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それから暫くして、僕が紅茶を淹れると言えば、セラ嬢はいつものように何の疑いもなく微笑んでくれた。
その素直さにつけ込んで紅茶に溶かしたのは、ニコラを眠らせるために入手した効き目の強い睡眠薬。
飲めばたちまち睡魔に襲われ、一度眠りに落ちると数時間は目を覚ますことはない優れものだ。
それを口にしたせいだろう、セラ嬢は見る間に眠たげな表情になり、先程からその瞳もどこかぼんやりしていた。
僕はそんな様子を眺めながら、思わず口元を緩める。
「セラ嬢、眠いの?」
声を掛けると、彼女はふるふると首を横に振った。
それでも眠気は隠せないらしく、何度も瞬きをしている。
先程から窓の外を気にしているところを見ると、ニコラのことが気になっているのだろう。
しばらく外を眺めていた彼女は、やがて眉を下げ、心配そうに僕を見上げた。
『あれから新たに伝達はないのでしょうか?相馬卿がいらっしゃってからもう二時間近く経ちましたよね』
「そうだね。早く見つかってくれるといいんだけど」
『総司様も心配ですよね。他の奥様方も今夜はいらっしゃらないですし、私も一緒に起きて待っていますから』
一生懸命にそう言う彼女の顔には、僕を励まそうとする気持ちが隠しきれず浮かんでいた。
きっと僕がニコラを案じて、一晩中眠らずに伝達を待つと思っているのだろう。
そんな彼女の優しさに、僕は思わず苦笑いを浮かべた。
「セラ嬢は夜更かししたら駄目だよ。もう眠そうだし、今夜は大人しく休みなよ」
『大丈夫です。まだ起きていられますよ』
「とてもそうは見えないけどね。さっきから何度も眠そうに瞬きをしているじゃない」
『そんなことありません』
そう言った直後にも、彼女はゆっくりと瞬きをした。
本人がどれだけ平気なつもりでも、これでは説得力がない。
僕は控えめに笑って、彼女の様子を眺めた。
「じゃあ、一緒に歯でも磨こうか。少し身体を動かせば、目も醒めるかもしれないよ」
以前、彼女が療養のために一週間ほどこの部屋で過ごしていたから、僕の歯ブラシも棚の中に残っている。
素直に頷いたセラ嬢と並んでバスルームに入り、鏡の前でそれぞれ歯を磨いた。
眠気を追い払おうとしているのか、セラ嬢はいつもより少しだけ熱心に歯を磨いている。
その姿が妙に可愛らしく見えて、僕は鏡越しに彼女の様子を眺めていた。
それから再びソファに腰を下ろすと、セラ嬢は今度こそ眠気を隠せなくなったらしく、唇をきゅっと結びながら必死に目を開けていた。
そこまでして起きている必要なんてないのに、本当に律儀な子だ。
「もう寝たら?ニコラのことは僕が対応するから大丈夫だよ」
『それは分かっていますけど……』
「けど?」
僕が静かに続きを促すと、彼女は少しだけ迷うように視線を落としてから、眠そうな瞳で僕を見上げる。
『総司様、一人だと心細いでしょう?ニコラ様がいなくなって、とても心配だと思うんです。それなのに、お仕事を優先させないとならないなんて、とても大変ですよね。私は何もできませんが、せめて一緒にいたら少しは気が紛れるかなって思って。だから、まだ寝ません』
この子は本当に優しい。
僕が何を考えているのかも知らず、ニコラを案じながら僕の心細さまで心配している。
その姿を見ていると、また愛おしさが込み上げて、触れたい衝動が湧き上がった。
「ねえ、昔さ。君が疑ってくれた子守唄があったじゃない。あれ、思い出せなくなっちゃたから、歌ってくれない?」
セラ嬢にそう問いかけてみると、彼女は目を瞬いた後、ふわりと柔らかく微笑んだ。
『いいですよ。でも、少し恥ずかしいですけど』
「聞きたいんだよね。君が歌い終わったら僕も歌うから歌ってよ」
セラ嬢はくすりと笑って頷くと、一つ小さな咳払いをしてから、愛らしい声で歌い始めた。
『ねえ、もう泣かなくていいよ。夜がこわい時は、わたしがそばにいるから。涙がこぼれてしまう日は全部、わたしがあたためてあげる。だから今日は、おやすみ。優しい朝が来るまで』
懐かしいな……。
セラ嬢と会えなくなって、眠れない夜が続いていた頃、この子守唄が聴きたいと何度思ったことだろう。
自分で歌おうにもメロディーが思い出せなくて、ずっとやきもきしていた。
それが今、こうして彼女が僕のために歌ってくれているなんて、どれほど幸せなんだろう。
『ねえ、もうひとりじゃないよ。夜がさみしい時は、わたしがそばにいるから。辛いことがあた日はずっと、わたしが手をつないであげる。だから今日は、おやすみ。優しい朝が来るまで』
歌い終えたセラ嬢は照れくさそうに僕をちらりと見上げた。
『思い出しましたか?』
「うん、思い出した。ずっと気になってたから良かったよ」
『ふふ、そうだったんですね。これからは忘れないでくださいね』
「勿論、と言いたいところだけど、僕はまた忘れちゃうかもしれないからさ。また忘れたらセラ嬢が歌ってよ」
セラ嬢からは返事こそなかったけど、肯定するように笑顔を見せてくれる。
そんな彼女に、僕もその子守唄を歌ってみることにした。
