3
セラ嬢の部屋に辿り着くと、扉の前でエイミーが丁寧にドアノブを拭いていた。
今日最後の仕事を片付けているところだったらしく、僕に気付くなり、彼女は慌てて深く頭を下げた。
「閣下、お疲れ様でございます」
「お疲れ様。セラ嬢は、もしかしてもう寝ちゃった?」
「はい。お休みになられております。ただ、まだ寝台に入られてから然程時間が経っておりませんので、起きていらっしゃるかもしれません。確認してまいりましょうか?」
「いや、いいよ。僕が少し様子を見るから、君はもう下がって。もし眠っていたら、起こさないですぐに出て行くから」
「かしこまりました」
素直に頷いたエイミーを見てから、ふと思い出したように尋ねる。
「それより、セラ嬢の体調はどう?葬儀の最中、少し辛そうに見えたんだけど」
そう告げると、エイミーはわずかに眉を下げ、心配そうな顔で頷いた。
「お身体にお変わりはないようでした。ただ今日はいつもより元気がないように感じられました。お食事はきちんと召し上がってはいましたけど、どこか心ここにあらずといったご様子で……。恐らく、今回のことで胸を痛めていらっしゃるのかもしれません」
「……そう、わかったよ。教えてくれてありがとう。じゃあ、明日からもセラ嬢のことをよろしく頼むね」
「はい。お任せくださいませ」
もう一度頭を下げたエイミーが廊下の向こうに姿を消すのを見届けてから、僕はゆっくり扉を開いた。
室内は静かで、いくつか灯された燭台の明かりだけが、広い部屋を淡く照らしている。
いつもならソファーに腰掛けていたり、テーブルの椅子に座っていたりするセラ嬢の姿はどこにもなかった。
僕は足音を忍ばせながら、部屋の奥にある寝室まで進んでいく。
開いたままになっている扉の前まで来たところで、ふいにかすかな声が耳に届いた。
『……っ、ぅ……』
それは、懸命に声を押し殺しているような泣き声だった。
寝台の中で小さな身体を丸め、こちらに背を向けたまま、セラ嬢が静かに泣いている。その理由がわからず、どんな言葉をかければいいのかすぐには思いつかないまま、僕はしばらくその姿を見つめていた。
何かあったのなら、エイミーから僕に報告があるはずだ。
それに今日の葬儀でも彼女の様子はどこかおかしかったし、ニコラの死が原因で涙を流すとも思い難い。
僕は涙の理由を考えながら、寝台の傍まで歩み寄った。
「どうしたの?」
僕が頭に手を置いた瞬間、セラ嬢の身体がびくりと震えた。
そして驚いたように勢いよく振り返り、涙に濡れた顔で僕を見上げる。
『……総司様……?』
「ごめんね、勝手に入って。部屋の外でエイミーと会ってさ。寝台に入ったばかりだからまだ起きてるかもしれないって聞いて、様子を見に来たんだ。どうして泣いてるの?」
できるだけいつもと変わらない声音で尋ねながら、僕は寝台の端に腰を下ろした。
するとセラ嬢も戸惑ったように身体を起こし、涙を拭った後、遠慮がちに僕を見上げた。
『気にかけてくださって、ありがとうございます。でも……今は総司様の方がお辛いのではありませんか?ニコラ様のこと、本当に心苦しく思っています。心からお悔やみ申し上げます』
セラ嬢の反応も、当たり前だけど周囲の人間と同じだった。
側室であるニコラが亡くなり、少なからず僕が心を傷めていると思っているのだろう。
どう言葉を返そうか迷いながらも、セラ嬢以外の女性を大事にしているとは思われたくなくて、あっさりと告げることにした。
「ニコラのことは、気の毒だったとは思うよ。あんな形で命を落とすのは、本人も本意ではなかっただろうし、残念だよね。でも僕は別に落ち込んでいるわけじゃないから大丈夫だよ」
セラ嬢は僕を見上げながら言葉を選んでいる様子だったから、彼女が話し出す前に再び言葉を続けた。
