8月6日
マリア・ファントムハイヴ、死亡
死因は病死。
ウィリアムは死亡予定者リストをパタンと閉じて魂回収へと向かう。
7月6日
病院から退院し、自室のベッドに横たわるマリア。
夏になった青空を窓から眺めて居る。
夕方になり涼しくなったので、庭を一人で散歩する。
息が苦しくなりふらつくマリア。
倒れそうになった所を黒いスーツを着て眼鏡をかけた七三分けの男が受け止めた。
マリアをベンチに運び、しばらくすると息苦しさは治まった。
「ありがとう。ところで貴方は?」
「…私はウィリアム・T・スピアーズ。死神です。貴女の魂を回収しに伺いました」
名刺を渡され、受け取るマリア。
「死神…やっぱり私死ぬのね」
「えぇ。8月6日、貴女は死にますので、それまで貴女の魂が害獣…悪魔に狙われないか…」
ウィリアムの話を聞いてる途中にまた胸が苦しくなり、ふらついた所、マリアはウィリアムに受け止められる。
目が覚めるマリア。いつの間にかベッドで眠って居た。
死神…あれは夢?
床に落ちていた名刺を拾う。
夢なんかじゃない。
退院するのに家族も友達も泣いて居たし
明らかに体力が落ちているのが自分が一番分かる。
あと1ヶ月か…
次の日、体調がいいので庭を散歩しているとマリアの前にウィリアムが現れた。
「昨日はありがとう。ウィリアムさん」
「いえ、私は何も」
花を眺めているマリアの側にウィリアムは居た。
「私ね、8月7日が誕生日なの」
「そうですか」
それから毎日ウィリアムはマリアの元へやって来た。
マリアは日に日に弱っていた。
マリアの友人と名乗りウィリアムはマリアに毎日会いに来る。
「どうぞ」
ウィリアムはベッドに横になるマリアに花束を渡した。
「ありがとう。ウィリアムさんって優しいのね。死神なのに」
「いえ、私はただ貴女の魂が害獣に狙われないか確認しているだけですので」
「死ぬまでに、害獣とやらに会ってみたいわね」
「害獣…悪魔は人間の弱みにつけ込み魂を掠めとる最低最悪の生物ですので…」
悪魔について冷静に説明し続けるウィリアムと笑うマリア。
そんな日々は過ぎて行き、8月になった。
起き上がる事も辛くなってきたマリア。
「ウィリアムさん、私お庭をお散歩したい」
ウィリアムはマリアを抱き上げると庭まで運んだ。
「綺麗…ね…」
力のないマリアの声。
「そうですね」
ウィリアムは冷静に答える。
二人は黙って美しく咲いた色とりどりの花を眺める。
「…ウィリアムさん…」
「はい」
「私…雪が見たいなぁ…雪が好きでね、毎年冬の時期が楽しみだったの…」
「部屋に戻りましょう」
ウィリアムとマリアは部屋に戻り、マリアをベッドへ運んだ。
「ありがとう、ウィリアムさん」
力なく微笑むマリア。
「いえ、では私はこれで失礼致します」
眼鏡を掛け直して部屋をあとにした。
8月4日
赤い髪と金髪の死神がデスサイズで氷を砕く。
「なぁんでアタシ達がこんな事しなきゃいけないのヨォ」
「仕方ないっスよ!スピアーズ先輩の命令だし」
そこへウィリアムがやって来る。
「時間がありません。早急にお願いします。…グレル・サトクリフ、もっと細かく氷を砕いて下さい。」
「わかったワヨ。なんだか雪みたいネ」
ウィリアムも眼鏡を掛け直し、せっせと氷を砕く。
8月5日
ウィリアムはマリアの元へ花束を持って行く。
「ありがとう…ウィリアムさん」
ウィリアムはマリアの元へ来たが、慌てて帰って行った。
そして、死神達と氷を砕く。
細かく細かく砕かれた氷は、まるで雪の結晶のようになった。
「ウィリアムさん…もう死ぬ人には興味ないのかしらね…」
ウィリアムが持って来た花束を眺めると、花びらが一枚落ちた。
花びらに手を伸ばしマリアは涙を流した。
そして8月6日がやってきた。
マリアが体調がよかったので、起き上がり、カーテンを開けると庭には雪が彩られて居た。
「失礼します」
ウィリアムが入って来る。
「ウィリアムさん!これ」
マリアはウィリアムに支えられ、自分の足で庭へと歩く。
「綺麗!」
真夏の太陽に照らされた雪はキラキラと輝いて居て、とても美しい。
マリアははしゃぎながら雪に触れる。
「疲れたでしょう。少し休みましょう」
二人はベンチに座る。
疲れたのかマリアはウィリアムにもたれかかる。
「ウィリアムさん」
「はい」
「とっても嬉しかったわ。ありがとう………」
ウィリアムは無言でマリアを抱き寄せる。
マリアは目を閉じた。
ウィリアムはマリアのシネマティックレコードを眺める。
シネマティックレコードにはウィリアムがたくさん映っていた。
少し前に二人で見た、真夏の太陽に照らされた雪も…
8月6日
マリア・ファントムハイヴ、死亡
死因は病死。
備荒
最期は愛する人の腕の中で
ウィリアムは赤いペンで書き加えた。