7
その日は一日中、セラ嬢の部屋で過ごしていた。
食事は毎回二人分を運ばせ、同じ食卓を囲む。
僕が執務机に向かって書類を片付けている間、セラ嬢は寝台に身体を預けながら静かに本を読んでいた。
部屋に出入りしたのは仕事の報告に来た相馬だけで、それ以外は人払いを命じていたから、誰ひとりとしてこの部屋を訪れる者はいなかった。
セラ嬢は本に視線を落としているようでいて、時折そっと顔を上げ、僕の様子を窺ってくる。
その視線に気付かないふりをして書類に目を通していると、再び本に視線を戻してしまうところが可愛らしい。
きっと話しかけたい気持ちはあるんだろう。
でも僕が仕事をしているから邪魔をしてはいけないと思っているらしい。
その気遣いさえ愛しく思えるこの時間が幸せだった。
そして夜。
セラ嬢は身を清め、寝間着に着替え終えると、寝台の縁にちょこんと腰掛け、何か言いたげに僕を見つめていた。
書類から顔を上げると、僕は自然と微笑んで彼女に視線を送った。
「どうしたの?」
『総司様は、お部屋に戻られないのですか?』
「戻らないよ。まだ片付けたい仕事が残ってるからね」
『ですが、お風呂には入られないのですか?あまり根を詰めすぎると、お身体を悪くしてしまいます』
心配そうに眉を寄せる視線を受けて、僕は小さく伸びをした。
「そう言われると、少し疲れた気もするかな。休憩がてらに、お風に入ってくるよ」
立ち上がると、セラ嬢もほっとしたように微笑み、小さく頷く。
その安心した顔が可愛くて、僕はわざと何でもないことのように微笑んだ。
「じゃあ、バスルーム借りるね」
『……え?もしかして、このお部屋のバスルームを使われるのですか?』
「うん。そうだけど?」
『ですが……お着替えはどうなさるのですか?』
「その心配はいらないよ。君がお風呂に入っている間に、相馬に頼んで必要な物は全部運んでもらったから」
実際、この部屋で過ごすと決めた時点で不足する物は何一つないように手配は済ませてある。
その言葉にセラ嬢は目を丸くしたまま固まり、しばらく僕を見つめていたけど、やがて我に返ると困ったように眉を寄せ、小さく首を振った。
『やっぱり、それは良くないと思います。総司様には奥様がいらっしゃるのですよ?』
「……だから、その人達の話はしないでって言ったはずだけど。それに、この屋敷の家主は僕なんだ。僕がどの部屋で過ごそうと、遠慮する必要もないでしょ」
『それは……理屈ではその通りなのですが……』
彼女は視線を泳がせ、自らの手で胸元を押さえる。
『私が困ってしまうのです。既婚の男性と同じお部屋を使っていたなんて知れたら、皆様に誤解されてしまいますし……』
「何を誤解するの?僕が君の部屋で寝泊まりして、お風呂まで借りてるから、人に言えない関係なんじゃないかって?」
『そ、それです……!』
頬を赤く染めながら慌てる姿が可愛くて仕方ない。
僕はゆっくり彼女の前まで歩み寄ると、その視線に合わせるように腰を屈め、逃がさないよう穏やかに微笑んだ。
「セラ嬢は本当に真面目だね。でも安心して。誰が何を言おうと、そんなものは僕が全部黙らせるから」
『ですが……それでは総司様のお立場的にも良くありません』
「でも、今の君を一人にするつもりはないんだ。昨日あんなことがあったばかりなのに、おやすみって言って部屋を出ていけるほど、僕は聞き分けが良くないし。それに君だって、誰かがいきなり部屋に入ってきて嫌がらせされたりしたら嫌でしょ?」
困ったように揺れる青い瞳を見つめたまま、僕は穏やかな声で言葉を重ねる。
「でも僕がここにいればその心配もないよ。その間に屋敷の秩序を改善できるように、相馬には色々と動いて貰ってるからね。それに君は僕に迷惑を掛けているわけでも、無理を言っているわけでもない。ただ僕がここにいたいからいる。それだけの話だよ」
