夜空に月が出なくなって何日か過ぎた。
朝。
金髪のウェーブのかかった髪を纏め、メイド服を着るマリア。
マリアはファントムハイヴ邸のメイドとして働く事になった。
朝礼の時間
セバスチャンが使用人達に指示を出している。
メイリンの横で立っているマリア。
「ではメイリンとマリアは…」
ふらつくマリア。
セバスチャンはマリアを受け止める。
「だ、大丈夫ですだ?」
「貧血でしょう。私は看病致しますので皆さんは仕事を」
真っ暗な夜になる。
自室にて目を覚ますマリア
「ふあ…」
欠伸をして手をぐんと伸ばすマリア
「目覚めましたか?」
「はい…今日もごめんなさい」
「大丈夫ですよ」
月の女神のマリアは、朝は眠り、月が出る頃に目覚めて活動していた為に、朝は起きられないのだ
「マリアさん、夕食ですよ」
マリアの元へまかないが運ばれる。
「まぁ、可愛い!いただきます!」
旗の立てられた可愛らしいオムライスをパクパク食べるマリア
「セバスチャンのまかないはどれも美味しいわね!」
笑顔のマリア
セバスチャンは美味しそうに食べるマリアをじっと眺めている。
「明日はちゃんと起きますからね」
マリアは宣言した。
次の日。
なんとか朝起きて仕事をするマリア
階段の手すりを一生懸命磨く…?
そこへセバスチャンがやってくる。
「マリアさん、これは…」
階段の手すりは真っ黒になっている。
「メイリンに教えてもらって階段を磨いたのですが…」
「これは靴に塗る靴墨で、手すりに塗るのはワックスですよ」
「ご、ごめんなさい…」
泣きそうになるマリア
「私が直しておきますから、貴女は顔を洗ってきなさい」
洗面台で靴墨のついた自分の顔を見て深いため息をつくが、気を入れ替えなきゃ
と靴墨のついた顔を洗って頬パシパシと軽く叩いた。
今日はフィニ、メイリン、バルド、スネークとまかないを食べる。
「マリア、どうしたんだ食わないのか?」
バルドがマリアに声をかける。
「いただきますわ」
イマイチ元気のないマリア
階段の手すりに靴墨を塗るミスをした事を気にしていた。
真夜中
明かりの灯る台所へ向かうマリア
そこには食器を洗うセバスチャンが居た。
「マリアさん、冷えますよ」
「気付いたのね…私も手伝うわ」
「大丈夫ですよ」
「…手伝わせて!」
セバスチャンが洗い終わった食器を拭くマリア
二人の間には無言が続き淡々と作業をしている。
マリアはただセバスチャンの隣に居るだけで幸せだった。
次の日。
台所からバーンと爆発音がする。
セバスチャンがバルドだろうと呆れ顔で台所に行くと、ぐちゃぐちゃになった台所に埃まみれのマリアが一人居た。
「マリアさん、これは?」
「バルドに料理を習ったのだけど…」
「バルドさんのは料理ではありません。後は私が片付けますから、マリアさんは顔を洗って来て下さい」
呆れ顔のセバスチャン。
ふとマリアを見ると、目から涙が零れて居た。
「…ごめんなさい…」
台所から走り出すマリア
また次の日。
使用人達と朝礼をするセバスチャン。
「今日は食材の買い出しへ行きます」
使用人達は各自、自分達の仕事をする。
マリアの姿が見えない。
「メイリン、マリアさんは?」
「知らないですだ」
「フィニ、マリアさんは?」
「知らないです」
「バルドさん、マリアさんは?」
「知らねーな」
「スネーク、マリアさんを知りませんか?」
「買い出しに行ってくるわって言ってたってエミリーが言ってる…」
その頃、時計店から出てくるマリア
今度は宝石店へ入り、しばらくすると宝石店から出てくる。
本屋、雑貨屋、仕立て屋から出たり入ったりを繰り返す。
「食材はどこにあるのかしら…」
眼鏡屋の前で首を傾げるマリア
するとそこにセバスチャンがやってくる。
「マリアさん、探しましたよ」
「セバスチャン!食材ってなかなか売ってないのね」
マリアの手をひくセバスチャン
「食材はこちらですよ」
二人はロンドンの街並みを
どっさりと食材を買い、ファントムハイヴ邸へ戻る二人。
その日の真夜中。
マリアは眠れず、空を見ていた。
もちろん夜空を照らす月はなく星だけ。
またセバスチャンに迷惑をかけてしまった。
呆れ顔のセバスチャンが頭をよぎってマリアの目からは涙が零れる。
コンコン…
マリアの部屋のドアをノックする音がした。
「はい…」
そこにはセバスチャンが居た。
「マリアさん、入りますよ」
「セバスチャン?」
「不用心ですよ、レディがすぐにドアを開けるなんて」
「ごめんなさい…」
しょんぼりするマリア
「セバスチャン…」
「全く…使用人達以上に手がかかりますね、マリアさんは」
セバスチャンはマリアをベッドに座らせると自分もマリアの隣に座る。
「ごめんなさい…階段の手すりに靴墨を塗ったり、台所を爆発させたり…今日も勝手に…」
マリアは涙を零しながらセバスチャンに言った。
セバスチャンは人差し指をマリアの口元に当てた。
「shh…構いませんよ、階段の手すりに靴墨を塗ろうとも台所を爆発させても。ただし…」
「…ただし…?」
「ただし…今日のように勝手に行動しないで下さい。いや、私から離れないで下さい」
「マリアさんは月の女神。私などでよろしいのですか?」
悪魔が牙を見せて言う。
「前にも言ったじゃない、月からずっとセバスチャンを見ていたって…悪魔でも構わないわ…」
「月の女神と悪魔の恋も、楽しそうですね」
セバスチャンは牙を見せて微笑む。
マリアはセバスチャンの耳元でそっと囁いた「愛してるわ…セバスチャン」
悪魔も、美しさ月の女神には心奪われてしまったようです。