「それより、今は君のことが気になるんだけど」
『私は大丈夫です。少し考え事をしていただけですから、なんでもありませんよ』
そう言って、セラ嬢はいつものように微笑んだ。
だけどその笑顔がいつもと同じものではないことくらい、僕にはわかる。
横暴だと思われたとしても、このまま理由を聞かずに済ませる気にはなれなくて、僕は少しだけ声を落として尋ねた。
「もしかして、ユフィ夫人のことを思い出したの?」
その名を口にした途端、セラ嬢の瞳が大きく見開かれた。
その反応だけで、答えを聞く必要はなかった。
ユフィ夫人も馬車を襲われ、暴漢たちの手にかかって亡くなったと聞いている。
ニコラの時と同じように遺体の損傷が激しく、棺の蓋すら開けられなかったのかもしれない。
そう考えれば葬儀の場でニコラの親族から話を聞いた時、セラ嬢の表情が強張っていた理由も腑に落ちた。
「僕がユフィ夫人のことを口にしていいのか、ずっと迷ってたんだ。君にとっては辛い話だろうし、僕の方から簡単に触れていい話じゃないだろうなって。でも君が一番辛かった時に、僕は何もしてあげられなかったからさ。今さらこんなことを言うのもどうかと思うけど、あの時……何もしてあげられなくてごめんね」
今でも後悔しているのかもしれない。
あの時、何もかも振り切ってでもセラ嬢に会いに行けばよかったって。
あの頃の僕にはまだ力もなかったし、ただ自分の感情を押し殺して耐えることしか出来なかった。
それに、それだけが理由だったわけじゃない。
僕はもう一度この子に拒まれることを恐れていたのだと思う。
アストリアで僕の叫びに背を向けたセラ嬢の姿は、今も鮮明に心に残っている。
思い出すたび、胸の奥を強く締めつけられるようだった。
あの恐怖に負けず、あの時の僕がもう一度彼女に手を伸ばしていたら、何かが変わっていたのかもしれないと考えてしまうことが今でもある。
しばらく黙って僕を見つめていたセラ嬢は、やがて震える唇をきゅっと噛み締めた。
そして涙をこらえるように俯きながら、震える声を絞り出すように言った。
『……どうして総司様が謝るのですか?』
薄明かりに照らされた大きな瞳には、今にも零れ落ちそうな涙が溜まっていた。
『総司様こそとても辛い思いをされたはずです。アンナ夫人のことも、ご家族のことも……そしてニコラ様のことも。それなのに私のことを心配してくださって、私のために謝ってくださるなんて、総司様は……お優しすぎます』
セラ嬢は昔から、僕を優しい人間だと言う。
幼い頃なら、確かにそうだったのかもしれない。
この子に牙を向く理由なんて何一つなかったし、優しい人が好きだと言っていた彼女に、少しでも好いてもらいたくて、僕なりに優しくあろうとしていた。
でも今の僕がそんな人間ではないことくらい、自分自身が一番よく知っている。
セラ嬢を故郷から遠ざけ、この屋敷に留めているのも、ニコラの命を奪ったのも、他の誰でもない僕自身だからだ。
だから優しいだなんて……そんな言葉はかけて欲しくない。
その癖、彼女にだけは優しい自分でありたいと思ってしまう自分がいる。
「僕は優しい人間なんかじゃないって何度も言ってるでしょ。もし本当にそうなら、君はここに連れて来られてない筈だからね」
優しいと言われるたびに、僕の中では別の自分が顔を覗かせる。
お前がそんな人間のふりをしていられるのも今だけだと、仮面の下に隠した醜い自分が嘲笑う。
いつかそれが剥がれ落ちた時、この子はきっと僕を見る目を変える。
僕の本当の姿を知れば、今度こそ僕を心から憎むかもしれない。
それが怖いから、僕は今日も穏やかで優しい人間のふりをする。
実際はセラ嬢のことが大切で失えないからこそ、僕はただ優しいだけの人間ではいられなかった。
