「ウィル〜!」
ウィリアムに向かって駆け出すトランクを持ったブルーのドレスを纏ったレディ。
人目も気にせずウィリアムに抱きつく。
「ひ、人が居ます」
ウィリアムは慌ててマリアと離れる。
「いいじゃない!だって私はウィルが大好きなんだもん」
にっこり笑ってウィリアムの腕に絡みつくマリア
『よいしょ…』
背伸びをして本棚の上の方に手を伸ばすマリア
『どうぞ』
マリアが取ろうとしていた本を取って渡すウィリアム。
『届かなくて困ってたの。ありがとう!』
本来私は人間に興味はないのに
『あの作家さんの新作はもう読んだ?』
『私のおすすめの推理小説、貸してあげる』
『この本ウィルが好きそうだから買ったの。あげる!』
屈託のない笑顔で目を輝かせながら、好きな作家や本の話を一生懸命私にする貴女に惹かれてしまった。
『私と交際していただけませんか?』
私は生まれて初めて人間に交際を申し込んだ。
『死神?』
『えぇ。これはデスサイズと言います。こちらで魂を刈ります』
ウィリアムのデスサイズを持つマリア
トントントン…
マリアを抱きかかえて屋根から屋根へと飛び移る。
『凄い!凄い!』
また屈託のない笑顔を見せるマリア。
私は、もっと貴女の事を好きになる。
『今度ウィルのお家にお泊まりしたい!』
『駄目です』
『どうして?』
『嫁入り前のレディが不純ですから』
眼鏡を掛け直すウィリアム。
『じゃあ私ウィルの所にお嫁に行く!』
黙るウィリアム。
『ウィルは私の事嫌い?』
泣き出しそうになるマリア。
私マリアを自宅に泊める事になってしまった。
そして今日に至る。
マリアのトランクを持ったウィリアムは自室にマリアを招き入れる。
「綺麗なお部屋ね」
「ありがとうございます」
用意していたケーキを出し、紅茶を注ぎマリアに差し出す。
「いただきまふ…おいひい!」
「喜んでいただけて良かったです」
ウィリアムは笑う。
彼女を見ていると私は自然と笑顔になれる。
「ケーキ食べ終わったらお散歩したい!」
死神界を歩くウィリアムとマリア。
「私眼鏡嫌!」
「人間だとバレたらマズいですので外さないで下さい」
「しょうがないなぁ…死神界って私の居る世界と変わらないんだね」
「ええ、ほぼ一緒です」
死神界の本屋に寄ったり、ぶらぶら探索し、ウィリアムの自室に戻った。
「ウィル、お散歩したらお腹すいたよ〜」
「今から支度致しますので、お待ちください」
ウィリアムはキッチンへ行った。
マリアはウィリアムが夕食の支度をしている最中、本棚を眺める。
「?」
料理レシピの本を発見し、マリアは手に取る。
ケーキとオムライスのページに付箋が付いていたり、料理の手順に赤いペンでラインやメモが書いてある。
マリアはレシピ本をそっと本棚に戻した。
「準備が出来ましたので、こちらへどうぞ」
タイミングよくウィリアムの声がした。
ダイニングテーブルにはオムライス、サラダ、ゼリーが並べられていた。
「可愛い!美味しそう!いただきます!」
「どうぞ」
「あ!ウィル!」
「何でしょうか?」
「オムライスに“LOVE”って書いて?」
「…いいですよ」
貴女の笑顔に私は弱い。
ケチャップで“LOVE”と書かれたオムライスを笑顔で眺めているマリア
「早く食べないと冷めてしまいますよ」
「は〜い!いただきます!」
口にオムライスを運ぶマリア。
「口の周りに米粒がついて居ますよ」
マリアの口元に触れ、米粒を取るウィリアム。
「ウィルってお母様みたいね」
にっこりするマリア。
貴女の笑顔が見たい。
もっと見たい。
バスルームから出てきて、ストライプのパジャマを纏うウィリアム。
ネグリジェ姿のマリアがウィリアムに抱きつく。
「ウィル、ストライプのパジャマとか可愛い!さ、寝ましょう」
「私はこちらで寝ますので」
ダイニングにある椅子を指す。
「椅子じゃ眠れないわよ」
マリアに腕を引っ張られ、ベッドに入るウィル。
「ウィル、今日はとっても楽しかったわ!ありがとう!」
「私も楽しかったですよ」
微笑むウィリアム。
「…ねぇ?おやすみのキスして?」
静かにウィリアムはマリアに唇を重ねた。
「…お休みなさい、マリア、いい夢を…」
ウィリアムは言った。
マリアははしゃぎ疲れたのかすぐさま眠りについた。
すやすやと眠るマリアの寝顔をしばらく眺め、ウィリアムは眼鏡を外し、ベッドの横に置いてあるランプを消した。
私は恋に落ちた。
マリア、貴女と言う恋に…