「薔薇の花は如何ですか?」
人間界で魂の回収をしてるアタシに話しかけて来たフラワーショップのオンナ。
ハッキリ言って地味なオンナ。
「買うワ」
アタシに薔薇が似合うと勧めて来た。
それが出逢い。
それが始まり。
アタシはそれまで人間に特に興味なかったのヨ。
でも飾らない所とか、控え目な所とか気付いたら惹かれて…
気付いたらアンタのコトで頭がイッパイになったのヨ。
ウィルが好きだったのにそれ以上にアンタが好きになって…
「マリア、アンタアタシと付き合ってヨ」
「グレルは男の人が好きなんじゃ?」
「恋愛対象がマリアに変わったのヨ!」
アタシ達は恋人になった。半年位経って、アタシは死神派遣協会男子寮を出た。
そしてマリアと赤い屋根のアパートを借りて、一緒に住み始めた。
マリアは天涯孤独。
だから一緒になりたかった。
家族になりたかった。
でも、なれない。
だからせめて一緒に住もうってアタシが言った。
マリアはアタシのお仕事について、最初は信じてくれなかったけど、死神界に連れて行ったら理解してくれた。
毎朝マリアはお弁当を作ってアタシに持たせてくれたのヨ。
「先輩今日も愛妻弁当っスか?いいっスネ」
「ンフッ!世界一の愛妻弁当ヨ」
アタシの自慢だった。
「グレル、どうぞ」
マリアはアタシに真っ赤な薔薇の花束をくれた。
「ねぇマリア、こういうのって普通オトコがオンナにあげるんじゃないノ?」
「だってグレル可愛いから」
ニコニコしてるマリアの方が可愛いワヨ。
毎日毎日幸せと言う花でイッパイだったワ。
でも幸せは続かない。
幸せは逃げて行く…
あの花はいつか散る…
死亡予定者リストにマリアの名前を見つけてしまった…
自分が死神なのがこんなに嫌だと思った事は初めて。
悔しくて辛くて悲しくて涙が止まらなかった。
でも言えない。
アタシはその日が来るまで笑った。
楽しい日々を演じ続けた。
運命の日。
マリアは馬車にぶつかりそうになった子供を庇って命を落とした。
あっけなかった。
涙でイッパイになってもアタシは仕事しなきゃイケナイ。
グレルはデスサイズを使用し、マリアのシネマティックレコードを見る。
涙が止まらない。
涙のせいでよく見えなかったワ。
それから葬儀屋に頼んで最高のベッドと布団を作って貰ってアタシはマリアを見送った。
アタシはアンタと暮らしたアパートを引き払って、死神派遣協会男子寮へ戻った。
悲しくなるから、マリアの品物も、全て処分したワ。
いつもの朝
グレルは「行ってきます」と言って仕事へ向かった。
テーブルの上にある瓶。
瓶の中にはドライフラワー。
マリアがグレルへ送った薔薇の花束は、薔薇のドライフラワーとなってグレルの手元へ置いてあった。
最愛の貴方へ送った花束は、最愛の貴女と過ごした日々を閉じ込めたドライフラワーに。
永遠にそのままで。
アタシに楽しかった日々をありがとう。