『総司様は、いつもそう仰いますね。ですが……どんな時も誰に対しても優しい人なんて、きっとこの世界にいないと思うんです。それは私だって同じです』
セラ嬢はそう言って、少しだけ困ったように笑った。
『それに私の隣にいてくださる時の総司様は、いつも優しいです。総司様が私にかけてくださる言葉や、さりげなく気遣ってくださることに、私は何度も救われています。ですから、私がそう思う気持ちは、総司様がどんなふうに仰っても変わりません』
僕が何を隠しているのかも、これまで何をしてきたのかも、セラ嬢はすべてを知っているわけじゃない。
それでも彼女は僕がいつでも温厚で、誰にでも優しく出来る人間だと思っているわけではないのだろう。
きっと今の僕が、幼い頃とは違う人間になっていることも、彼女なりに感じ取っている。
それなのに、僕が自分に向ける言葉や気遣いまで偽りだとは思わないでいてくれる。
そのことに気付いた瞬間、胸の奥を掴まれたように苦しくなった。
僕は、いつか本当の自分を知られて憎まれることを恐れていた。
だけどそれ以上に辛いのは、僕が彼女に向けているこの気持ちまで偽物だと思われることだった。
優しくするのも、気遣うのも、護りたいと思うのも、ただ自分をよく見せるためだけの偽善だと受け取られることだけはどうしても耐えられない。
どんなに歪んでしまっていたとしても、他人に理解されなくても、この想いは本物だからだ。
でもセラ嬢は優しくない部分を含めた僕を知りながら、それでも僕が彼女に向けているものだけは本物なのだと、まっすぐ信じてくれている。
……それが、たまらなく嬉しかった。
「……そっか」
こんなにも好きなのに、今もなお、彼女を愛おしく思う気持ちは深くなるばかりだった。
昔から何一つ変わらない自分に、思わず苦笑してしまう。
それでも今の僕を知った上で、こんなにもまっすぐ信じてくれる彼女を見ていると、あの頃より強くこの子だけは失いたくないと思ってしまう。
胸を締めつけるような苦しささえ、不思議と幸福に思えた。
「君がそう思ってくれてるなら、僕が何を言っても無駄みたいだね」
僕がどんな人間でも、君に向けた気持ちだけは嘘じゃない。
それを君はちゃんと信じてくれている。
それだけで今は十分だと思えた。
『そうですよ。それに、私の方が申し訳ない気持ちでいっぱいです。私があの時、総司様の言葉に耳を傾けていればって、何度も後悔しました。謝っても、もう時間は戻ってくれないですけど……本当にごめんなさい』
最後の方は声が震え、セラ嬢は溢れた涙を隠すように手で拭って顔を俯かせた。
あの時のことを思い出せばまだ胸が痛むけど、セラ嬢は今よりずっと幼なかった。
あの日の彼女を恨んでなんていないからこそ、僕は取り出したハンカチをそっと彼女の頬にあてた。
「謝らなくていいって前にも言ったでしょ。気にしなくていいんだよ、そんなこと」
幼い頃、すぐ泣いてしまうセラ嬢の涙をこうしてよくハンカチで拭いてあげていた。
そうすると大きな目をぱちりと見開いて、嬉しそうに笑ってくれるあの時のセラ嬢を思い出した。
あの涙いっぱいの瞳で、甘えるように僕を見上げてくる様子が可愛くて堪らなくて。
悲しませたくないのに、まだこの子の涙を見ていたいと考えてしまう歪んだ自分に苦い気持ちになっていた幼い時の日々が蘇る。
そして目の前にいるセラ嬢も、昔を思い出したんだろう。
幼い頃のように目を瞬かせると、少し照れくさそうにはにかんだ。
『昔もよくこうして慰めてもらってましたね』
「成長した今も泣き虫なところは変わらないんだから、困った子だよね」
『今は泣き虫ではありません。私はしっかり者ですから』
「自分で言っちゃうところが怪しいと思うんだけど」