『でも……』
「何回言われても、これだけは譲れないよ。君が安心して眠れるまで、僕はこの部屋を離れない。だから諦めて、僕に見張られていてくれない?」
『結局……見張りなのですか?』
少し不服そうに返されて、僕は思わず笑みを浮かべた。
「まあ、半分は見張りかもね。君は目を離すと、すぐにまた迷子になりそうで危なっかしいし。だから僕が見張ってないと安心できないんだ」
『私は子どもではありません』
頬をほんのり膨らませて抗議する姿が可愛くて、僕は肩を竦めながら笑う。
「もちろん知ってるよ。でも、大人だから放っておいていいわけじゃないでしょ。むしろセラ嬢みたいな人ほど、誰かが傍にいないと無理をしてしまうからね」
セラ嬢は何か言い返そうとして口を開きかけるものの、結局言葉が見つからなかったのか、小さく視線を伏せる。
その顔を見つめながら、僕は少しだけ声を和らげた。
「昨日、君がいなくなった時。僕がどんな気持ちだったか、まだ話してなかったよね」
その一言に、彼女の肩がぴくりと震えた。
「君がどこにいるのか、怪我をしていないか、そればかり考えて、仕事も立場も全部どうでもよくなったくらいには必死に探し回ったんだよ」
『総司様……』
「だから、もう同じ思いはしたくないんだよね。君に窮屈な思いをさせたいわけじゃないけど、少なくとも君が安心して笑って過ごせるようになるまでは、僕が傍にいる。僕がそうしたいんだ」
静かな部屋に、しばらく沈黙が落ちる。
やがてセラ嬢は困ったように笑みを浮かべ、小さく息を吐いた。
『総司様は……本当にずるいですね。そんなふうに言われたら、もう何も言えなくなってしまいます』
「それなら僕の勝ちだね」
悪びれもせず笑ってみせると、彼女は「もう……」と小さく呟きながら苦笑し、その表情からようやく張り詰めていた力が抜けていくのがわかる。
「ほら、もう遅い時間だし君は薬を飲んで先に休みなよ。僕も湯浴みを済ませたら、残りの仕事を少しだけ片づけて部屋に戻るから」
『分かりました。でも、お仕事は本当に少しだけですよ。総司様もきちんと休まないと駄目です』
「はいはい。監視されてるのは、なんだか僕の方みたいだね」
そう言うと、セラ嬢はまたくすりと笑う。
つい先日までは僕にあまり笑ってくれなかったのに、今はこの笑顔がある。
その穏やかな表情を見られただけで、今日一日この部屋にいた意味は十分にあった。
それから湯浴みを済ませて寝支度を整え、浴室から部屋に戻ると、セラ嬢はまだ寝台にもぐり込まず、枕元の灯りに照らされながら静かに本を読んでいた。
扉が開く音に気づいた途端、その顔が花のようにぱっと明るくなって僕を見つめるものだから、まるで帰りを待っていてくれたみたいで、心の奥がふっと緩んでしまう。
「まだ起きてたの?」
『はい。総司様に、おやすみなさいを申し上げていませんでしたから』
そんなことを、いかにも当然という顔で言うんだから敵わない。
律儀で、真面目で、どこまでも可愛い。
引き寄せられるように彼女のいる寝台に腰を下ろせば、セラ嬢も読んでいた本を静かに閉じ、きちんと膝の上に置いて僕に向き直った。
「薬は飲んだ?」
『あ、忘れていました』
「駄目だよ。せっかく良くなりかけてるんだから、こういう薬は決められた通りに飲まないと」
そう言って掌に薬を乗せると、今日はもう疑う様子もなく素直に口に含み、水と一緒にこくりと飲み下す。
その仕草さえ幼い子みたいで愛らしく、思わず口元が緩んでしまった。
薬を飲み終えた彼女は安心したように息をつくと、澄んだ青い瞳を僕に向けて嬉しそうに微笑む。
『このお薬、本当に良く効きますね。昨夜、一度目が覚めた時は身体中が痛くて動くのも辛かったのですが、これを飲んだ後は痛みが和らいで、とても楽になりました』
