるほど、セラが確かに僕を求めてくれていると分かって、どうしようもなく心が震えた。

こんなにも誰かを愛しいと思ったことなんて、一度もなかった。
ただその表情を見ているだけで、胸の奥が痛くなるほど嬉しい。
今、この瞬間のすべてが、セラと僕だけのものだと思うと息ができなくなるほど幸せで。
互いの粘膜同士が触れ合う感覚に溺れながら、あっという間に限界を迎えた。


「……はっ……、イくっ……」


高まった熱が吐き出されれば、心地良い開放感と一緒に、熱い白濁色の液体がセラの腹部に飛び散る。
無垢な身体に似つかわしくないその汚れが、自分のものだという罪悪感と高揚感が心中を覆った。


「……っ……はあ……」


セラの前で、しかもこの子の上に出してしまった。
ずっと我慢してたし、これからも絶対にこんなことはしないつもりだったのに。

熱が落ち着き少し冷静になった僕が、恐る恐るセラを見る。
でも愛らしい蕩けた顔で僕を見つめていたセラは、僕に向かって柔らかく微笑んでくれていた。


『総司、大好き』


前の世界であんなことがあって、この世界に来てもあの悪夢に魘されて。
ここ最近は男に触れられるだけでもあんなに怖がっていたのに、セラは僕に対してだけはそんな素振りを一切見せなかった。
それどころか僕に触れられることを求め、こうして僕のことまで受け止めてくれている。
きっと怖かったはずなのに、それでも僕の方へ伸ばしてくれるその手が、愛おしくて仕方なかった。

何度世界が変わっても、セラは僕に愛情をくれる。
そして世界を渡り歩く度に、セラからの愛情は大きくなっているように感じられた。

ずっと、僕ばかりが追いかけて、僕の方がはるかにセラを想っていると思っていた。
それは回帰を繰り返しているだけ当たり前のことで、それでも構わないとすら考えていた。
でも今、セラの瞳を見て思った。
もしかしたら違うのかもしれない。
僕が思っているよりずっと、セラは僕のことを、本当に好きでいてくれてるのかもしれない。
回帰前のことを覚えていなかったとしても、セラの中には僕への想いが積み重ねられているのかもしれないと思えたからこそ、言葉にならない想いが胸の中に込み上げた。


「セラ」


恥ずかしそうに微笑むセラを、きつく強く抱きしめる。
そうすればセラもそれに応えるように、柔らかい身体で僕を抱きしめて返してくれた。


「君のことが好き過ぎて、死にそうなんだけど」

『ふふ、死ぬのはだめだよ』

「そうだね。ちゃんと生きて、セラのことは僕が護るよ」


絶対に、今度こそ。
セラを失いたくない。
その想いがより強くなって僕の心に根付いていく。


「お風呂入ろうか。まずはセラが風邪引かないように温めてあげないとね」


目を瞬かせたセラを横抱きにして、自室のバスルームに歩いて行く。
湯を張ったバスタブに一緒に身を沈めると、セラは小さく息を吐き、僕の腕の中に身を委ねた。
細い指が僕の胸のあたりをなぞるようにして、嬉しそうに擦り寄ってくる。


『幸せ……』

「僕もだよ」

『結婚したら、毎日こうやって総司と過ごせるのかな。周りにも隠さないで堂々と。そうなる日が待ち遠しいな』


セラはどの世界でも未来に希望を持っていた。
彼女の望む未来には必ず僕もいて、その未来のことを瞳を輝かせて話すセラの横顔が好きだった。
でも何度もその未来が壊れてきたことを僕は知っているから、この綺麗な瞳がまた悲しみに染まる光景を想像するだけで、胸が締めつけられる。
ままならない世界で生きている現状が、酷く苦しく感じられた。

でも、どんな世界にいても未来を信じてくれるセラと過ごすたびに、僕は自分も信じなければと思い知らされる。
だからこそ、怖さよりもその想いを守りたいという気持ちの方が今はずっと強かった。


「その未来、一緒に叶えようね」


小さな手を包み込むように握りながら言えば、セラは目を細めて嬉しそうに笑った。
その笑顔が本当に可愛くて、僕の頬まで緩んでしまう。


『私、頑張るね。総司とこの先もずっと一緒にいられるなら、どんなことでもできるよ』


僕を見上げてそう言ったセラを、腕の中で抱き寄せる。


「セラが無理をしなくても、僕が頑張るよ」


セラの髪を撫でながら、静かにそう告げる。
誰かのために強くなりたいたいと思える相手に出会えたことが、きっと僕の人生の中で奇跡なんだと思う。
どんなに不確かな明日でも、セラとなら信じていたいと思えるから。


『私ね、総司が私と同じ気持ちでいてくれることが、凄く嬉しいよ』


そう言って、セラは少し恥ずかしそうに俯く。
微笑んだその顔に愛おしさが込み上げて、言葉より確かなものを伝えるように唇を重ねた。
柔らかな息が触れ合って、世界が一瞬、音を失った気がした。

この世界でも、僕はこの子に一生を捧げる。
どんなに回り道をしても、どんな未来であっても、僕の心が辿り着く場所はひとつだけだ。


「これから先も、ずっと君と同じ気持ちでいるよ」

『変わらない?』

「変わらないよ、セラだけが大好きだ。だから明日、近藤さんに僕たちのことを話そうね」

『うん』


もう、隠す理由なんてない。
どんな未来が待っていようと、僕たちの想いを偽ることだけはしたくないと思った。


「これから先、何があっても僕が隣にいるからね」

『うん。総司がいてくれたら、私ずっと幸せ』


その言葉に、自然と笑みが零れた。
セラが信じてくれる限り、僕は何度でも強くなれる。
護るために剣を握るだけじゃなく、セラとの未来を紡ぐために、生きる力を持ちたいと思った。

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