互いに少し笑い、寝室には穏やかな空気が流れる。
こうして二人で過ごしている、とまるであの頃に時間が巻き戻ったように感じてしまうのに、今は決して手を伸ばせない。
あと少しの距離が、とてももどかしかった。
『先程泣いてしまったのは、母のことを思い出したこともそうなんですけど、あの時の気持ちまで思い出してしまったんです。あの頃の私は、何が起こったのかをすぐには受け止めきれなくて……母の死は勿論、総司様とお会い出来なくなることも本当に悲しかったですし、アンナ夫人のことも……正直に言えば、私はアンナ夫人があの事件に関わっているとは、どうしても思えなかったんです』
初めて聞く、あの頃の彼女の胸の内だった。
僕は何も言葉を挟まず、ただ静かに耳を傾ける。
セラ嬢は一度だけ目元を伏せ、それから自分の中に残っていた記憶を確かめるように、ゆっくりと言葉を続けた。
『何度も再調査をお願いしました。けれど、アストリア騎士団も王立騎士団も、出す結論は変わらないままで……何が真実なのかもわからないまま、私は被害者の遺族として、総司様は加害者の遺族として、周りから扱われるようになりました。そうなると、私も声を大にして総司様を庇うことが出来なくなってしまって……心では違うのにって思っていることでも、否定しないまま聞いているだけの自分になっていて……』
頬を伝った涙を、彼女は慌てたように指先で拭った。
その仕草も途切れがちな声も、僕には建前には見えなかった。
僕はあの頃、セラ嬢に簡単に切り捨てられたのだと思っていた。
だけど、もしかするとそれだけではなかったのかもしれない。
あの時、彼女もまた胸を傷めながら、僕のことを想っていたのではないか。
そんな都合のいい期待が、頭に浮かんできてしまう。
それでも僕の手元には、今も捨てられずにいる彼女からの最後の手紙がある。
何度読み返しても、そこに残されているのは未来を望まない別れの言葉だけだ。
そして僕が学院に潜入した際、僕のことを思い出したくないと言っていた、この子の姿も覚えている。
疑いようのない事実と、今聞いた言葉との間にある矛盾が、また胸の奥を締めつける。
セラ嬢を疑いたいわけではないのに、今の僕には幼い頃のように何の疑いもなくこの子を信じることは出来なかった。
「僕も、母が計画したものだとは思えなかったんだ。最後まで否定していたし、母はとにかく僕の未来が輝かしいものになることを願っていたからね。あの人は素直じゃないから、僕にも本当のところはよくわからなかった。ずっと、自分の未来を良くするために僕を利用しているんだと思っていたくらいだよ。でも、最後に僕の立場を護るため、自分の命まで捨てて毒殺事件を起こしたことで、少しだけわかったんだ。僕が思っていたより、あの人は僕のことを、それなりに大事に思っていたのかもしれないってね。君との婚約が決まった時なんて、本当に嬉しそうにしていたし、そんな母がわざわざ自分でそれを壊すようなことをするとは、今でも思えないんだけどね」
ここまでただがむしゃらに走り続けてきたせいか、母のことを思い出す機会は、いつの間にか少なくなっていた。
最後に鮮明に思い浮かべたのは、僕が帝国の剣として叙任された日のことだったように思う。
「でも、母がやっていないという証拠もない。他に疑いを向けられていた者もいなかったし、挙げ句の果てに母自身が毒殺事件を起こしたものだから、もう弁明の余地なんて残されていなかった。僕自身も、それを受け入れて前に進むしかないと思ったんだ。それからは自分の立場を固めるだけで精一杯だったし、毎日が忙しくて、いつまでも落ち込んでいる暇もなかったしね。だから君が気に病む必要はないよ。君だって、君自身の立場の中で苦しんでいたとおもつし、それぞれに背負うものがある以上、あの時のことは仕方のないことだったんだよ」