「そっか。それなら良かったよ」
『はい。それに昨夜は久しぶりに朝までぐっすり眠れた気がします』
それは僕が一番よく知っている。
昨夜の彼女は、本当に深く眠っていた。
少し身体に触れても、目を覚ます気配はまるでなかった。
でも、だからこそ目を離せないというのもある。
あの眠りの深さでは、もし誰かが忍び込んできても気づかないだろう。
だから僕がこの部屋にいて見張っていないと駄目なんだ。
『あの……総司様?』
物思いに耽っていた僕を、遠慮がちな声が引き戻した。
「うん?どうしたの?」
『色々とお気遣いいただいて、本当にありがとうございます。それから昨日も……私を探しに来てくださって、ありがとうございました』
思いがけない感謝の言葉に目を瞬かせる。
セラ嬢は照れくさそうにはにかんだあと、少しだけ眉を下げ、ためらうように視線を伏せながら続けた。
『あと……この前は総司様に酷いことを言ってしまって、ごめんなさい。総司様が遠征でお屋敷を留守にされていた間も、ずっと謝りたいと思っていたんです』
あの日のことが蘇る。
張り詰めてばかりだった彼女が、初めて僕の前で感情を堰き切ったように涙を流した日。
あの時、突き放すような言葉を向けたのは僕も同じだった。
だから小さく首を横に振る。
「謝るのは僕のほうだよ。セラ嬢が一人で苦しんでいたのに、その辛さにちゃんと気づいてあげられなかった。寄り添うどころか傷つけるようなことまで言って、ごめんね」
彼女はすぐに首を振り返し、優しく微笑んだ。
『いいえ。総司様は今、こうしてたくさん気遣ってくださっています。それだけで十分です』
「このくらい当たり前だよ。これからは意地悪ばかり言わないように気をつけるからさ、僕と仲直りしてくれる?」
冗談めかして小さく首を傾げてみせると、セラ嬢は一瞬きょとんと目を丸くし、それから堪えきれなくなったように肩を震わせ、鈴を転がすような笑い声を零した。
『仲直りだなんて、総司様らしくて、とても可愛らしい言い方ですね』
久しぶりに見ることが出来たその無邪気な笑顔を見つめながら、心音を早くした。
……そうか。
セラ嬢をこの屋敷に迎えてからというもの、僕はずっと迷っていた。
乱暴な手段で彼女を手元に置いた僕と、昔のまま彼女に笑いかけたい僕。
そのどちらで接すればいいのか答えが見つからなくて、不器用な距離ばかり作ってしまっていた。
でも、ようやくわかった気がする。
この子に向き合う時だけは、昔の僕に戻ればいい。
アストリアで他愛ない話をして笑い合い、彼女の隣にいられることに何の疑いも抱いていなかった頃の僕に。
何も企んでいないような顔で笑って、穏やかな言葉を紡ぎ、優しさだけを見せていた、あの頃の僕に。
もちろん、本当の僕は違う。
今の僕はあの頃より更にずっと狡くなったし、欲深くもなった。
セラ嬢を手に入れるためなら手段さえ厭わないくらいには、どうしようもなく。
それでも彼女がかつて心を許し好いてくれたのは、そんな思惑を欠片も感じさせない穏やかで毒のない僕だった。
それなら、その僕でいよう。
少なくとも、彼女の前では。
そうしてまた君が笑ってくれるのなら、僕は何度だって昔の自分を演じてみせるよ。
『では、仲直りです』
そう言って彼女がそっと差し出した小さな手を、僕は壊れ物でも扱うように優しく包み込む。
その手はまだ少し冷たかったけど、もう僕を拒むような素振りはなかった。
『おやすみなさい、総司様』
「うん、おやすみ。ゆっくり休んで」
寝室の灯りを淡い明かりだけ残して落としてあげると、彼女は小さく微笑み、そのまま寝具に身体を預けて静かに瞼を閉じた。
僕は執務机に戻って書類に目を通していたけど、静まり返った部屋に、やがて彼女の穏やかで規則正しい寝息が溶け込むように響き始める。