「ねえ、もう泣かなくていいよ。夜がこわい時は、僕がそばにいるから。涙がこぼれてしまう日は全部、僕があたためてあげる。だから今日は、おやすみ。優しい朝が来るまで」
ゆっくり、優しく。
セラ嬢を想う気持ちを込めて。
ぼんやり聞いているセラ嬢の瞳は段々と虚ろになり、瞬きもゆっくりになっている。
「ねえ、もうひとりじゃないよ。夜がさみしい時は、僕がそばにいるから。辛いことがあった日はずっと、僕が手をつないであげる。だから今日は、おやすみ。優しい朝が来るまで」
二番まで歌い終えた頃、もうセラ嬢の瞳は閉じられていた。
ソファーに座って背もたれに身体を預けたまま、安らかな寝息を立てている。
そっとその身体を引き寄せ、自分の腕の中にもたれかからせてみても、起きる気配はまるでなかった。
「僕のために起きててくれてありがとう。ゆっくり寝てね」
伸ばした指先は、セラ嬢の薄桃色の唇を優しく撫でる。
閉じたその部分を親指で割るように開かせると、その寝顔はあどけなくも見えてとても可愛い。
僕の腕の中でその寝顔を惜しみなく晒して眠る姿は無防備で、僕は口元が緩んでしまうのを止められなかった。
「可愛いな……」
寝顔は幼い頃からあまり変わっていない。
我慢出来ずに顔を近付け、小さな唇にそっとキスをした。
最初の頃は我慢してたけど、この前一度触れてしまってから、この気持ちを抑えられない。
優しく唇を重ねたまま、舌先で柔らかい内側をゆっくりと嘗め、潤った口内を探ると、微かに吐息が漏れた気がした。
「……はぁ」
彼女の小さい舌先が僕のに触れると、背筋をぞくりと熱いものが駆け上がり、抑えきれないほど、気持ちが高まっていくのが自分でもわかった。
僕はキスをしながら、もう片方の手で彼女のナイトドレスの裾をそっとまくり上げ、薄い下着に指先を滑らせる。
布地を優しくずらすと、すでに少し熱を帯びた感触が指に伝わってきた。
『……ん……』
耳たぶに唇を寄せ、優しく吸い上げながら、手をさらに下に這わせる。
指先や唇に伝わるぬくもりだけで、頭の中がくらくらするほど興奮してしまった。
僕の右手は太腿の内側をゆっくり撫でたあと、愛液を指に絡めながら、敏感な花芽を円を描くように丁寧に可愛がる。
するとセラの太ももが微かに震えるから、その反応が嬉しくて鼓動がますます速くなった。
こんなに敏感に応えてくれるなんて、たまらない。
僕は再び深く長いキスを重ね、舌をゆっくりと絡めながら、花芽を優しく摘まんだり、指の腹で擦ったりを繰り返す。
口内で彼女の舌が触れるたび、背中に甘い戦慄が走った。
『ふぁ……』
指を一本、熱い膣内へゆっくりと優しく沈めていくと、内壁がきゅうっと締め付けてきて、指を歓迎するように絡みついてくる。
その締め付けがたまらなく愛おしくて、指を出し入れするたびに喉がなった。
親指で花芽を優しく擦りながら、中を優しく擦るように動かし、特に敏感そうな場所を重点的に撫で続ける。
胸元のナイトドレスをはだけさせ、片方の先端を下着の上から口に含むと、セラ嬢の身体がぴくりと反応した。
「結婚したら、僕が毎晩可愛がってあげるからね」
囁きながら愛撫を続けていくと、彼女の唇がわずかに開き、薄い舌先が覗いた。
果てそうな顔があまりにも可愛すぎて、興奮が頂点に達して、息が詰まりそうだった。
「……はあ、可愛い」
僕はすぐに彼女の唇に深くキスを落とし、舌を絡め、息を奪うように深く口づける。
その間も指は止まらず、膣内を執拗に撫で、花芽を親指で擦り続けた。
抑えきれなくなった甘い声が唇の隙間から漏れ、内部が激しく脈打ち始めると、愛液が指を伝って溢れ出してくる。
そして腕の中の身体がびくびくと小さく痙攣を繰り返し、頬を紅潮させてて果ててしまった。
こんなに可愛く感じてくれて、こんなにびくびくして。
その妖艶な姿を目の前で見てしまうと、胸の奥が熱くてたまらなかった。
「大好きだよ、セラ嬢」
静かに目を閉じたままのセラの耳元で囁きながら、僕は彼女を抱き寄せた。
まだ余韻に震える身体を、ゆっくりと、愛情を込めて撫で続ける。
指先に残る熱とぬくもりが、いつまでも僕を高ぶらせていた。
「ベッドに行こうか」
セラ嬢を腕に抱えたままソファーから立ち上がり、小さな身体を寝台の上にそっと寝かせる。
明かりを僅かに落とし、僕もその隣に横たわると、静かな時間の中で彼女の温もりを感じながら、その後も二人で過ごすひとときをゆっくりと堪能していた。
自分が良くないことをしているという自覚くらいはある。でも、それで今さら思い直すほど僕は聞き分けのいい人間じゃない。
それに最初から決めていた。
必要ならどんな手段を使ってでもこの子を僕のものにする。
欲しいものを目の前にして善人でいるつもりはなかった。
それにこうしてセラ嬢を腕の中に抱いていると、荒んだ僕の心が不思議なほど静かになっていく。
彼女に触れている時だけは、胸の奥に澱んだものさえ、少しずつ溶けていくように感じられる。
僕にとってこの子はもう、それほどまでに必要な存在なんだ。
だから僕は何も言わず、ただセラ嬢の身体をそっと腕の中に抱きしめ続けた。
この温もりを手放したくないと思いながら。
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