これが、きっと模範的な答えなのだろう。
実際、半分は本心だった。
僕はそうやって自分自身を納得させ、あの日から今日まで歩いてきたんだから。
ただ残りの半分には、あの頃から消えずにいるやりきれなさと、セラ嬢への未練が今も醜いほど絡みついている。
それだけは、この子に悟らせるわけにはいかなかった。
『ありがとうございます。私が気にしないように、そう言ってくださって。それに、アンナ夫人がヴェルメルで事件を起こした理由を聞いて、少し納得しました。アンナ夫人は総司様を、とても愛してらっしゃったんですね』
「どうかな。僕には、そう思えない時のほうが多かったけどね。母の愛情なんてものとは、ほとんど無縁に生きてきたつもりだったし。それなのに最後だけはまるで違っていたから、僕にもあの人が何を考えていたのか今ひとつわからなくてさ」
『愛し方って、人によってきっと違うんだと思います。誰かを大切に思っていても、その気持ちを素直な言葉や優しい態度で伝えられる人ばかりではありませんから。アンナ夫人も、きっと総司様には伝わりにくい形でしか、想いを示せなかったのかもしれません。けれど最後に自分の命まで懸けたのなら、少なくとも総司様を大切に思っていた気持ちだけは、本当だったのではないでしょうか』
彼女はそう言って、静かに微笑んだ。
その顔を見ていると、心に沈めていたものまで揺さぶられる。
この子は昔から、人の気持ちを自分の物差しだけで決めつけない。
たとえ理解出来ない愛情であっても、その奥にある想いまで否定しようとはしないその言葉が心に温かく響いた。
「君らしいね。確かに人の気持ちなんて、傍から見ただけじゃ全部わかるものでもないのかもしれないね。どれだけ近くにいる相手だって、胸の中まですべて覗けるわけじゃないし」
もし本当に人の愛し方がそれぞれ違うのだとしたら、あの頃の君が僕に向けていた想いも、僕が知らなかっただけなのだろうか。
あの日、僕には別れを告げるしかなかった君の胸の中にも、僕と同じように失いたくないという気持ちがあったのだろうか。
そしてもし君が今の僕を知ったなら、僕が誰にも見せずに抱えている、少し歪んだ愛情さえも、君は人それぞれの愛し方のひとつとして受け止めてくれるのだろうか。
そんな答えの出ない問いを、僕は心の中に静かに沈めた。
『そうですね。だからこそ、今まで色々なことがありましたけど……私は帝国に来て良かったです。総司様と、またこうしてお話出来ましたから』
「僕もだよ」
それ以上は何も言わなかった。
本当ならもっと伝えたいことはあるけど、今は言葉には出来なかった。
「随分と長く話し込んじゃったね。君も疲れただろうし、今日はもう休んだほうがいいよ。色々と思い出すことがあっただろうからね」
そう言って立ち上がりかけると、セラ嬢が小さく頷いた。
『はい。総司様もゆっくり休まれてください。あと、ありがとうございました。こんなに話を聞いてくださって……少し心が軽くなりました』
「それなら良かった。僕に出来ることなんて、このくらいだからね」
今夜、君から聞いた言葉を、僕はきっと忘れない。
あの頃の君が何を思っていたのか、そのすべてを知ることは出来ないけど、あの時のことをこうして君と向き合い、言葉を交わせたことだけは、素直に喜んでもいいのだろう。
「おやすみ、セラ嬢。今夜はもう、何も考えずに眠りなよ」
『はい。おやすみなさい、総司様』
静かな声に見送られ、僕は微笑んだ。
扉を閉じる直前まで、その姿を目に焼きつけるように見つめていたことを、きっと彼女は知らないだろう。
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