「セラ嬢、もう寝ちゃったの?」
声をかけても返事はなく、セラ嬢は幼い子どものように無防備な寝顔のまま、安らかな眠りに落ちている。
思わず頬が緩み、僕は寝台の傍に歩み寄り、その縁に静かに腰を下ろした。
「よく寝てるね。薬が効いてるのもあるんだろうけど……君は昔から、一度眠ると何があってもなかなか起きなかったよね」
懐かしい記憶が、何の前触れもなく胸によみがえる。
アストリアの庭園で二人きりのピクニックを楽しんでいた時も、気づけば君は僕の膝を枕代わりにして眠ってしまって、あまりにも気持ちよさそうな寝顔だったから起こすのが惜しくなって、そのまま長い時間じっとしていたことがあった。
ヴェルメルの離宮でも、二人並んで眠ってしまい、母たちに苦笑されながら起こされたこともあったっけ。
あの頃から君の寝顔は息を呑むほど愛らしかった。
でも、今こうして穏やかに眠る君を見つめていると、その頃にはなかった艶やかな色香まで宿しているように見えてしまうから困る。
無防備に頬を緩め、細く長い睫毛を伏せたその寝顔は、何も知らないまま僕の理性を甘く試しているようで、思わず苦笑が漏れた。
昨晩と同じように、きめ細やかな頬をそっと撫でる。
親指の腹で柔らかい唇の輪郭をなぞれば、身体の奥底から熱いものがぞくりと湧き上がってくるのを感じた。
昨晩は我慢したけど、今夜は彼女の笑顔を沢山見たせいか、欲張りにもなっている。
もう少しだけ触れたくなって、気づけば僅かに開いた唇の隙間に、人差し指と中指をゆっくりと滑り込ませていた。
歯の間をくぐらせて、潤った舌を優しく撫でると、熱く湿った口内の感触に頭がくらくらと痺れてくるようだった。
無防備に口を開き、僕の指を受け入れている彼女の姿は、まるで甘く舐めているかのように妖艶で、下半身にどくんと重い熱が集まるのを感じる。
「……本当、可愛い」
くちゅりと小さな水音が響き、指先で彼女の小さな舌を優しく絡め取る。
それでも全く起きる気配はなく、この薬の効力に改めて感心しながらも、自分を抑えるのがだんだん辛くなってくる。
指を引き抜くと、彼女の唾液で光る指先が妖艶に輝いていて、僕は迷わずそれを自分の口に含み、味わうように舌を這わせた。
「早く僕のものにしたいな」
僕はコンフォーターを捲ると横たわる小さな身体に身を寄せ、セラ嬢の首筋に顔を埋めた。
ふわりと漂う、甘く優しい花のような香り。
幼い頃から大好きだった、清らかで上品な匂いだ。
深く吸い込むと胸の奥が熱く疼き、もっと彼女の香りを感じたくて堪らなくなってくる。
指先でゆっくりと彼女の寝間着の襟元を緩めると、白い鎖骨が露わになり、僕はそこに鼻を寄せて匂いを嗅いだ。
温かくて、ほのかに甘くて、彼女の体温が指先に伝わってくるだけで、愛おしさが溢れて止まらない。
首筋や肩にキスを落とし、その肌の味を味わうように舌を滑らせた。
「僕のせいで、こんなところまで連れてきてごめんね。でも君がいないと、僕は生きていけないんだよ」
指を滑らせて、彼女の胸の膨らみの輪郭を、布の上から優しくなぞる。
柔らかくて弾力があり、掌にぴったりと収まる感触に、僅かに息が荒くなってしまう。
先端の位置を探るように親指で円を描くと、僅かに硬くなるのを感じて、嬉しくてたまらなかった。
それでも、唇はまだ奪わない。
キスは、彼女が目を覚ましている時までとっておきたい
その代わりに、僕は耳元に唇を寄せて囁いた。
「セラ嬢、好きだよ。僕の命は全部君のためにあるんだから……今夜は少しだけ触らせてね」
僕は彼女の腰に腕を回し、身体を密着させた。
彼女の太ももに自分の熱くなったものを軽く押し当てながら、寝間着の薄い布越しに首筋や胸元、柔らかな腹部を、指と唇で丹念に愛撫していく。
薬で眠り続ける彼女の、無防備で純粋な反応を一つ一つ味わいながら、愛しさと欲望を交互に胸に抱きしめて、大切に慈しむように少しずつ触れていった。
でも、気をつけなければならない。
谷に落ちたときの打撲の痕が、まだ彼女の身体に残っているはずだ。
「乱暴には絶対にしないよ……君の身体を傷つけるなんて、僕にはできないから」
だから、指の動きは極めて優しい。
布の上から、ゆっくりと円を描くように胸を撫で、親指の腹で乳首の位置をそっと探る。
僅かに硬くなった感触を感じ取る度、愛おしさが溢れて、唇を彼女の鎖骨に軽く押し当てる。
匂いを深く吸い込みながら、柔らかい膨らみを優しく揉みしだいた。
「ん……ここ、柔らかいね。僕の手にこんなに馴染むなんて……可愛すぎるよ」
上半身を時間をかけて愛撫する。
左の胸を丁寧に揉み、右の胸に移り、谷間に指を滑り込ませて、布の感触ごと優しく持ち上げるように触れた。
それでも、だんだん我慢ができなくなってくる。
頭ではこんなことは良くないとわかっているのに、下半身が熱く疼いて、彼女の腰や太ももに目が自然と向いてしまっていた。
「……ごめん。ちょっとだけ……下もいいかな」
僕はベッドの上で体勢を変え、彼女の細い脚の間に膝を入れ、そっと脚を広げていった。
抵抗のない柔らかい太ももが左右に開かれていくと、寝間着の裾が捲れ上がり、白く滑らかな肌が月明かりに浮かび上がる。
打撲の薄い痕が太ももの内側にも残っていて、僕はそこに指を這わせ、優しく撫でながらキスをするように唇を寄せた。
「痛かったよね……これからは僕が全部守るから。大丈夫だよ」
脚をさらに大きく開き、彼女の最も秘めやかな場所に顔を近づける。
薄い布一枚を隔てたそこから、ふわりと甘い香りが立ち上ってきた。
「……はあ」
思わずため息のような吐息が漏れた。
石鹸の清潔で優しい匂いと、混じり合う彼女自身の甘く誘うような女の子の匂い。
深く息を吸い込むと、頭の芯がぼうっと痺れて、理性が溶けていくような感覚に襲われる。
「凄くいい匂いがする。ここからこんなに甘い香りがするなんて……夢みたいだ」
僕は鼻をさらに近づけ、布越しにその温もりと湿り気を確かめるように深く香りを吸い込んだ。
甘い蜜のような匂いが、鼻腔いっぱいに広がる。
石鹸の爽やかさと、彼女の身体が自然に発する淫らで愛らしい香りが混ざり合って、たまらない。
「可愛い……ここも、いずれ全部僕のものになるんだよね」
指先で優しく、外側の柔肉を撫でる。
ただ温もりを確かめるように、ゆっくりと円を描き、蜜の気配を感じ取る。
彼女の身体が無意識にわずかに震えるような気がして、僕はますます興奮を抑えきれなくなった。
僕は彼女の太ももに顔を埋め、両脚をさらに大きく広げた状態で固定するように抱きかかえる。
鼻と唇でその秘めやかな場所を愛し、香りを何度も深く吸い込み、舌を伸ばして布越しに優しく舐めた。
甘い味と匂いが混じり合い、僕の下半身は痛いほどに硬く張りつめていた。
それでも、まだ本格的には触れないし布の下の肌は見ない。
キスも、もっと深い繋がりも、彼女を正式に側室に迎えるまではとっておきたい。
今はただ、薬で深く眠る彼女の無防備な身体を、慈しむように時間をかけて隅々まで愛でるだけで十分だ。
そう考えながら、僕は長い時間、指と唇、鼻と舌先で彼女の全てを味わい尽くしていった。
「君がいれば、それだけで僕は幸せなんだ。だからこの身体も、心も、全部、僕に預けてね……」
そう言いながら、僕は彼女の身体を丁寧に撫で、愛情を注ぎ続けた。
欲望を抑えつつ、少しずつ深く触れていくこの時間こそが、今の僕にとっての何よりも至福の時間だった。
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